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インシデント管理とは?必要性や問題管理との違いを解説

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インシデント管理とは、ITサービスの提供中に発生する予期せぬ事象を、迅速に検出・記録・分類・対応・解決し、サービスの中断を最小限に抑えるプロセスを指します。その目的は、システムの可用性を確保し、通常の業務運用を速やかに復旧させることにあります。

インシデント管理では、サイバーセキュリティの分野をはじめ、物理的なセキュリティやビジネス継続計画(BCP)、法的対応などを含む、総合的な管理が求められます。 

具体的なインシデント管理のプロセスは以下のとおりです。

  1. 検出 – インシデントの兆候を識別し、影響範囲を特定する
  2. 分類 – 影響範囲や優先度を評価し、適切な対応策を決定する
  3. 対応・解決 – 一時的な回避策による影響の最小化や、恒久的な修正を実施する
  4. 記録・管理 – インシデントの履歴を記録し、今後の対応の最適化を図る
  5. クローズ – インシデントを正式に解決し、再発防止策を策定する

また、近年はマルウェアやランサムウェア、不正アクセスなどのサイバー攻撃への対応もインシデント管理の一環として重要性を増しています。こうしたセキュリティインシデントは突発的に発生し、業務や信用に甚大な影響を及ぼすため、事前準備と迅速な初動対応が求められます。

本記事では、まずインシデント管理の基本や必要性、運用プロセスを解説した上で、後半ではサイバーセキュリティにおける実践的なインシデント対応の流れと管理ポイントについて詳しく紹介します。

▼この記事を要約すると

  • インシデント管理とは、システム障害やサービス停止などのITトラブルに対して、検知・対応・復旧・記録・クローズまでを標準化して行うプロセスであり、特にIT運用・サイバーセキュリティ・BCP・法務対応といった分野で求められる
  • そのうち「セキュリティインシデント管理」とは、マルウェア感染や情報漏洩などのサイバー攻撃に対し、初動対応から復旧・再発防止までを組織的に行う取り組み
  • 効果的なセキュリティインシデント管理には、「対応ルールの整備」「ナレッジの蓄積」「アラートの自動化」「対応状況の見える化」の4つの要素が重要

インシデントとは

インシデントとは、予期せぬ事象や事故を指し、特にビジネスやIT分野においては、システムやサービスの運用に重大な影響を及ぼす障害や問題を意味します。具体的には、システムのダウンタイム、データ損失、業務の停止などが該当します。

特に、情報セキュリティの観点から発生する異常や脅威は「セキュリティインシデント」と呼ばれます。セキュリティインシデントには、マルウェア感染、不正アクセス、情報漏洩、内部不正などが含まれ、組織の機密情報や事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

インシデント管理とは

インシデント管理とは、ITサービスの提供中に発生した予期せぬ事象に対し、迅速に記録・対応・解決を行うプロセスを指します。その目的は、システムの中断を最小限に抑え、通常の運用を迅速に復旧させることにあります。

例えば、自社のシステムで障害が発生した場合、影響範囲を特定し、適切な復旧措置を講じることで、サービスの安定性を回復させることが求められます。

インシデント管理のプロセスは、一般に以下の流れで実施されます。

  1. 検出(インシデントの発生を識別し、記録する)
  2. 分類(影響度・緊急度に応じた分類を行う)
  3. 対応(一次対応・エスカレーション・恒久対策の策定)
  4. 記録・監視(対応履歴を記録し、類似インシデントの発生を防止)
  5. クローズ(影響範囲の収束を確認し、インシデントを正式に終了)

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インシデント管理が求められる主な項目

インシデント管理は、単なる技術的対応だけでなく、組織全体のリスクマネジメントの一環として幅広い分野で求められます。特に以下のような領域において、インシデント発生時の対応体制の整備が不可欠です。

1. ITシステム・サービスの運用

システム障害やサーバーダウン、ソフトウェアの不具合など、日常的に発生し得るトラブルへの迅速な対応と復旧は、サービス提供の継続に直結します。

2. サイバーセキュリティ(情報セキュリティ)

マルウェア感染、ランサムウェア、情報漏洩、不正アクセスなどのセキュリティインシデントへの対応は、企業の信頼と法的リスクの回避に直結します。

3. 業務継続性(BCP)・災害時対応

災害、障害、人為ミスなどが業務に与える影響を最小限に抑えるため、インシデント発生時の業務復旧プロセスが必要とされます。

4. 法務・コンプライアンス対応

個人情報保護法や各種規制への違反が発覚した際のインシデント対応、外部への報告体制なども含めた法令遵守の視点が重要です。

インシデント管理はなぜ重要?


インシデント管理は、「再発防止」および「対応スピードの向上」の観点から極めて重要です。
適切な管理を行うことで、同様のインシデントの発生リスクを低減し、発生時の影響を最小化することが可能になります。

再発防止のため

インシデントの発生を完全にゼロにすることは困難ですが、各インシデントには特定の原因や環境要因が存在します。これらを調査・分析し、根本原因の特定と恒久的な対策を講じることで、同種のインシデントが繰り返されるリスクを大幅に低減できます。

対応スピード向上のため

すべてのインシデントを事前に防ぐことは難しく、発生した際の「初動の早さ」が被害規模を左右します。そのため、あらかじめインシデント対応フローを整備し、早期の検知・報告・エスカレーションが可能な体制を整えることが重要です。

また、インシデント対応記録やナレッジベースの整備によって、過去の事例に基づいた対応判断が可能になり、次のようなメリットが得られます。

・類似インシデントへの迅速な対応
・対応手順の標準化と属人化の防止
・情報共有によるチーム全体の対応力向上

結果として被害の拡大を防ぎ、業務への影響を最小限に抑えつつ、BCP(事業継続計画)にも貢献します。

インシデント管理と問題管理の違い

インシデント管理と問題管理は密接に関連していますが、その目的と適用範囲は異なります。

  • インシデント管理:発生した問題に対し、即時対応を行い、影響を最小限に抑えながら業務を継続させることを目的とします。
  • 問題管理:インシデントの根本原因を特定し、長期的な解決策を策定することを目的とします。

インシデント管理が目指すのは、発生した問題の応急処置と即時対応であり、ユーザーの業務継続を最優先とします。一方、問題管理は、インシデントの根本原因を深く分析し、長期的な解決策を見出すプロセスです。単に目の前の問題を解決するだけでなく、サービス品質の根本的な改善を目指します。

▼プリンターの故障による具体例
インシデント管理の対応:企業のプリンターが故障した場合、代替機の提供や別のプリンターの使用を推奨することで業務継続を支援。
問題管理の対応:プリンターの故障が頻発する場合、故障の原因を特定し、ネットワーク構成の見直しや機器の入れ替えを検討することで、長期的な解決を図る。

インシデント管理の中でも注目される
セキュリティインシデント管理の重要性


インシデント管理は、業務の中断や情報漏洩といった異常事象に対し、組織が迅速かつ的確に対応するための基盤的なプロセスです。システム障害や人的ミス、自然災害など原因はさまざまですが、影響の最小化と業務継続性の確保は全ての組織にとって不可欠です。中でも、近年特に重要性を増しているのがサイバーセキュリティに関わるインシデント管理です。

セキュリティインシデントとは、不正アクセス、マルウェア感染、ランサムウェア攻撃、内部不正、設定ミスによるデータ漏洩など、情報資産やシステムに対するセキュリティ上の脅威を指します。高度化・巧妙化するサイバー攻撃は、発生すれば甚大な被害をもたらします。業務の停止、経済的損失、企業イメージの低下など、その影響は計り知れません。

こうした状況を踏まえ、インシデント管理全体の中でもセキュリティインシデント対策の整備・対応体制の強化は、今まさに優先して取り組むべき課題の一つです。
次章では、セキュリティインシデント対応の流れや、管理のポイントについて詳しく解説します。

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セキュリティインシデント対応の流れ


​​セキュリティインシデント発生時には、被害の拡大を防ぎながら迅速に対応することが求められます。​​IPAは「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」にて、インシデント発生時の対応の流れを、​​「1.検知・初動対応」「2.報告・公表」「3.復旧・再発防止」​​の3段階を軸に説明しています。​

出典:IPA│中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き(2024年7月)

ステップ1:検知・初動対応

インシデント対応の第一歩は、「異常の早期発見」と「即時の初動対応」です。
システムで異常な動作が発生したり外部からの通報があったりした場合、情報セキュリティ責任者に速やかに報告し、対応体制を立ち上げます。
初動対応では、感染・侵害の拡大を防ぐために、ネットワークの遮断、端末の隔離、システムの一時停止などの措置を講じます。対応の責任者や関係者の役割分担を明確にし、迅速に対応できる体制を整えましょう。

ステップ2:報告・公表

インシデント発生後は、社内外への適切な情報共有と報告が求められます。特に、顧客や取引先に影響が及ぶ場合は、速やかに第一報を発信し、状況説明や謝罪を行います。
必要に応じて、個人情報保護委員会、関係官庁、警察等への届け出も検討しましょう。また、問い合わせ窓口の設置や、被害者への説明・補償対応なども信頼回復のために重要なステップです。

ステップ3:復旧・再発防止

インシデントの原因調査と復旧は、対応の核心部分です。5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうしたか)の視点で事実関係を整理し、ログやデータを証拠保全します。必要に応じてフォレンジック調査を行い、詳細な原因を明らかにします。調査結果に基づいて、システムの修復、データ復元、機器の入れ替えなどを実施し、完全に復旧できたことを確認したうえで、業務を再開します。

最後に、再発防止の観点からルールや体制の見直し、社員への教育強化、技術的対策の導入を行うことが重要です。復旧後の振り返り(Post-mortem)を行い、次回に備えた改善を継続していくことが、インシデント対応力の成熟につながります。セキュリティインシデント対応の詳細については、以下の記事もご参照ください。

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セキュリティインシデント対応の6ステップをわかりやすく解説

セキュリティインシデント管理の4つの実践ポイント


セキュリティインシデントは、マルウェア感染、情報漏洩、不正アクセスなど、組織の信用や事業継続に大きな影響を与えるリスクです。迅速かつ的確な対応には、体制の整備とルールの明確化が不可欠です。
ここでは、実践的かつ再現性の高いインシデント管理のポイントを4つにまとめて解説します。

1. インシデント対応ルールの整備

セキュリティインシデント発生時に備え、事前に対応ルールやエスカレーションフロー、対応責任の明確化を定めておくことが重要です。

▼主なポイント

  • 対応の優先度(重大度)の基準を決めておく
  • 上司や専門チームへのエスカレーション条件を明確化
  • 対応時に必要な情報(日時、影響範囲、原因など)を整理

これらは事前に明文化し、全関係者に周知徹底することで、緊急時に担当者が迷わず対応できる体制を構築しましょう。定期的な見直しや訓練も重要です。

2. インシデント対応の記録と再利用(ナレッジ化)

過去のセキュリティインシデントを体系的に記録・分析し、蓄積・検索できる仕組み(ナレッジベース)として活用することが、対応精度と再発防止策の品質向上につながります。

▼ナレッジベースに記録すべき情報の例

  • 発生したインシデントの概要(発生日時、影響範囲、原因など)
  • 取られた対応策(具体的な手順、対応時間、使用したツールなど)
  • 得られた教訓(再発防止策、運用改善点)

ナレッジベースを適切に管理・活用できる体制構築で、類似インシデント発生時に迅速な対応が可能となり、対応の属人化を防ぐことができます。

3.アラート対応を効率化・自動化する

セキュリティツールのアラート対応を、すべて手作業で確認するのは非現実的です。アラート過多に対応するため、アラートの優先度判定(トリアージ)と、自動対応の仕組みを整備することが重要です。

  • 高リスクアラート:即時に管理者へ通知
  • ノイズとなるアラート:自動でフィルタリングし、通知や対応を省略
  • 一部のツールでは、端末の自動隔離などの初動対応も可能

また、外部ベンダーによるMDRサービスなどをセキュリティツールと併用することで、運用リソースの最適化が図れます。

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専門家が24時間365日監視するMDRサービス「CylanceMDR」とは

4.対応状況の「見える化」とチーム連携の強化

複数部門・外部関係者が関与するセキュリティインシデントでは、対応状況の可視化と情報連携の即時性が重要です。

実務で求められる「見える化」の要素

  • 対応ステータス(例:検知→分析→封じ込め→復旧→報告)の進捗トラッキング
  • 各対応フェーズでの担当者・対応内容・タイムスタンプの記録
  • 経営層向けのダッシュボード表示(影響範囲・事業インパクトの見える化など)

インシデント対応の過程では、関係者全員がリアルタイムで状況を把握できる環境が必要です。可能であればインシデント管理ツールを導入し、対応の一元管理とログの自動記録を行うと効率的です。

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ここまでご紹介したように、インシデント対応には事前の準備・体制整備・迅速な初動対応・全体の連携が不可欠です。しかし、実際のインシデント対応現場では、限られた人員やノウハウでは、対応しきれないケースも少なくありません。

特に、ランサムウェア感染や標的型攻撃など、高度かつ巧妙なサイバー攻撃に直面した場合には、専門的な調査と対応力が求められます。そうした際に活用したいのが、外部の専門家によるインシデント対応支援サービスです。

LANSCOPE サイバープロテクションが提供する「インシデント対応パッケージ」は、フォレンジック調査の専門家が、サイバー攻撃の原因特定から封じ込め、復旧支援までを一貫して支援するサービスです。
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  • 専門家によるフォレンジック調査:端末やネットワークの調査を通じて、攻撃の痕跡を解析
  • 影響範囲の特定と封じ込め:被害の拡大を防ぐための緊急対策を実施
  • 復旧支援とアドバイス:今後の対策やセキュリティ強化に関するコンサルティングを提供
  • 柔軟なオプション対応:ネットワークログ解析、保全作業、報告会など、ニーズに応じた追加サービス

「自社で復旧作業が難しい」「攻撃の経路や影響範囲の特定を専門家に任せたい」という方は、ぜひご検討ください。

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まとめ

記事では、インシデント管理の基本的な考え方や必要性、管理プロセスについて解説するとともに、サイバーセキュリティの視点から見た実践的な対応方法についてもご紹介しました。

▼この記事を要約すると

  • インシデント管理とは、システム障害やサービス停止などのITトラブルに対して、検知・対応・復旧・記録・クローズまでを標準化して行うプロセスであり、特にIT運用・サイバーセキュリティ・BCP・法務対応といった分野で求められる
  • そのうち「セキュリティインシデント管理」とは、マルウェア感染や情報漏洩などのサイバー攻撃に対し、初動対応から復旧・再発防止までを組織的に行う取り組み
  • 効果的なセキュリティインシデント管理には、「対応ルールの整備」「ナレッジの蓄積」「アラートの自動化」「対応状況の見える化」の4つの要素が重要

適切なインシデント管理の実施により、企業のセキュリティ対策を強化し、対応スピードと業務効率を向上させることが可能です。組織全体で継続的に改善を図り、インシデント発生時に迅速かつ的確な対応ができる体制を整えましょう。
「日常で発生するインシデントへの対応」を理解する上で役立つ、チェックシートもぜひご活用ください。

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