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テレワーク時代に考える、業務の新しいスタンダードとは?

Written by 阿部 欽一

キットフックの屋号で活動するフリーライター。社内報編集、Webコンテンツ制作会社等を経て2008年より現職。情報セキュリティをテーマにした企業のオウンドメディア編集、制作等を担当するほか、エンタープライズITから中小企業のIT導入、デジタルマーケティングまで幅広い分野で記事執筆を手がけている。

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テレワーク時代の新スタンダード
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 新型コロナウイルス対策として、急遽広がった「テレワーク」。この新しい働き方の中で、生産性とセキュリティの両方を向上させていくには、何が必要なのだろうか。エムオーテックスは2020年7月17日、そんな問題意識に基づくオンラインセミナー「テレワーカーとオフィスワーカーの働き方をはかるモノサシとは」を開催した。
いち早くワークスタイル変革に乗り出してこられたサイボウズの代表取締役社長、青野慶久氏をゲストに、さらに事業とセキュリティ確保をバランスする仕組みづくりを推進するアスタリスク・リサーチ代表の岡田良太郎氏がモデレータを務めたこのパネルディスカッションには、850名以上の申込みがあった。その中から、エムオーテックスのテレワーク体制を推進してきた中本琢也氏の取り組みを中心に紹介する。

トライアルとは話が違う? 全社的な在宅勤務で直面した課題

 冒頭で、岡田氏はGoogle trendサイトで調べた結果を紹介した。テレワークというキーワードは、本年4月5日から11日の間に急激にピークが生じたという。数々の啓発活動があったにもかかわらず、緊急事態宣言発動までのトレンドレベルは低く、事実上埋もれていた。急激に注目が集まり、同時多発的に実現に向かうという、大きな転換点を迎えたことは明らかだ。
 エムオーテックスが実施したテレワークに関する調査によると、緊急事態宣言以前からテレワークを実施してきた企業は24%に過ぎなかったが、宣言を受けてテレワークを採用した企業は63%に上った。
こうした状況の中、エムオーテックスはどのようにテレワークを進めていったのだろうか。
中本氏によると、最初に同社で「テレワークを検討してもいいのでは」という話が持ち上がったのは2018年末のことだという。2019年5月に約20人が参加して第1回のトライアルを、7月には対象を46人に拡大して第2回のトライアルを実施し、その結果を踏まえて制度作りを進めようとしたタイミングで新型コロナウイルスの流行が始まった。
3月の時点で週2日の在宅勤務を選べる形にし、準備を進めていたという中本氏。3月末、同じビルに入居する別の会社で感染者報告が出たことから、まず東京オフィス勤務の約100名ほどが在宅勤務にシフトした。
 「このときは、電話は大阪オフィスに転送するといった形で大きな混乱なく対応できたので、『あ、いけるかな』と思っていました。しかし翌週に緊急事態宣言が出され、大阪含む全オフィス、全社員や派遣、パートナーの方が出勤できないとなると、PCを持って帰れないとか、家にPCがないとか、サービス残業をどうするのかとか、いろんな問題が一気に出てきました」(中本氏)。

その日出た問題はその日のうちに解決し、スピード感ある対応を実現

 では、ほぼ準備期間がなかった中、どうやってスピーディに対応していったのだろうか。

 「まず業務を止めないことを最優先にして、優先順位を付けながら各種対応を進めました。また、緊急事態宣言が出てから毎日2回、社長を含めた本部長会議を行い、その日出た問題はその日のうちに解決するようにしました。観察から仮説を立て、すぐ決めて実施する、いわば「OODAループ」的な形での対応です。これが非常に心強かったし、スピードに乗れた一番の要因だと思っています」(中本氏)。頻度は1日1回に減らしながら今もこの会議を継続しており、のべ100件を超える議題を取り上げてきたそうだ。
 コミュニケーション確立やネットワークの問題もあった。電話やVPNといった基盤の部分の問題だ。特にVPNについては、「準備はしていましたが、やはりすぐ枯渇し、『VPNがつながらないので、グループウェアのガルーンが見えず今日の予定が分かりません』『Office 365がつながらないのでメールできません』といった問題が多数出てきました。そこで情シスが夜中まで奮闘し、シングルサインオンやVDI、二要素認証を組み合わせてセキュアにアクセスできる環境を2、3日で用意してくれました」と中本氏は振り返った。
そして、こうした諸問題に情シスのメンバーが頑張って対応してくれたことに、あらためて感謝を述べた。

 目下の悩みは、テレワークを前提に、新入社員や中途入社で加わってきた社員との「人間関係」をどう積み重ねていくかということだ。ほかにも、テレワークで姿が見えない中、社員の評価をどう進めるか、生産性の低下をどう防ぎ、情報格差を埋めていくかなど、挑戦はまだ残っている。

中本氏は「ある程度準備できていたと思っていましが、やはりいろいろな課題があります。今後、出社を前提としない環境をいかに作っていくか検討しています」と現在の状況を率直に述べた。

テレワークにまつわる不安の払拭に活用できるITツール・ビジョンとは


エムオーテックスの場合、テレワークで社員の姿が見えないことで生まれた不安の解消に対して、自社製品であるLanScope Catを使って状況を可視化する「見せる化」に取り組んでいるという。
 LanScope Catではパソコンの操作をログとして取得し、誰が、いつ、何をしたのかを把握できる。主にマルウェア感染や機密情報の持ち出しといった異常な操作を検知し、対応を支援するために活用されているが、そうした異常な操作ログは、1日あたり2000?3000件に上るログのうち約4%に過ぎなかった。中本氏は残り96%のログを活用し、見せる化することで、「働きすぎるのではないか、サービス残業をさせてしまっていないか」といった不安の解消につなげたといという。
 事実、緊急事態宣言直後の情報システム部のメンバーのログを確認したところ、1人、大幅に残業をして頑張っているメンバーがいたことが判明した。直接ヒアリングしてみると、社員からの問い合わせ対応に忙殺されていたことが分かったので、問い合わせ窓口は中本氏に集約し、情報システム部は業務に集中する形にシフトしたという。
 「ちゃんと仕事をしていることを示す96%のログをうまく可視化し、正しく証明に使うことで、コロナ禍によって生じた『見えないから不安だ』『サボっていると思われているのではないかと不安だ』といったさまざまな不安を解消できるのではないか」と中本氏は述べ、ひいては、会社にとってもっとも重要な資産である「社員」を守り、安全と生産性向上の両立を目指したいとした。

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