環境防災、維持補修、都市再生の分野を中心に安全・安心な国土造りに貢献する日特建設株式会社(日特建設)では、全国各地の現場工事の担当者をはじめ、営業担当者や管理職など約900人へスマートフォン(iPhone)を支給。スキマ時間を使って安全・手軽にメールやグループウェア、業務システムを利用できる環境の整備を目指し、京セラコミュニケーションシステム株式会社(KCCS)のリモートアクセスサービス「BizWalkers+ Mobile」を採用した。利用者は安全に社内システムへアクセスでき、現場担当者のタイムリーな情報共有や勤怠管理など、働き方の改革を図っている。
日特建設は、昭和20年代にダムの地質調査と基礎処理の事業からスタート。以来、ダム基礎岩盤の強化や地盤改良、法面補修など土木の専門技術を活かし、総合基礎工事分野のエキスパートとして発展してきた。同社では、事業戦略の一つとして組織力の強化による効率的経営とコンプライアンス遵守を掲げ、災害の低減や品質の向上に向けた現場支援体制の構築、働きがいのある会社づくりに向けた職場環境の改善などに取り組んでいる。
こうした事業戦略をICTの側面から支えるのが情報システム部である。「経営戦略や業務部門のニーズに合わせ、最適なシステムを企画・構築しています。今回、全社的に導入したスマートフォンについても、経営トップの判断のもと、現場支援体制の強化や職場環境の改善を目指したものです」と日特建設 管理本部 情報システム部 部長の山縣 秀年氏は述べる。
同社の業務は、斜面・法面対策などの環境防災分野、既設構造物の維持補修分野、地盤改良などの都市再生分野といった広範囲におよび、全国数百箇所の現場で仕事をしている。現場の規模にもよるが、一人の担当者が現場を任され、作業員を管理するケースも少なくないという。「ベテランだけでなく、経験の浅い若い現場担当者もおり、問題があったときにもできるだけ一人で抱え込まないよう、モバイルを活用した相談や情報の交換・共有に力を入れています」と山縣氏は情報システム部の取り組みを話す。
何か問題が起こった場合、現場担当者はエリアを統括する工事長に相談するほか、社内のグループウェアの掲示板やナレッジ共有機能を利用したりして、他の現場担当者の対処法を参照できるような情報共有環境を整備してきた。また現場担当者の勤務時間把握や健康管理の側面から、長時間労働にならないよう勤怠管理の徹底に力を入れている。工事の進捗状況などに応じて超過勤務が必要な場合、原則としてその日の16時までに勤怠管理システムを利用して、工事長の許可を得る仕組みだ。
その通信手段として、現場担当者にはノートPCとモバイル通信環境を提供してきたが、「現場から工事事務所に足を運び、ノートPCを起動して勤怠管理システムを利用するには手間と時間がかかります。そのため、残業の許可を得るのが遅くなったり、情報共有のために掲示板に通達を出しても、閲覧するまでに時間がかかったりしていました」と日特建設 管理本部 情報システム部 課長の野口 修一氏は従来の課題を説明する。
こうした現場の課題解決に向け、経営トップの号令で会社支給の携帯電話に代えてスマートフォンの導入が決まった。「スマートフォンであれば、いつでも、どこでも簡単にメールやグループウェア、勤怠管理システムなどへアクセスできます。その利便性を最大限に活かすと同時に、いかにリモートアクセス時のセキュリティ面の安全性を確保するかが課題でした」と山縣氏は振り返る。
情報システム部では、いくつかのリモートアクセスサービスを比較・検討した結果、KCCSのBizWalkers+ Mobileを採用した。「利用者が安全に社内システムやクラウドにアクセスできることや、軽快に操作できる使い勝手のよさを評価しました」と山縣氏は採用理由を述べる。そして、スマートフォン向けセキュリティポリシーを策定。利用促進を図るため、業務外のアプリのインストールや利用を禁じるといった必要最小限のルールに抑えてあるという。
スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスは便利な半面、使い方によってはセキュリティの脅威にさらされるリスクもある。特にビジネス利用では社内システムへのアクセス時にセキュリティ確保が必須となる。だが、セキュリティを強化するあまり使いにくくなるのは困る。こうした問題に対し、KCCS 東日本営業部 東日本営業課の加藤 雄也は「BizWalkers+ Mobileはスマートデバイスの利便性を損なわず、安全にリモートアクセスできるさまざまな特長を備えており、日特建設様のご要望に合致したのではないかと思います」と話す。
BizWalkers+ Mobileの特長は、セキュアブラウザにより端末にデータが残らず、添付ファイルもログオフ時に削除される仕組みだ。またユーザアカウントと端末情報の2要素認証を行い、管理者が承認した端末からのみアクセスが可能だ。このほか、「スマートデバイスの利点を活かしたユーザビリティや、対応コンテンツが豊富であるといった特長があります。日特建設様にも導入前にグループウェアやeラーニング、勤怠管理システムなどの動作検証をしていただきましたが、業務に応じたさまざまなコンテンツに対応しているため、導入までスムーズに進められたのではないかと思います」とKCCS インテグレーション部 セキュリティサービス課 グループ長の北垣 太士は述べる。
さらに、「BizWalkers+ Mobileは、リモートアクセスのためのシステムを自社で保有することなく、KCCSのサービスを利用できることも導入の決め手になりました」と野口氏が述べるように、リモートアクセスに必要なサーバ管理の負荷が軽減されることに加え、初期投資を低減し短期での利用開始も可能だ。情報システム部では、リモートアクセスのほか、メールもクラウドサービス(Microsoft Office 365)を利用するなど、システムの運用をできるだけ外部の専門家にアウトソーシングすることで、企画や開発などに専念する狙いがあるという。
日特建設ではトライアルを経て、2015年6月に本店と東京支店で約300ID、8月に約600IDを合わせ、約900ユーザIDのBizWalkers+ Mobileを導入。セキュアなリモートアクセス環境を整え、全国の現場担当者や外出機会の多い営業担当者、管理職などを対象に全社的な本格稼働が始まったところだ。
その導入効果について、山縣氏は「検証はこれから」と前置きしながら、「現場担当者の残業の事前申請はほぼ守られるようになりました。またグループウェアの掲示板を使って月初めに事故防止の注意喚起など重要事項を伝達していますが、スマートフォンから簡単に閲覧できるので、情報伝達スピードの向上と伝達事項の徹底に役立つと期待しています」と話す。
このほか、安全管理やコンプライアンスの講習などのeラーニングにもスマートフォンを活用。「全員の受講が必要なコンテンツもあるため、スキマ時間を使ってスマートフォンで講習を受けられるようになり利便性が上がっています」と野口氏は評価する。
日特建設では、現場でノートPCを使って管理している現場管理に必要となる業務システムについても、今後スマートフォンを利用して効率化が図れるように検討していく。
KCCSでは、将来的にBYODも視野に入れている日特建設の業務や要望をより理解し、いつでも、どこでも安全に業務が行えるワークスタイル変革の支援を行っていく考えだ。
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