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情シスTipsシリーズ① 情シスのための効率的会議術(後編)

Written by aki(あき)

ネットワークエンジニア
大手Nierでネットワークエンジニアとして最前線で戦う傍ら、個人運営のサイト「ネットワークエンジニアを目指して」を運営し、読者を「ネットワークトラブルに恐れることなく立ち向かえるネットワークエンジニア」へと導くことを信条に、ネットワーク技術の解説と自身のノウハウを広めている。著書に「見てわかるTCP/IP」など。Twitter:itbook

効率良く会議を行う3つのノウハウ


前回は会議の基本的な考え方と運営方法について書きましたが、それだけでは実際の現場ではうまく活用できない場合もでてくるはずです。

そこで今回は、より効率良く会議を運営するためのノウハウを紹介していきます。

情シスはとても会議が多い

情シスはステークホルダーが多く、各ステークホルダーと連携しながらシステムを運営していくため、とても会議が多い部署ともいえます。

* システムを利用しているユーザからの問い合わせ
* 機器更改や見直しのための機器ベンダーとの打ち合わせ
* システム開発のための開発ベンダーとの打ち合わせ
* 情報システムの開発方針を決めるための上長との打ち合わせ
* 連携する他社システムの担当者との打ち合わせ

このようにさまざまなステークホルダーとさまざまな種類の会議を数多くこなしていきます。もちろんそれぞれの会議でしっかりと成果をだしていかなければいけません。

会議で成果を出すための3つのノウハウ


多くの会議を効率良く実施し、かつ成果を出すためには次の3つのノウハウを身に付ける必要があります。

* 会議でやってはいけないことを知る
* 会議でやらなければいけないことを知る
* 会議効率化Tips

会議でやってはいけないことを知る


今までのやり方から、より効率良く会議を行うためには、「そもそも現在の会議方法の何が悪いのか」を知る必要があります。
「悪いこと」や「やってはいけないこと」を認識しておくと、現在の会議が悪い方向に進んでいるか、あるいは進みそうなのかを認識できます。

会議でやってはいけないことには次のようなものがあります。

会議のゴールとは関係ない議論ばかり行う

本来の会議のゴールを無視して、まったく違う議論をひたすら行ってしまう状態です。
とくに議論を発散させるコメントをするメンバーが参加していると、このパターンに陥りやすいです。議論は活発に行われるのですが、本来のゴールとはかけ離れた議論に終始してしまうため、最終的に再度打ち合わせを行いましょうというオチで会議が終わりがちです。

対策としては、会議前に参加者全員が会議の目的を理解してもらうことが重要です。そして会議中に、議論が会議の目的から離れていくことを感じたら、早めに方向修正するようにします。

木を見て森を見ず

資料の体裁や言葉尻を指摘することに終始したり、ドキュメントのレビューを何時間もかけて1文ずつ行うような会議です。

もちろん文言の間違いが無いかレビューを行う会議であればよいのですが、全体感を把握せずにいきなり細かい文言をレビューするのは時間の無駄です。

対策としては、「今回の会議は、ドキュメントの概要をレビューすることがゴールです」など、最初にレビューの進め方を提示するようにします。

詳細なレビューが必要な場合でも、事前にレビューをお願いして、会議では指摘事項のみをあげてもらうような進め方を検討してみましょう。

議論ではなく口論になってしまう

建設的な議論ではなく、相手を罵ったりいがみ合う状態です。

会議とは、目的を達成するために議論する場ですが、口論になると声の大きい人や身分が上の人の意見がとおってしまうことが多いため、本来の目的を達成できません。

一度口論が始まってしまうと、会議中に建設的な議論に引き戻すことは容易ではありません。そうならないためにも、事前にある程度の根回しをしておいたり、会議中に口論になりそうなら、「その話題は会議後に個別で話しましょう」と言って議題を飛ばすなどの対策を行いましょう。

一部の参加者の意見で決まってしまう

声の大きな人や、積極的に発言する人たちだけの意見でものごとが決まってしまう状態です。

本来であれば、議論に必要な知識を持った有識者や、当こと者の意見などを共有した上で議論すべきところを、その場にいた「声の大きな人たち」の意見で議論を進めてしまうことはよいとはいえません。
特に「俺の言ったこと理解してる?」とか「○○さんには分からないだろうけど」とか言い出す人には要注意。

このような事態を避けるには、本当にその人は会議に必要なメンバーなのかを考えて、あまり関係のないメンバーなのであれば思い切って参加者から外すことを検討してもよいかもしれません。

会議の形骸化

進捗会議やチーム会議などの「定例会議」によくあるパターンです。

毎回同じアジェンダで、同じアウトプットをして時間になったら閉会するよな会議は実施する意味がありません。
「特に議論することはないですが、念のため来週も進捗会議をしましょう」という会話があったら要注意です。

すでに定例で集まる必要がなくなったのであれば、開催周期を長くしたり廃止するなどの対策を行いましょう。

集まる必要があるのにもかかわらず議論が盛り上がらない場合は、参加者に会議の趣旨を理解して貰えていないか、会議をリードする人がいないことが原因かもしれません。
どこに原因があるのかを検討して、改善していくようにしましょう。

会議でやらなければいけないことを知る


会議でしてはいけないことを知ったら、次に会議でやらなければいけないことを理解し、実践していきます。

具体的な方法は次に説明する「会議効率化Tips」で紹介しますので、ここではもう少し大枠で会議に臨むための「考え方」について紹介します。

会議でやらなければいけないこととしては、大きく次の3つがあります。

* 発言を歓迎する
* 具体的に発言する
* アクションに落とし込む

この3つの考え方はどの種類の会議でも実践すべき内容ですので、意識して会議に臨むようにしましょう。

発言を歓迎する

自分の考えに否定的な発言だったり、その場の空気を読まない発言であっても、発言者はそれを言いたいから発言しているということを忘れてはいけません。

一方的に発言を否定してしまうと、発言者はそれ以上発言しなくなるかもしれません。それは決して建設的な話し合いではありません。

どのような発言であっても、まずは歓迎すること。そしてその発言の裏の意図を考えたり、確認してみます。

もしかしたらその発言がきっかけで解決策の糸口が見つかるかもしれません。

具体的に発言する

曖昧な発言に終始して、最終的に何が言いたかったのか分からないまま会議が終わってしまうことがあります。

曖昧な言葉だと、参加者それぞれがその言葉を違う意味にとってしまい、認識が合っていると思ったら実は認識が違っていたという事態にもなりかねます。

そのような事態に陥らないように、会議での発言はできるだけ具体的な言葉を使って発言するようにします。システム障害の対策の会議であれば、どのシステムがどのような事象で、現在どのような状態なのかを具体的に共有しましょう。

アクションに落とし込む

ほとんどの会議は、最終的に行動に繋がることがゴールです。

反論や問題点ばかりをコメントして、「じゃあどうすれば解決するのか」について発言しない人がいます。反論や問題の指摘をすることは簡単ですが、ではその問題を解決するにはどのようなアクションが必要なのかという点が抜けてしまうのは会議の意味がありません。

会議はできるだけ行動に繋がること、アクションアイテムを生み出すための議論をすることを忘れないようにしましょう。

そのためにも最初に決める会議のゴールも具体的にすべきです。今日の会議は「○○システムについて話し合う」といった曖昧な設定ではなく、「○○システムを今年度中に導入するための会議」といったアクションに繋がるゴールを設定しるようにしましょう。

会議効率化Tips


最後に会議の効率化のための具体的なTipsを押さえる必要があります。すぐに使えるようなものから、時間を掛けて身に付けるようなTipsまでさまざまありますが、最終的にはすべてのTipsを身に付けることがゴールになります。

今すぐ使える会議を盛り上げる発言テクニック

会議中に議論を活性化させるための発言テクニックを紹介します。
今すぐにでも使えるテクニックにもかかわらず、非常に効果的ですのでぜひ使ってみてください。

「もう少し説明をお願いします」
相手の説明が曖昧だったり、分かりにくい場合、理解が追いつかない場合にこの発言を使ってみましょう。
自分が理解出来ず、でも分かりませんと言いにくい場合にも使えるテクニックです。

「それはなぜですか」
声の大きな人が自分の意見を押し通そうとした場合や、相手と意見が合わない場合、うまく言い返せない場合に使ってみましょう。
相手に意見に反論したい場合も、いきなり反論するのではなく、まずは「それはなぜですか」と聞いてみると実は同じような意見だったということもあり得ます。

「この件に関して○○さんの意見を伺いたいです」
あまり発言をしない参加者に対して発言を促したり、キーマンとなる参加者の意見を聞きたい場合にしようするフレーズです。
会議が脱線してしまった場合に方向修正したい時や、だらだらと発言している参加者の話を断ち切りたいときにも効果的です。

「つまり○○さんのご意見は、△△ということでよろしいでしょうか」
曖昧な発言に終始したり、何を言いたいのか分からない場合、要約して確認するようにします。発言を要約するというスキルが必要になりますが、会議を円滑に進めるためにもぜひ身に付けておきたいところです。

さらに会議を効率化するためのテクニック


ここからは今すぐに使えませんが、これらのテクニックを身に付けることで、より成果が出る会議にすることができます。身に付けることができれば一生もののスキルになるので、ぜひ挑戦してみてください。

根拠を意識する
以前、システム更改を進める会議で「どのメーカの機器を導入したいか?」という話しになり、Aさんが「○○メーカの機器を導入したい」という発言をしました。他の参加者からは当然のように、「なぜそのメーカの機器を入れたいのか?」という質問があったのですが、Aさんは明確に答えることができませんでした。

意見を発言することはとても大事なことですが、発言するからにはその根拠も話せるようにしておきましょう。聞き手側も参加者の発言に対して、「根拠は何か?」を意識しておくとよいでしょう。

「5W1H」で反論する
参加者の発言に対してはもちろん、自分自身の発言についても、5W1H(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように)という視点で考慮しましょう。
これらの視点で質問したり、自身の発言の裏付けを考えることで、深みのある議論ができるようになります。

「想定」と「事実」を区別する
よく見る光景として、想定と事実をごっちゃにして発言する人を見かけます。しかし想定と事実はまったく別物です。
想定は発言者が考えたことで、その意見が正しいかどうかは不明だし、人それぞれ意見が違うものです。事実はなんらかの形で証拠を示せるものです。
中には事実であるかのように想定を話す人がいるので注意で必要です。

議論の落としどころを探る
議論が白熱してくると、意見が対立したり、最終的に何がどう決まったのかが分からなくなってしまいます。そのため会議中に議論の落としどころを探っていく必要が出てきます。

想定シナリオを検討してみる
会議の中で決まったアクションアイテムを実行した結果、「うまくいった場合」と「うまくいかなかった場合」のシナリオを考えてみます。
検討したシナリオの結果、実行すべきアクションに漏れがないかどうかを検討し、そのアクションアイテムは実行可能かどうか、実行可能ならばいつすべきなのかを考えましょう。

会議は前に進むために実施するものです。できるだけ次のアクションを考え実行することが重要ですので、さまざまな角度からアクションを考えることも重要です。

まとめ


以上2回に渡って情シスのための効率的会議術をご紹介しました。効率良く会議スキルを身に付けるためには、まず基本的な会議の進め方をおさえ、その上でさらに成果を出す会議テクニックを身に付けるようにするとよいでしょう。
いきなりすべての内容を覚えることは難しいと思いますので、まずは「会議でやってはいけないこと」と「会議でやらなければいけないこと」を覚えることから始めてみてはいかがでしょうか。