Written by Aimee

目 次
SDLC(Software Development Life Cycle|ソフトウェア開発ライフサイクル)とは、ソフトウェアの開発プロセスを、体系的に管理・実行するためのフレームワークです。ソフトウェアの品質を向上させ、開発の効率を最大化する目的で活用されます。
SDLCは以下、7つのフェーズで構成されます。
- ・ 企画
- ・ 要件定義
- ・ 設計
- ・ 実装
- ・ テスト
- ・ リリース・デプロイ
- ・ 運用・保守
各フェーズが明確に定義されることで、プロジェクト全体を可視化し、進捗状況の把握が可能となります。
また、SDLCには複数のモデルが存在し、プロジェクトの要件や開発チームの体制に応じて適切な手法を選択することが重要です。以下は代表的なSDLCのモデルです。
▼SDLCの主要なモデル
ウォーターフォール型 | 上流工程から下流工程と順番に進行していくモデル |
---|---|
アジャイル型 | 比較的短い期間で実装できる単位に機能を分割し、優先順位の高い要件から順番に進めていくモデル |
ハイブリッド型 | ウォーターフォール型とアジャイル型の特徴を組み合わせたモデル |
反復型 | 各フェーズで要件定義からテストまでの工程を繰り返し、徐々にソフトウェアを完成させるモデル |
スパイラル型 | 開発工程を機能ごとに分け、優先度の高い機能から開発を進めていくモデル |
V字型 | 各開発フェーズに対応するテストフェーズが存在し、設計・実装と並行してテストが進行するモデル |
プロトタイプ型 | システムの試作品(プロトタイプ)を作成し、それをもとにユーザーからのフィードバックを得ながら開発を進めるモデル |
リリースまでのスピードや仕様変更への柔軟性は各モデルで異なるため、事前に適切なモデルを選ぶことが重要です。
本記事では、SDLCの概要、その仕組み、および重要性について詳しく解説します。
▼この記事を要約すると
- SDLCは、ソフトウェア開発においてセキュリティの強化、進捗の可視化、納期の短縮、コスト削減といった多くのメリットを提供する。これにより、開発チームはプロジェクトを効率的かつ高品質に進められ、最終的には顧客やユーザーに価値を提供することが可能
- SDLCの主要なフェーズは、「企画」「要件定義」「設計」「実装」「テスト」「リリース・デプロイ」「運用・保守」の7段階
- SDLCに取り入れるべきアプローチとしては、「DevOps」や「シフトレフト/シフトライト」などが挙げられる
SDLCとは
SDLC(システム開発ライフサイクル)とは、システムやソフトウェアの開発プロセスを体系的に管理・実行するためのフレームワークです。
SDLCでは、ソフトウェア開発を複数のフェーズに分割し、各フェーズで実施すべき作業や成果物を明確に定義します。
▼SDLCの主なフェーズ
- ・ 企画
- ・ 要件定義
- ・ 設計
- ・ 実装
- ・ テスト
- ・ リリース・デプロイ
- ・ 運用・保守
SDLCを適用することで、以下のメリットが得られます。
- ・ 品質の向上
- ・ コスト削減
- ・ 開発期間の短縮

SDLCの重要性
SDLCは、以下の点で開発プロセスにおいて重要な役割を果たします。
1. セキュリティリスクの低減
SDLCを導入することで、各フェーズで発生しうるリスクを事前に特定しやすくなります。
開発初期段階でリスクを把握しておくことで、迅速な特定・修正が可能になり、ソフトウェアの信頼性と安全性を向上させることができます。
2. 進捗の可視化と管理の最適化
SDLCでは、各フェーズごとに実施すべき作業や成果物が定義されているため、プロジェクトの進捗を定期的に評価・測定できます。
これにより、進捗の遅れや問題の早期発見・対応が可能に。また、プロジェクト管理者は進捗を可視化しやすくなり、リソースの最適化や優先順位の調整をスムーズに実施できます。
3. 納期の短縮・コスト削減
適切にリソースを割り当て、開発プロセスを管理することで、無駄な遅延や再作業を削減できます。
また、テストやデバッグを早期に実施することで、手戻りや大幅な修正を回避し、開発期間の短縮にもつながります。
SDLCの仕組み
SDLCの各フェーズ(企画、要件定義、設計、実装、テスト、リリース・デプロイ、運用・保守)には明確な役割と目的があり、各フェーズが連携することで効率的な開発が実現されます。
以下では、各フェーズの概要を解説します。
1. 企画(Planning)
企画フェーズでは、ソフトウェア開発の全体的な目標や戦略を策定し、以下の要素を明確にします。
- ・ プロジェクトの目的・スコープ
- ・ 必要なリソース(人員・技術・設備など)
- ・ 予算およびスケジュール
また、プロジェクトマネージャー、開発者、ステークホルダーが協力し、開発の基本方針を決定します。
2. 要件定義(Requirement Analysis)
要件定義フェーズでは、システムが満たすべき機能・性能を明確に定義します。
具体的には、ユーザーやステークホルダーからのフィードバックをもとに、以下の要件を策定します。
- ・ 機能要件(システムが提供すべき具体的な機能)
- ・ 非機能要件(性能、セキュリティ、スケーラビリティなど)
要件定義が曖昧な場合、後の開発工程で仕様変更や追加作業が発生し、プロジェクトの遅延につながるため、慎重に策定する必要があります。
3. 設計(Design)
設計フェーズでは、開発の基盤となる、以下の設計を具体化します。
- ・ アーキテクチャ設計(システム全体の構造)
- ・ データベース設計
- ・ UI/UX設計
- ・ セキュリティ設計
適切な設計を行うことで、後の実装やテストがスムーズに進行し、不具合の発生を抑えることが可能です。
4. 実装(Implementation)
実装フェーズでは「設計」に基づき、ソフトウェアの開発を行います。
- ・ 設計書に従ったコーディング
- ・ 適切なコーディング規約の遵守
- ・ テストコードの作成とユニットテストの実施
開発者は品質を確保しながら、開発を進めることが求められます。
5. テスト
テストフェーズでは、実装されたソフトウェアが正しく動作するかどうかを確認します。
主なテストの種類
- ・ ユニットテスト(単体テスト) – 各モジュールが仕様通りに動作するか検証
- ・ 統合テスト – モジュール間の連携が正常に機能するか検証
- ・ システムテスト – システム全体の動作を評価
- ・ ユーザビリティテスト – 実際のユーザーによる操作性の確認
テストを通じて不具合を特定・修正することで、リリース後の問題を未然に防ぐことができます。
6. リリース・デプロイ(Release & Deployment)
リリース・デプロイフェーズでは、開発が完了したソフトウェアを本番環境に移行し、ユーザーが実際に使用できる状態にします。
この段階では、デプロイメントの手順を事前に計画し、必要なサーバーやインフラの準備を整えます。また、ユーザーへのサポート体制やインストールガイド、ドキュメントの提供も行われます。
7. 運用・保守(Maintenance)
運用・保守フェーズでは、リリース後のソフトウェアの維持・管理を行い、継続的な改善を実施します。
- ・ 障害対応・バグ修正
- ・ パフォーマンス監視
- ・ セキュリティパッチの適用
- ・ ユーザーからのフィードバックの収集と改善
運用・保守の質が、システムの安定性やユーザー満足度に直結するため、継続的な監視と改善が求められます。
SDLCモデル
SDLCの代表的なモデルとしては、以下の7つが挙げられます。
- ・ ウォーターフォール型
- ・ アジャイル型
- ・ ハイブリッド型
- ・ 反復型
- ・ スパイラル型
- ・ V字型
- ・ プロトタイプ型
ウォーターフォール型
ウォーターフォール(Waterfall)は英語で「滝」を意味し、上流工程から下流工程へ順番に進行する開発モデルです。
このモデルは、プロジェクトの初期段階で要件が確定している場合に適しており、小規模なシステム開発でよく採用されます。
なお、「各フェーズが完了し、前フェーズの成果物に合意が得られた場合のみ次の工程へ進める」ため、大規模なシステム開発では年単位の期間を要することもあります。
アジャイル型
アジャイル型は、比較的短期間で実装可能な単位に機能を分割し、優先度の高い要件から順に開発を進めるモデルです。
このモデルの最大の特徴は、開発した機能を都度リリースできる点で、開発期間を短縮できるだけでなく、仕様変更にも柔軟に対応可能です。
ハイブリッド型
ハイブリッド型は、ウォーターフォール型とアジャイル型の特徴を組み合わせたモデルです。
例えば、要件定義や設計、最終段階のテストはウォーターフォール型で進め、それ以外の工程をアジャイル型で進行するなど、プロジェクトの性質に応じた柔軟なアプローチが可能です。
システムの基本方針を明確にしつつ、仕様変更にも適応できる点が特長です。
反復型
反復型は、各フェーズ(要件定義からテストまで)を繰り返し実施し、段階的にソフトウェアを完成させるモデルです。
アジャイル型と似ていますが、アジャイル型が機能単位で進めるのに対し、反復型はフェーズ単位でフィードバックを繰り返す点が異なります。
この手法により、手戻りによるコストや作業負荷の軽減が可能になります。
スパイラル型
スパイラル型は、開発工程を機能ごとに分割し、優先度の高い機能から順次開発を進めるモデルです。各機能について要件定義からテストまでの工程を繰り返し、最終的にシステム全体を完成させます。
スパイラル型では、初期段階でシステム全体の設計を厳密に策定しないため、開発途中での仕様変更や機能追加が容易です。
V字型
V字型は、ウォーターフォール型に似ていますが、開発フェーズごとに対応するテストフェーズが存在し、設計・実装と並行してテストを実施する点が特徴です。
このモデルは、テスト工程を重視するため、高い信頼性が求められるシステム(金融、医療、航空分野など)に適しています。
プロトタイプ型
プロトタイプ型は、システムの試作品(プロトタイプ)を作成し、ユーザーからのフィードバックを得ながら開発を進めるモデルです。
このモデルの利点は、開発初期段階で完成イメージを具体化できるため、発注側と開発側の認識のズレを最小限に抑え、本番実装後の修正工数を削減できることです。
SDLCに取り入れたいアプローチ
SDLCの効率化と品質向上のため
「DevOps」や「シフトレフト/シフトライト」などのアプローチが有効です。
DevOpsとは
DevOpsは、開発(Development)と運用(Operations)の間の壁をなくし、両チームが密に連携しながら開発・運用を効率的に進めるアプローチです。
従来、開発チームと運用チームは役割や考え方が異なり、連携が不足しがちでした。しかし、DevOpsを導入することで以下のメリットが得られます。
- ・ ソフトウェアの品質向上
- ・ リリースサイクルの短縮
- ・ 迅速で安定した運用の実現
開発と運用を統合的に管理することで、継続的デリバリー(CI/CD)の実現が可能となります。
シフトレフト/シフトライト とは
シフトレフト(Shift Left)とは、セキュリティ対策やテストを開発の初期段階に組み込む手法です。
SDLCの「左側」、つまり上流工程でテストやセキュリティ対策を行うことで、脆弱性の早期発見・修正が可能となり、手戻りを抑えることができます。
もう一つのシフトライト(Shift Right)は、ソフトウェアのリリース後に、実際の運用状況から得られるデータやユーザーフィードバックを活用し、品質を向上させるアプローチです。
リリース前のセキュリティチェックをすり抜ける脆弱性がある可能性を考慮し、運用環境や本番環境でのテスト・監視を強化することで、継続的な品質改善を図ります。
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まとめ
本記事では「SDLC」について、その概要や対策について解説しました。
本記事のまとめ
- SDLCは、ソフトウェア開発においてセキュリティの強化、進捗の可視化、納期の短縮、コスト削減といった多くのメリットを提供する。これにより、開発チームはプロジェクトを効率的かつ高品質に進められ、最終的には顧客やユーザーに価値を提供することが可能
- SDLCの主要なフェーズは、「企画」「要件定義」「設計」「実装」「テスト」「リリース・デプロイ」「運用・保守」の7段階
- SDLCに取り入れるべきアプローチとしては、「DevOps」や「シフトレフト/シフトライト」などが挙げられる
企業はSDLCを導入することで、セキュリティ強化、進捗の可視化、納期短縮、コスト削減といったメリットを得ることができます。
SDLCには、ウォーターフォール型、アジャイル型、ハイブリッド型など特性の異なる複数のモデルが存在するため、自社のプロジェクトに適したモデルを選択することで、開発プロセスの最適化を図ることができるでしょう。

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