IT総合商社として、長野県でシステムインテグレーション(SI)サービスやセキュリティ製品の提供、ITを活用した業務改善などを手がける有限会社データーランド。同社は、エンドポイントセキュリティ対策強化のソリューションとして次世代型AIアンチウイルス「Deep Instinct」を導入。また、エムオーテックスのパートナー企業として、自社導入で蓄積したノウハウを、クライアント企業へのプロダクト販売、運用サービス提供に活かしている。Deep Instinctを導入した経緯や効果などについて、同社 代表取締役社長 市瀬 彰一 氏に話を聞いた。
長野県で業務システム開発などのシステムインテグレーション(SI)事業や、情報セキュリティコンサルティング、ITを活用した販売促進施策や、業務改善による経費削減施策の企画・提案、導入・運用などを手がける有限会社データーランド。
これまで同社では、ウイルス対策・マルウェア対策を実施したいというクライアント企業に対して、従来型、すなわち定義ファイル方式のアンチウイルスソフトを提案してきた。
しかし、あるクライアントから「会社の名前を騙った迷惑メールが取引先に送信されてしまっている」という相談があり、同社が調査すると、そのクライアント企業の端末がEmotetに感染していることが判明した。
Emotetは、2019年から継続的に流行しており、攻撃者から関係者を騙ったファイル付き不正メールが送信され、ファイルを開くと端末がEmotetに感染し、重要な情報を窃取されてしまうマルウェアだ。従来型のアンチウイルス製品ではEmotetがすり抜けて感染してしまう可能性があることを、クライアント企業への対応で実感し、Emotetへの対策として同社が提案するアンチウイルス製品の見直しを検討したと市瀬氏は話す。
アンチウイルス製品の検討については、Emotetに感染してしまったクライアント企業への提案・導入と並行して、データーランドにおいても自社内のEmotet対策が急務であるという判断から自社導入も進められた。
複数のアンチウイルス製品が候補に挙がったが、ディープラーニングによりEmotetなど未知の脅威にも対応できるマルウェア検知率の高さと、導入後の運用負荷も考慮したコストパフォーマンスの高さが決め手となりDeep Instinctが採用された。
実際、データーランドへの自社導入時には、1ヶ月間の検証を行った。その際、他社のアンチウイルス製品とDeep Instinctで検出できるマルウェアを比較したという。
「他社のアンチウイルス製品では検出されず、Deep Instinctだけが検出したマルウェアがあった」と市瀬氏。
また、Deep Instinctの優位性について、市瀬氏は、運用負荷がかからないためコストパフォーマンスが高い点も挙げた。
Deep Instinctは一度、インストールして設定が完了してしまえば、エージェントのバージョンアップも管理コンソールから行えるため、管理者の運用負荷が非常に低いという。
「他社のアンチウイルス製品では、バージョンアップのたびに、それぞれのエンドポイント端末で更新作業を行う必要がありました。弊社がアンチウイルス製品をご提案・販売したクライアント企業様の更新作業を代行する場合は、その作業コストを更新費として請求することになり、クライアント企業様にとってはコスト面のデメリットになります。運用費用として余計なコストがかからない点はDeep Instinctの大きなメリットでした。」(市瀬氏)
こうした実質的なコストメリットは、同社においてだけでなく、同社がDeep Instinctをクライアント企業に提案・販売する際にも大きなセールスポイントとなっている。「特に、専任の情シス担当者がおらず、導入する端末台数も少ない中小企業などでは、2年目以降のランニングコストが低減できるとメリットを感じてもらいやすい」と市瀬氏は話した。
データーランドは自社導入を契機に、以後1年間で約15社にDeep Instinctの提案・導入を行ってきた。
クライアント企業にDeep Instinctを導入する際に、自社導入で蓄積したノウハウが多分に活かされている。
「導入する際のインストール手順やポリシー設定など、クライアント企業様側で表示される管理コンソール画面についてよく理解できているため、スムーズに担当者様にご案内できた。」(市瀬氏)
また、データーランドでは、自社導入時の検証期間に実施した従来型アンチウイルス製品と次世代型AIアンチウイルス製品であるDeep Instinctを併用して両者の比較を行った結果について、それぞれのマルウェア検出レポートをドキュメントにしてクライアント企業に提供している。「従来型アンチウイルスで検出できなかったマルウェアが、Deep Instinctでは検知できており、こうした検知率の高さが、弊社においても、弊社のクライアント企業様においても、製品への信頼に変わっている」と市瀬氏は述べた。
また、導入効果としては、市瀬氏はDeep Instinctの検知率の高さと精度の高さを挙げた。「Deep Instinctのマルウェア検出精度は非常に高いので、安心して運用がすることができます。高品質な製品として、弊社の大切なクライアント企業様に自信を持ってご提案できるのです。」(市瀬氏)
データーランドがDeep Instinctを提案・販売したクライアント企業におけるユニークな例として、サポートが終了してしまったサーバーを更新し、サポートを受けられる最新状態にアップデートが完了するまで、そのサポート切れのサーバーの延命策にDeep Instinctが貢献したというエピソードがある。
「そのクライアント企業様はサーバー刷新を検討されていたが、サポート終了に間に合わなかった。そして、サーバーを刷新するまでの間、提供元のサポートが切れてしまいリスクがある状態になってしまったサーバーを守るため、当初は他社のAI型アンチウイルス製品の導入を検討していたが、インストールができなかった。しかし、Deep Instinctはインストールすることができ、サーバー刷新までの間、運用を行うことができた」という。
その結果、サーバー刷新までの一定期間、サーバーを安全な状態に保つことができ、かつ、その後のサーバーの更新も、クライアント企業の環境・内情を考慮できるようになったデーターランドで請け負うことができたそうで、Deep Instinctの提案・販売が同社に大きなビジネスメリットをもたらしたと市瀬氏は語った。
こうした実績の積み重ねにより、最近では、Deep Instinctにはライセンス費用だけでなく運用コストも含めたトータルでコストメリットがあるという認識がクライアント企業に広がっており、当初採用が多かった管理対象の端末が少ない中小企業だけでなく、端末が多い企業においても導入の検討が進むようになってきたと市瀬氏は手応えを感じているという。
「これまで、ライセンス費用単体で比較すると、従来のアンチウイルス製品との価格差が明らかになってしまい、結果的に導入をためらうクライアント企業様がいらっしゃった。しかし、ライセンス費用に導入後の更新等にかかる費用を加えてトータルで比較すると、更新費は挿入台数分が毎年乗算でかかってくるわけなので、2年後、3年後…と年数が経つほどランニング費用が低減できる。この点を說明して、導入を決断いただくケースが増えている。」(市瀬氏)
前述のエージェントのアップデートが管理コンソールから一元的に行えるという運用負荷が低い点に加え、Deep Instinctはクラウド型の製品のため、管理サーバーを自社で用意する必要がない。この点も運用負荷軽減とコスト軽減につながり、Deep Instinct導入の大きなメリットだという。
最後に市瀬氏は、Deep Instinctを自社で活用しながらクライアント企業へも提案・販売を行っているデーターランドならではの視点で、機能面においてぜひ改善してほしいポイントがあると述べた。
それは、例えば、「通知機能を細かく制御してほしい」というポイントだという。Deep Instinctには、マルウェアなどの不審なファイルを検知した際にポップアップで通知する機能があるが、「特定のポップアップだけを表示させないように、もう少し細かく設定できるようにしてほしい」とのことだ。
これは、エムオーテックスのパートナー企業としてクライアント企業へのDeep Instinct提案・販売から、導入後の運用サービスまで一貫して担う同社ならではの視点で、「弊社のような立場でDeep Instinctの運用サービスを提供する場合、クライアントごとに設定を分けて運用できると、さらに管理・運用の使い勝手が高まり、Deep Instinctを導入する企業へも高品質なサービスで還元できる」というのがその理由だ。
また、同社では、Deep Instinctを導入するクライアント企業への運用サービスとして、定期的にウイルスチェックした結果をレポートとして報告している。
Deep Instinctから出力されるもともとのデータのレポート項目を、クライアント企業の要望に応じてカスタマイズすることがあるという。例えば、導入したばかりの企業には、怪しいイベントやファイルの一覧をそのまま見せるのではなく、初めて運用する企業の担当者が理解しやすいように必要な情報を絞り、イベントを時系列に並び替えて視覚的に見せるようにするといった工夫だ。
こうしたレポートの表示項目などのカスタマイズについても、「クライアントの要望に応じて、必要な情報を見せるといった柔軟な対応ができるように、出力機能面の改善をお願いしたい。このような利用者の声を拾い、機能改善を継続していただけるとありがたい」と市瀬氏は述べ、エムオーテックスの製品提供元としての継続的な機能改善・サポート向上に期待したいと締めくくった。
※本事例は2023年1月取材当時の内容です。