
ホワイトペーパー
Windows 10へのアップグレード作業や運用フローの最新資料を公開!
「WaaSに対応した Windows 10運用の基礎」
2014年にWindows XPのサポート終了が大きな話題と混乱があってから、Windowsのサポート期限が近付くとサポート終了後のリスクや、事前準備の話題が上がるようになりました。最近だと2017年の4月にWindows Vistaのサポートが終了しましたが、OSシェアが低かったこともありそれほど大きな問題にはなりませんでした。しかしWindows XP並に大騒ぎになるといわれているWindows 7のサポート終了がいよいよ近付いてきました。
2017年10月現在のデスクトップOSシェアを見ると、Windows 7が約50%のシェアを占めている状況です。
※NetMarketShareによるデスクトップOSシェアグラフ
IDC Japanによると、Windows 7の延長サポートが終了する1年前の2019年におけるWindows 7搭載PCの残存率は、34.6%に達すると発表しています。これは、Windows XPの延長サポート終了1年前の残存率が29.3%であったことと比較すると非常に高い残存率となっています。
・~ 2020年のWindows 7の延長サポート終了に警鐘を鳴らす ~ 国内企業PCのWindows 10への切り替え計画分析結果を発表
Windows 7のサポート終了時期は、2020年1月14日(米国時間)(2018/9/11追記 ※企業向け有料延長サポートを使用した場合2023年1月まで。詳細は後述。)です。
「まだ3年も先じゃないか」と思うか、「もう3年しかない」と思うかはそれぞれかと思いますが、Windows 7のPCを数多く管理されているような企業の情報システム部門の方にとっては、準備期間としては決して長くはありません。
・Windows ライフサイクルのファクト シート
通常のマイクロソフトのサポート期間は、製品発売後から最低5年間のメインストリームサポートと、メインストリームサポート終了後から最低5年間の延長サポートがあり、合計で最低10年間のサポートが提供されます。
現時点でリリースされているWindows OSのサポート期間は以下の通りです。
※マイクロソフト「ご存じですか?OSにはサポート期限があります! – Microsoft atLife」より
【2018/9/11 追記】
米Microsoftは現地時間の9月6日に、「Windows 10 Enterprise」および「Windows 10 Education」エディションのサポート期間の延長と、「Windows 7」の企業向け有料延長サポートの提供を発表しました。詳細は後述します。
また、「メインストリームサポート」と「延長サポート」の違いは、下表の通りです。
(表1)メインストリームサポートと延長サポートの違い
|
メインストリームサポート |
延長サポート |
サポート終了後 |
セキュリティ更新プログラムの提供 |
○ |
○ |
× |
有償サポートインシデント
サポート時間制サポート |
○ |
○ |
× |
仕様変更、新機能のリクエスト |
○ |
× |
× |
セキュリティ関連以外の
更新プログラムの提供 |
○ |
企業向けの一部のみ対象 |
× |
無償サポートライセンス、ライセンスプログラム |
○ |
× |
× |
延長サポートでは、セキュリティに関連するサポート以外のサポートがすべて終了しますが、セキュリティ更新プログラムの提供や、仕様の変更、新機能のリクエストを受ける事ができます。
サポート終了後のリスク
では、Windows OSのサポートは終了しても使い続けた場合に、どのようなリスクが発生するのでしょうか?
サポートが終了すると、表1に記載したサポートが全て受けられなくなるのですが、その中でも最大のリスクはセキュリティ更新プログラムが終了してしまう点です。
セキュリティ更新プログラムとは、マイクロソフトが製品の発売以降に発見された不具合やセキュリティの脆弱性を修正するために、定期的に提供するプログラムです。コンピュータを安全に使用するためには、セキュリティ更新プログラムを定期的に適用することは必須です。もし更新を怠った場合には、「マルウェアの感染」や「未知のウイルス」などによる以下のような被害を受けるリスクが高まり大変危険です。
個人情報が盗まれる
マルウェアに感染すると、知らない間に様々な個人情報が盗まれて、ユーザーになりすましてサービスを利用される可能性があります。マルウェアにはユーザーのキー入力を監視したり、画面をキャプチャして保存するようなマルウェアがあります。これらの情報からネットバンキングやショッピング等に利用しているIDやパスワードを収集し、悪意のあるユーザーにサービスを利用されてしまう危険性があります。
コンピュータが遠隔操作される
マルウェアの中には、感染したコンピュータを遠隔操作できるようにするものがあります。このようなマルウェアに感染したコンピュータから、サイトやサービスを利用不能にする「DDoS攻撃」に利用されたり、迷惑メールの送信元にされたり、遠隔操作によって掲示板に他人の誹謗中傷を書き込まれるなどの被害を受ける可能性があります。
コンピュータが破壊される
マルウェアの中には、データを消去する、コンピュータを動かなくする等のコンピュータの破壊を行うものがあります。業務上の重要なデータを失うことで、業績に重大な損益を与えてしまうリスクがあります。
Windows Vistaのサポート終了時の状況をみると、サポート終了後にはマイクロソフトが提供しているセキュリティ対策ソフトの「Microsoft Security Essentials」や「System Center Endpoint Protection」が使用できなくなりました。

同様にマイクロソフト以外のセキュリティ製品のサポートも終了していくでしょう。
サポートが終了してしまうと、これらのセキュリティ更新プログラムや有償サポートを含むすべてのサポートを受ける事ができなくなります。脆弱性は常に増え続けていきますので、サポートが終了したOSを使い続けるということは、セキュリティ・リスクが増大し続けることを意味します。企業で使用するPCはもちろんですが、個人で使用するPCがこれらのサポートを受ける事ができないのは、セキュリティ上大変危険な状態です。
Windows 7とWindows 10の違い
Windows 7をお使いの方は、Windows 8.1かWindows 10への移行を検討すると思います。ただ、Windows 8.1のサポートは2023年1月10日に終了します。サポート期間の長さを考えると、2025年までサポートするWindows 10を選択する方が現実的かと思います。
Windows 7とWindows 10の違いは様々ありますが、大きな違いとして以下の4つがあります。
・パフォーマンスの向上
・セキュリティの向上
・モビリティの向上
・OSのアップデート方針の変更
パフォーマンスの向上
Windows 7とWindows 10では、以下の表でまとめたようにWindows 10のパフォーマンスがWindows 7を大きく上回っています。
(表2)Windows 7とWindows 10のパフォーマンス比較
比較項目 |
Windows 7 |
Windows 10 |
起動時間 |
29.64秒 |
14.06秒 |
Excelファイル (160MB) 起動時間 |
123.13秒 |
79.26秒 |
Webページ処理速度(数値が高いほど高性能) |
180 |
358 |
ベンチマーク (数値が高いほど高性能) |
2801 |
4731 |
※マイクロソフト「Windows 7 vs Windows 10 五番勝負 第 1 回 パフォーマンス編」より
セキュリティの向上
セキュリティについても、Windows 10はWindows 7に比べて大きく向上しています。
サインインに顔や指紋認証が追加
Windows 7ではローカルアカウントでサインインしますが、Windows 10ではMicrosoftアカウントでのサインインに変わりました。Microsoftアカウント は、メールアドレス形式のIDとパスワードの組み合わせでサインインするもので、PCにサインインすると同時に、マイクロソフトが提供するOneDriveやSkypeなどのクラウドサービスにも同時にサインインできます。
Windows 10には「Windows Hello」という新しい認証方式が追加されました。Windows Helloを利用すれば、指紋や顔認証、虹彩といった生体情報でサインインすることが可能になりました。IDやパスワードをメモする必要がなくなり、メモの紛失による情報漏えいのリスクが減り、万が一PCを紛失しても、勝手にサインインされる心配はありません。
アンチウイルスや不正侵入対策の強化
Windows 7にもセキュリティ機能として、Windows Defenderとファイアウォールが標準搭載されています。Windows 10ではこれらセキュリティ機能が大幅に強化されています。
Windows 7のWindows Defenderではマルウェア対策機能がなく、スパイウェアのみの対応でした。Windows 10ではWindows Defenderに、マルウェア対策機能が追加されています。また、Windows 起動時の安全性を高める「セキュア ブート」という機能や、ソフトが勝手に実行されることを防ぐ「デバイスガード」機能など、昨今のより高度で多様なセキュリティ対策にも対応しています。
フィッシングサイトからユーザーを保護したり、悪質なサイトをブロックするなど、インターネット利用に関するセキュリティ対策も強化されています。Windows 10で採用された新しいブラウザ「Microsoft Edge」と「Windows Defender」を組み合わせることで、IDや個人情報を盗もうとするフィッシングサイトからユーザーを保護したり、悪質なサイトをブロックするとともに、Webサイトからマルウェアがダウンロードされることを防ぐことも可能です。
このほかにも様々な面でセキュリティの強化が図られています。詳しくはマイクロソフトが発表している「Windows 7 と Windows 10 の セキュリティ機能の比較」を参照ください。
※Windows 7 と Windows 10 の セキュリティ機能の比較(PDF)
データ保護機能の強化
企業にとって情報漏えい対策は最優先事項です。その一方でBYODやモビリティなど、ワークスタイルの変化が高まり、情報漏えい対策が以前より難しくなってきています。Windows 10では、「Windows Information Protection」という企業向けのセキュリティ機能が追加され、IT管理部門や情報システム部門からの操作で、社員のデバイスを暗号化したり、デバイス紛失時に遠隔からデータを削除するなどの機能が追加されました。また、データを企業領域と個人領域に区別することもでき、企業領域だけ遠隔で削除することも可能です。
モビリティの向上
Windows 10では、昨今のモビリティを活用したフレキシブルなワークスタイルにも対応できる機能も強化されています。
ユーザーインターフェースの最適化
Windows 10のスタートメニューは、デスクトップPCやノートPC、タブレットなど様々なデバイスに対応できるように最適化されました。タッチ操作やキーボード、手書きなどそれぞれの使い方にあわせて最適なモードに切り替える「Continuum(コンティニュアム)」と呼ばれる機能が搭載されています。
※マイクロソフト「Windows 7 から Windows 10 で変わる 10 のポイント」より
また、外出先にスマートフォンだけを持っていって、現地でスマートフォンをモニターとマウス、キーボードに接続すればデスクトップのように使えるという「Continuum for Phone」という機能も搭載されています。Continuum for Phoneを使えば、重いノートPCを持ち歩かなくてもオフィスで仕事をするのと同じようにホテル等で仕事が出来る大変便利な機能です。
※マイクロソフト「Windows 10 スマートフォンおよびモバイル用の Windows Continuum」より
Windows 10では様々なデバイスに最適化されたユーザーインターフェースと、生体認証やデータ保護機能を活用することで、様々なワークスタイルにも対応できるようになりました。
OSのアップデート方針の変更
Windows 10では、OSのアップデート方針が大きく変わっています。特に企業のシステム管理者はこの変更を理解しておかないと、Windows Updateのたびに業務が止まってしまうなんてことがあるかもしれません。
Windows 10では、WaaS(Windows as a Service)と呼ぶ新しいアップデート方針を採用しています。WaaSの考え方は、今までのように数年に1度大きなアップデートを行うのではなく、より頻繁に小さな改善をしていくというものです。これによって、最新機能や最新のセキュリティ対策をできるだけ早く導入することが可能になるというメリットがあります。
しかしシステム管理者にとっては、常に最新のOSを利用することになるため、WaaSの更新にあわせて企業のITシステムを更新しなくてはいけないというデメリットがあります。そのため、どのような形で、どんなアップグレードが、どのような頻度で行われるのかを常に把握しておく必要があります。
もちろん企業によって機能追加のタイミングは変わり、常に最新の機能を取り入れたい企業もあれば、ITシステムの更新が終了してから機能追加を行いたい企業あると思います。そのためマイクロソフトでは、ユーザーが更新モデルを選択することで、機能追加のタイミングを選択することができるようになっています。現時点では以下の更新モデルが用意されています。
(表3)Windows 10の更新モデル
更新モデル |
説明 |
Insider Preview(IP) |
機能追加の受け取り時期を早める |
Current Branch(CB) |
4~8カ月間隔でOSの機能追加を行う |
Current Branch for Business(CBB) |
機能追加の受け取り時期を4カ月間遅らせる |
Long-term Servicing Branch(LTSB) |
特定用途の固定端末向けに機能追加を一切受け取らない |
WaaSに関してはマイクロソフトが提供している以下の動画が分かりやすいです。
今から準備しておくこと
最後にWindows 7のサポート終了までに準備しておいた方が良いことについて書いておきます。Windows 7のサポート終了まであと3年あるからとのんきに構えていては、いざWindows 10に移行する時になって慌てることになりますので早めに準備しておきましょう。
Windows 10のシステム要件
Windows 10の最小システム要件は以下の通りです。
(表4)Windows 10のシステム要件
CPU |
1GHz以上 |
メモリ |
32ビット版:1GB
64ビット版:2GB |
ディスク空き容量 |
32ビット版:16GB
64ビット版:20GB |
グラフィックスカード |
DirectX 9 以上 (WDDM 1.0 ドライバー) |
ディスプレイ |
800×600以上 |
※マイクロソフト「Windows 10 のシステム要件と仕様」より
必要なシステム要件はWindows 7と違いはないので、Windows 7を使用しているPCであれば、Windows 10へのアップグレードが可能です。
アップグレードの事前評価
マイクロソフトは使用しているWindows 7をWindows 10にアップグレードした場合にどのような問題が発生するか、その問題に対する対応方法などを事前に評価するためのプログラムを提供してくれています。
※Windows Analyticsこのプログラムを利用すると、対象のPCから様々なデータを収集・分析して、Windows 10にアップグレードした際の状態やアプリケーション、ドライバーの問題に関するレポート、推奨の対応方法について提供してくれます。
PCメーカーやソフトウェアメーカーごとの互換性情報
各PCメーカーやソフトウェアメーカー、周辺機器メーカーごとにWindows 10への互換性をチェックするためには、マイクロソフトがまとめたサイトが便利です。
・移行前の準備が大切! 最新 OS への移行準備をしましょう!
主要な各メーカーにWindows10への対応ページがまとまっていますので、対象のPCやソフトウェアの互換性をチェックするのに大変便利です。
一部Windows 10エディションのサポート延長とWindows 7の有料延長サポートについて
【2018/9/11 追記】
米Microsoftは現地時間の9月6日に、「Windows 10 Enterprise」および「Windows 10 Education」エディションのサポート期間の延長と、「Windows 7」の企業向け有料延長サポートの提供を発表しました。
・Helping customers shift to a modern desktop – Microsoft 365 Blog
「Windows 10 Enterprise」および「Windows 10 Education」エディションのサポート期間の延長
「Windows 10 Enterprise」および「Windows 10 Education」エディションのユーザーのみを対象にサポート期間の延長を発表しています。
Windows 10では、毎年3月と9月に新機能のアップデートをリリースしますが、このうち「Windows 10 Enterprise」および「Windows 10 Education」エディションの9月リリースにてサポート期間が18ヶ月から30ヶ月延長されます。
また、Windows 10 EnterpriseおよびWindows 10 Educationエディションの現在サポートされている全ての機能アップデート(バージョン1607、1703、1709、1803)のサポート期間を当初の18ヶ月から30ヶ月に延長されます。
2018年10月ごろのリリースを予定しているWindows 10 EnterpriseおよびEducationエディションの今後の全ての機能アップデート(バージョン1809から適用)についても、リリース日から30カ月間サポートされるようになります。
なお、3月リリースのサポート期限は、従来どおり18ヶ月となりますので、ご注意下さい。また、「Windows 10 Home」「Windows 10 Pro」「Office 365 ProPlus」についても、今までどおり18ヶ月間のサポートとなります。
上記をまとめると次のようになります。
(表5)2018年9月以降のWindows大型アップデートのサポート期間
エディション |
3月リリースのサポート期間 |
9月リリースのサポート期間 |
Windows 10 Enterprise
|
18ヶ月
|
30ヶ月
|
Windows 10 Education
|
Windows 10 Pro
|
18ヶ月
|
Windows 10 Home
|
Office 365 ProPlus
|
リリース済みのバージョンおよび今後予定されているバージョンごとのサポート期間をまとめると次のようになります。
(表6)Windows 10 バージョンごとのサポート期間
バージョン |
リリース日 |
Home・Proエディション
|
Enterprise・ Educationエディション
|
サポート期間 |
サポート終了日 |
サポート期間 |
サポート終了日 |
1607 Anniversary Update
|
2016年8月2日
|
18ヶ月
|
2018年4月10日
|
30ヶ月
|
2019年4月9日
|
1703 Creators Update
|
2017年4月5日
|
18ヶ月
|
2018年10月9日
|
30ヶ月
|
2019年10月8日
|
1709 Fall Creators Update
|
2017年10月17日
|
18ヶ月
|
2019年4月9日
|
30ヶ月
|
2020年4月14日
|
1803 April 2018 Update
|
2018年4月30日
|
18ヶ月
|
2019年11月12日
|
30ヶ月
|
2020年11月10日
|
1809
|
2018年9月ごろ
|
18ヶ月
|
ー |
30ヶ月
|
ー |
1903
|
2019年3月ごろ
|
18ヶ月
|
ー |
18ヶ月
|
ー |
1909
|
2019年9月ごろ
|
18ヶ月
|
ー |
30ヶ月
|
ー |
「Windows 7」の企業向け有料延長サポートの提供
当初のWindows 7のサポート終了時期は、2020年1月14日(米国時間)でしたが、企業向けの有料延長サポートとして2023年1月までサポートを延長するプログラム「Windows 7 Extended Security Updates (ESU)」が発表されました。
ESUの対象となるのは、ボリュームライセンスによってWindows 7 EnterpriseもしくはWindows 7 Professionalを使用している企業です。サポートはデバイスごとに課金されて、その価格は毎年上がっていく仕組みになっています。「Windows Software Assurance」もしくは「Windows 10 Enterprise」、「Windows 10 Education」の利用者には割引が適用されます。
ESUを活用することで、企業はOS変更のための猶予期間を確保することができます。
まとめ
マイクロソフトはWindows 7とWindows 10のアプリケーションの互換性は95%以上と公表しており、Windows 7からWindows 10への移行は、かつてのWindows XPからWindows 7への移行に比べるとハードルが低いと言われています。ハードウェアのシステム要件もWindows 7と同じため、買い替えもしなくて済む場合が多いと思います。
しかし、対象となるPCが多い場合や企業のPCを移行する場合には、移行の手間とコストがかかるのも事実です。サポート終了を間近にして慌てることがないように、計画的に移行の準備をしていきましょう。