Unbelievable Tour in Japan #2(UBTJ2)未知の脅威は防げない。 その概念を覆す瞬間をあなたは“再び”目撃する!!

たくさんのご来場ありがとうございました!

2017年11月30日に開催いたしました「Unbelievable Tour in Japan #2」には、昨年に引き続きたくさんのお客様にご来場いただき、大盛況のうちに幕を下ろしました。ご来場いただいた皆様には改めてお礼申し上げます。誠にありがとうございました。

Unbelievable Tour in Japan #2(UBTJ2)当日写真

今回は"2017年の注目すべき起業家100人の一人"に選ばれた、サイランスのCEO 兼 創設者Stuart McClure氏が来日し、ここでしか聞けないスペシャルトークセッションが実現しました。

また、AIを活用した脅威防御でサイバーセキュリティ業界の「破壊的革新」をもたらしたStuart McClure氏にその真意を迫るとともに、 国内セキュリティ業界よりゲストスピーカーを3名お迎えして 「AIがセキュリティに何をもたらすのか」「AIがセキュリティを変えるとすればそれで経営環境はどう変わるのか、また情報システム部門の仕事はどうなるのか」など、今注目の話題について、製品の枠を超えた視点で縦横無尽に熱いトークが繰り広げられました。

01 / Cylance / 基調講演 Keynote(UBTJ2)

Cylance / Keynote

Stuart McClure氏(UBTJ2)

Cylance Inc.
Cylance CEO 兼 創設者

Stuart McClure

「セキュリティ×AI」で
 ゲームチェンジを仕掛けた理由

"Keynote" は、Cylance創設者のスチュアート・マクルーア氏。

同氏は「今のセキュリティは、バックミラーだけ見て運転するようなもの。過去だけ見ていても、すぐに何かにぶつかって事故を起こしてしまうだろう」と述べる。

最近では、全ての脅威を防御することは難しいという一種の「あきらめ」の境地に立ち、検知とレスポンスにフォーカスするEndpoint Detection and Response(EDR)製品への注目も高まっている。

スチュアート・マクルーア氏(UBTJ2)

たとえ脅威が侵入したとしても、可能な限り迅速に補足し、封じ込めなどのアクションを取ることで、脅威にさらされる時間を最小化するというアプローチだ。

だが同氏は「このモデルも、あまりうまく機能しないだろう。というのも、これもまたシグネチャベースだからだ。シグネチャに基づく限り、失敗は続くだろう・・・」

※続きは以下よりご覧いただけます

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02 / Cylance / デモンストレーション (UBTJ2)

Cylance /
デモンストレーション

乙部 幸一朗 氏

Cylance Japan株式会社
最高技術責任者

乙部 幸一朗

1年前のエンジンでWannaCryは防げるのか?

乙部氏デモンストレーションの様子(UBTJ2)

続けて、サイランス・ジャパンの最高技術責任者を務める乙部幸一朗氏が、デモンストレーションを交えながらその性能を紹介した。 「サイバーセキュリティの世界では、歴史始まって以来常に攻撃者が優位に立ち、先手を打ってきた。しかしわれわれは歴史上初めて、攻撃者の前を行く技術を手に入れた」と宣言した。

サイランスでは、機械学習技術を活用して大量のデータを学習させ、600万~700万に上る特徴点を抽出し、数理モデルを作成している。 この数理モデルを用いて、新しいマルウェア、未知のマルウェアを判断する仕組みだ。「このデータの学習には時間がかかるが、できあがった数理モデルを用いた判定はあっという間に終わる」(乙部氏)ことも特徴だ。

乙部氏(UBTJ2)

乙部氏は続けて、2017年に猛威を振るったランサムウェア「WannaCry」の亜種、50種類を用いて、プロテクトキャット Powered by Cylanceと他のウイルス対策ソフトウェア、2製品の検出率を比較するデモを行った。 講演当日、つまり11月30日時点のシグネチャを用いれば、他のアンチウイルス製品でもほとんどの亜種を検出できた。だが、その検出処理中はCPU使用率が上昇し、製品によっては100%近くに張り付いてしまう。

さらに乙部氏は、「タイムマシン」に乗って、WannaCryが登場する直前の5月12日時点のシグネチャで試した場合にどんな結果になるかのデモンストレーションも行った。 すると、ある製品で検出できたのは50個の亜種のうち1個、もう1つの製品ではゼロという状況となった。 乙部氏は「この2製品がどうこうというわけではなく、見たことのある脅威に定義ファイルを作っていくというやり方では間に合わないことが分かる」と述べ、シグネチャに頼るアプローチには限界があるとあらためて強調した。

▼検知率比較結果UBTJ2 デモンストレーション 検知率比較の真実

一方、プロテクトキャット Powered by Cylanceの場合はどうか。 2016年6月に作成した数理モデルに基づく状態でも、ファイルを実行しようとするとアラートが表示され、感染・侵入を防ぐ。

乙部氏はこうした様子を紹介し、「2017年5月に登場したWannaCryだろうが、明日登場する新たなマルウェアだろうが、未知の脅威を高い精度で判定できる」と述べた。
一般に、シグネチャベースの対策ソフトでは、アウトブレークの発生直後は検知率が上がり、その後徐々に下がっていくが、プロテクトキャット Powered by Cylanceではそうした変化もなく、常に一定の検知率を保てることも特徴だとした。

※デモンストレーションの全文は開催レポート(PDF)でご覧いただけます
(資料ダウンロードページへリンク)

03 / テクニカルセッション(UBTJ2)

テクニカルセッション

テクニカルセッション ″AI × セキュリティ″
″AI″の進歩はセキュリティに何をもたらすのか

UBTJ2テクニカルセッションの様子

  • 門林 雄基 氏(UBTJ2)

    奈良先端科学技術大学院大学
    情報科学研究科 教授

    門林 雄基

  • 丸山 満彦 氏(UBTJ2)

    デロイト トーマツリスクサービス株式会社
    代表取締役社長

    丸山 満彦

  • Stuart McClure 氏(UBTJ2)

    Cylance Inc.
    会長 兼 CEO 兼 創業者

    Stuart McClure

  • 乙部 幸一朗 氏(UBTJ2)

    Cylance Japan株式会社
    最高技術責任者

    乙部 幸一朗

  • 岡田 良太郎 氏(UBTJ2)

    株式会社アスタリスク・リサーチ
    OWASP Japan 代表

    岡田 良太郎

「テクニカルセッション」では、AI を活用した脅威防御でサイバーセキュリティ業界に「破壊的革新」をもたらしたCylance Stuart氏を囲み、 ″AI ×セキュリティ″をテーマにテクニカルな観点でディスカッション。 ゲストスピーカーには、奈良先端科学技術大学院大学 門林教授、デロイト トーマツリスクサービス 代表取締役社長 丸山氏、Cylance Japan 最高技術責任者 乙部氏を迎え、ここでしか聞けないスペシャルトークセッションが実現。 モデレーターは、アスタリスク・リサーチ 代表 岡田氏に務めていただいた。


AIは人間の敵ではなく、仕事を楽にしてくれる仲間?

「テクニカルセッション」の焦点は、主に技術的な話題だ。

「外部環境、特に脅威の動向に何か変化は見られるだろうか?」という岡田氏の問いに対し、乙部氏が「例えば、メールを受信した時点では誘導先のリンクが有効化されておらず、翌朝ユーザーの手元に届いて開かれる時間になってアクティベートされるといった攻撃が観測されている」と、ゲートウェイセキュリティ製品をかいくぐる手法が生まれていることを紹介すると、マクルーア氏も「スクリプトを用いたり、ファイルの実行を遅らせてサンドボックスによる振る舞い検知の時間切れを狙うなど、サンドボックスをバイパスする手口が広がっている」と説明した。

こうした状況を踏まえ、さまざまな企業の実情を知るデロイトトーマツリスクサービスの代表取締役社長、丸山満彦氏は「何か1つの技術、何か1つの製品を導入して解決する問題ではない。何ができ、何ができないかを把握し、全体を見据えながら総合的に対策しなければならない」とコメント。乙部氏も「何か新しい技術が流行るとすぐ導入するが、それを迂回する脅威が登場し、また別の新しい技術を導入せざるを得ない、ということの繰り返しに、顧客は疲弊している」と同意した。

人工知能や機械学習という言葉が人口に膾炙する前からこれらの研究に携わってきた、奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究家 教授の門林雄基氏は「10年前は、人工知能をサイバーセキュリティに適用しようと考える人はほとんどいなかった。しかし今では状況が変わっている。敵側が自動化を進めており、仮想通貨でいくらか支払えば誰でも攻撃ができるようになった。朝にやってきた攻撃を捉え、あわててシグネチャを書いて更新するというアプローチでは間に合わない。そこで、それまで画像認識や顔認識といった領域に適用されてきた技術が、『マルウェアの認識』にも活用できるのではないかというのが最近の潮流だ」と説明した。

UBTJ2テクニカルセッションの様子

もちろん、いくらAIや機械学習の力を用いても、100%となると難しい。マクルーア氏は、「エンドポイントに侵入を試みる方法はいろいろとあり、全てのベクトルにソリューションを用意するのは難しい」とコメント。さまざまなパターンマッチングを組み合わせて脅威を識別するだけでなく、予測できるような機械学習技術が必要だとした。ただ「改善はされていくだろう。なぜならコンピュータは人間と違って忘れることがなく、どんどん学習していくからだ」という。

門林氏は、「サポートベクターマシンによる機械学習の精度は95%程度で、5%は人がやらなければいけないが、それが99.7%にまで向上すれば、0.3%という誤検知への対応コストなどが飛躍的に減り、運用に耐える技術になるのではないか」と期待を寄せた。またさまざまな企業のセキュリティ運用の現場を知る丸山氏は「そもそも、これまで人間がどのくらいきちんと見ていたかと言うと疑問が残る。実際にはもっと低い数値になるだろう」と指摘。誤検知を全てつぶすのは非現実的であるとし、その上での運用のあり方を模索すべきと述べた。

乙部氏によるとサイランスでは、人工知能システム「INFINITY」に対し、10カ月に1回程度のペースで、それまで抜けていたデータ、あるいは新たに「いいもの」「正しいもの」として認識されたデータを含む新しいデータセットを適用し、ディープラーニングで学習させている。
「これにはコンピューティングパワーも必要になるが、質の高いデータの量が増えれば増えほど精度が上がり、誤検知を減らせる」(乙部氏)

UBTJ2 テクニカルセッションの様子

マクルーア氏は、ケーシングをはじめ、同社が活用しているいくつかの技術を説明した後、最後に「データサイエンスや機械学習の裏にあるものは何なのか、ぜひさまざまな技術をウォッチし続けてほしい。機械学習技術を導入すれば、守るのは楽になる。どうか恐れることなく活用し、世界をよりよいものにしていこう」と呼び掛けた。乙部氏も「ぜひ怖がらずに試してほしい。少しでも皆さんのサイバーセキュリティが改善することを目指している」とした。

※テクニカルセッションの全文は開催レポート(PDF)でご覧いただけます
(資料ダウンロードページへリンク)

04 / ガバナンスセッション(UBTJ2)

ガバナンスセッション

ガバナンスセッション ″経営 × セキュリティ″
正しい″選択″は、成長の阻害要因ではなく促進要因になるか?

UBTJ2 ガバナンスセッションの様子

  • 門林 雄基 氏(UBTJ2)

    奈良先端科学技術大学院大学
    情報科学研究科 教授

    門林 雄基

  • 丸山 満彦 氏(UBTJ2)

    デロイト トーマツリスクサービス株式会社
    代表取締役社長

    丸山 満彦

  • 岡田 良太郎 氏(UBTJ2)

    株式会社アスタリスク・リサーチ
    OWASP Japan 代表

    岡田 良太郎

  • 河之口 達也 社長(UBTJ2)

    エムオーテックス株式会社
    代表取締役社長

    河之口 達也

「ガバナンスセッション」では、「“経営×セキュリティ”成長する事業経営の視点からセキュリティを考える」をテーマにディスカッション。 ゲストスピーカーはトークセッション1に続き、奈良先端科学技術大学院大学 門林教授、デロイト トーマツリスクサービス 代表取締役社長丸山氏に加え、エムオーテッ クスの河之口も参加。モデレーターは引き続きアスタリスク・リサーチ 代表 岡田氏に務めていただき、関西弁による熱いトークが繰り広げられた。


高まってきた?それともまだまだ?経営層のセキュリティ意識

サイバーセキュリティの重要性が指摘されている中、果たしてどこまで本気でセキュリティ投資が行われているのか。「まあ、何とかうまいことやっておいてよ」で済まされるケースは少なくないのではないだろうか。そんな問題提起に対し、一つには日本市場特有のユーザー企業とシステムインテグレータとの関係があると門林氏らは指摘した。

岡田氏の「セキュリティ投資に取り組みたいけれど、やり方が分からないという会社は増えているのか?」という問いに、パネリストらは、増えているのは確かだと答えた。大きな理由は、セキュリティ事故の増加だ。

「自社で起きた事故でなくても、例えばWannaCryのように他社でセキュリティ事故が起こると気にする方は多い。また最近は、NHKなどマスメディアでセキュリティの話題が取り上げられるようになり、社長レベルでも気にするようになっている」(丸山氏)

一方河之口は「社長の立場でITのことを具体的に考えている人は、あまりいないかもしれない。『こんな風にしてほしい』というイメージはあるが、それ以上に踏み込むことはないのではないか」と率直な印象を語った。かつてのホストコンピュータ然り、クライアントサーバシステム然りで、IT技術は徐々に身近なものになっているが「訳の分からないもの」というイメージを抱く経営層が多いという。

これに対し門林氏は、「少なくとも若い経営者は、特にわれわれが教えなくても、セキュリティをどのようにしたらいいかを分かっているのではないか」と述べ、世代間格差も一つの要因ではないかと指摘した。

さらに門林氏は、たとえ自身が専門知識に詳しくなくとも、「AIや機械学習もそうだが、技術に関して目鼻の立つ人が社内にいるはずだ。そうした技術を見抜ける専門知識を持った人の話を聞き、判断を下せることが重要だ。技術の潮目はだいたい4年おきに変わっていく。ある技術を神殿化してあがめるのではなく、変化のスピードが速いことを理解した上で判断することが大事だ」と付け加えた。

UBTJ2 ガバナンスセッションの様子

状況の変化、脅威の変化に応じて変わるのがセキュリティ

門林氏によると、農耕民族たる日本人は、スケジュールをきっちり立ててそれを守ることには長けている。一方、有望な狩り場が見つかったら今までのやり方を抵抗なく変える狩猟民族的なアプローチは苦手だという。

これに対し、自身も経営者である丸山氏は「むしろ僕は部下から『全然一貫性がないですよね』と言われる」と笑いながら述べた。というのも「自分が現在の状況に付いていけないという状況が怖いから。この先に崖があるのに、自転車をこぎ続けるのが何より怖い」と丸山氏は述べ、だからこそ、状況に応じてくるくる方針を「変えていく派」だとした。

UBTJ2 ガバナンスセッションの様子

セキュリティに対する取り組みにも同じことが言えそうだ。「農耕的マインドからして、つい中期計画を立てて、こうしてああして……となりがちだ。しかしセキュリティは本来投資。リスクや金利政策の変動に応じて設備投資が変動するのと同じように、セキュリティも変化していくのが自然だ」(門林氏)。

岡田氏はその意見に同意を示し、「セキュリティは、事業を何で成り立たせるかという考えありきで考えるべき。セキュリティをランニングコスト、もうからないものと思う時点で間違いではないか」と述べた。これを受けて丸山氏も「そもそもサイバーセキュリティというのは、自社のブランドや品質を守るために必要な事柄。それらをきちんと守ることが、自社ビジネス成功の基礎になる」と述べた。

サイバーレジリエンス構成学研究室を展開している門林氏はさらに、「サイバーセキュリティは、サイバー犯罪者による攻撃だけでなく、操作ミスやエラーによって発生する諸問題も含む」と指摘。こうした諸問題を視野に入れ、自動車における安全運転技術のように、たとえ人間がミスをしても、あるいは障害が起きても、事故につながらないようにする「サイバーレジリエンス」という考え方が求められていると述べた。

エムオーテックスの河之口氏も、こうした取り組みの必要性に同意。さらに「それを難しくするのではなく、分かりやすく、シンプルに実現できるようにしたい。今のIT環境は非常に複雑化している。難しいこと、複雑なことをできるだけシンプルにできるような翻訳作業を通じて、『サイバーはよくわからない』と言われないようにしていきたい」と意欲を述べた。

※ガバナンスセッションの全文は開催レポート(PDF)でご覧いただけます
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