Written by Aimee
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目 次
DeepSeek(ディープシーク)とは、オープンソースの大規模言語モデル(LLM)の開発を手がける、中国発のスタートアップ企業です。
2025年1月には、「Mixture of Experts(MoE)※」というアーキテクチャを採用した、最新AIモデル「DeepSeek-R1」をリリース。その性能はOpenAIの高精度モデル「o1」と同等ながら、APIの利用コストはわずか25分の1以下という圧倒的なコストパフォーマンスを誇り、世界中の企業・開発者から注目されています。
※Mixture of Experts(MoE)…AIモデルのアーキテクチャの一種で、複数の「専門家」モデルを組み合わせて最適な結果を出す仕組み。
ただし、DeepSeekのデータ管理やセキュリティ体制には、情報漏洩やプライバシー保護の観点から多数の懸念事項が指摘されています。実際、2025年1月には大規模なサイバー攻撃を受け、既に国内でも複数の大手企業が、DeepSeekの使用を禁止しています。
この記事では、DeepSeekが注目される背景や同社AIモデルの機能や特徴、セキュリティリスクなどについて解説します。今後、DeepSeekの業務利用を検討される方は、是非ご一読ください。
▼この記事を要約すると
- DeepSeek(ディープシーク)とは、中国のスタートアップ企業のことで、オープンソース設計を採用していたり、従来よりもトレーニングコストを大幅に抑えたAIモデルを提供していたりすることから非常に注目されている
- ただし、DeepSeekのプログラムコードに、中国政府の管理下にあるサーバーへ利用者のデータを転送する機能が組み込まれていると報道され、安全性には懸念も残る
- DeepSeekの特徴に、「Mixture of Experts(MoE)」採用」「低コストで高機能」「オープンソース設計」 のAIモデルであることが挙げられる
DeepSeek(ディープシーク)とは?
DeepSeekは、中国・浙江省の杭州を拠点とする、人工知能(AI)のスタートアップ企業です。2023年の設立以来、オープンソースの大規模言語モデル(LLM)開発を中心に急成長を遂げており、DeepSeek独自のアーキテクチャ(設計)と、低コストで高性能なAIモデルの提供によって、世界的に注目を集めています。
2024年には、新たなAIモデル「DeepSeek-R1」と「DeepSeek-V3」をリリースし、その性能と低コストが話題となりました。特に「DeepSeek-R1」は、OpenAIの最高精度の推論モデル「o1」と同等の性能を持ちながら、価格は90%ほど安価であることが公開され、AI業界に大きな衝撃を与えました。
2025年1月27日にはDeepSeekの発表を受け、米国株式市場では大規模な売りが発生し、特にハイテク株が大きく下落する「DeepSeekショック」と呼ばれる現象が発生。DeepSeekがリリースしたiPhone向けアプリが無料アプリランキングで、ChatGPTを抜き1位を獲得したことも話題となりました。
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DeepSeekが注目される3つの特徴
DeepSeekが世界的に注目を浴びた背景に、OpenAIのChatGPT、AnthropicのClaudeなどと肩を並べる、高度なAIモデル「DeepSeek-R1」の開発があります。
DeepSeek-R1が注目される理由として、主に3つの特徴が挙げられます。
- 1. 「Mixture of Experts(MoE)」を採用した、数理推論やコーディングに特化したAIモデル
- 2. 従来と比べ、トレーニングコストを大幅に抑えた圧倒的なコストパフォーマンス
- 3. オープンソース設計により、カスタマイズや透明性の高いAI開発が可能に
1.「Mixture of Experts(MoE) 」を採用した、数理推論とコーディングに特化したAIモデル
DeepSeek-R1は、数理推論やコーディングに特化したAIモデルとして開発され、GitHub CopilotやCode Llamaと並び、開発者向けのコード補完やデバッグ、最適化ツールとして注目されています。
このモデルの大きな特徴は、「Mixture of Experts(MoE)」という技術を採用していることです。
MoEは、複数の「専門家」モデルを組み合わせ、与えられたタスクごとに最適な専門家が選ばれて処理を行う仕組みです。すべての専門家が常時稼働するわけではなく、必要な部分だけを動作させることで、計算リソースを効率的に活用し高精度な推論を可能にします。
Mixture of Experts(MoE)のアーキテクチャ(設計)の実力は、テスト結果でも証明されました。
例えば、DeepSeek-R1はアメリカの数学オリンピックの予選問題「AIME 2024」で79.8%の正答率を達成し、OpenAI「o1-1217」の 79.2% と同等の成績を記録。これは、DeepSeek-R1のMoEアーキテクチャが、数理推論など高度タスクにて十分な性能を発揮することを示しています。
2.従来と比べ、トレーニングコストを大幅に抑えたAIモデル
DeepSeek-R1は、従来のAIモデルと比較して、非常に低コストでトレーニングや推論を行える点でも注目されています。
例えば、DeepSeek-R1のAPIを利用した場合、100万トークンの入力コストは0.55ドルですが、OpenAIの「o1」は15ドルかかります。また、100万トークンの出力コストもDeepSeek-R1が2.19ドルに対し、o1は60ドルと約30倍の価格差があります。
この圧倒的なコストパフォーマンスにより、企業や開発者は、これまで高額なコストがネックとなっていたAI活用を、はるかに低い負担で実施可能となります。
3.オープンソース設計により、自由にカスタマイズが可能
DeepSeekが注目される背景の一つは、オープンソース設計を採用している点です。オープンソースとは、ソフトウェアや技術のソースコード(プログラムの設計図)を無料で公開し、誰でも利用・変更・再配布を自由に行える仕組みのことです。
DeepSeekは、自社のAIモデルをオープンソースとして公開することで、その内部構造や学習データの透明性を確保し、誰もがその技術的な詳細を確認できるように。よって、企業や研究者は独自のニーズに合わせたAIのカスタマイズが可能となり、特定の業界やアプリケーションに最適化されたAIモデルを開発できます。
また、オープンソースはAIの信頼性向上にも寄与します。ユーザーは自身でモデルの挙動を把握し、適宜修正や最適化を行うことが可能です。

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DeepSeekに懸念されるセキュリティリスク
革新的なAIモデルで注目されるDeepSeekですが、データの取り扱いやセキュリティに関して、複数の懸念が示されています。
1.中国サーバーへのデータ保存と国家情報法の影響
2025年2月6日、日本政府ではデジタル庁より、 DeepSeekの安全性に留意すべき点があるとして、各省庁に「DeepSeek等の生成AIの業務利用に関する注意喚起」が行われました。懸念事項は、同社プライバシーポリシーで公開された、以下の内容です。
出典: デジタル社会推進会議幹事会事務局│DeepSeek 等の生成AIの業務利用に関する注意喚起(事務連絡)(2025年2月6日)
上記②に関して、DeepSeekが取得した個人情報を含むデータには、例えば以下のような法令が適用されることとなります。
- ・ 中華人民共和国個人情報保護法
- ・ サイバーセキュリティ法
- ・ データセキュリティ法
- ・ 中華人民共和国国家情報法 等
出典:個人情報保護委員会│ DeepSeekに関する情報提供(2025年2月3日)
この記述は、同社が収集した個人情報、機密情報へ、法令を理由に中国政府がアクセスできる可能性を示しています。
問題を受け、米国政府や欧州諸国ではDeepSeekの利用を制限する動きが広がっています。
- ・ アメリカ:NASA、国防総省、米海軍など政府機関で、DeepSeekの利用を禁止
- ・ イタリア:国家単位で DeepSeekの利用を禁止
- ・ 韓国:国内アプリストアにて、DeepSeekアプリの提供を一時停止
- ・ 日本(デジタル庁):各省庁に注意喚起を発信
2. ユーザーデータの収集とプライバシーの懸念
DeepSeekの利用規約では、ユーザーの入力情報が「サービスの維持・運用・開発・改善」に利用される旨が記載されています。
出典:DeepSeek│ DeepSeek Terms of Use(2025年1月20日)
問題点は、入力データがAIの学習に自動で利用されることです。ChatGPTなどその他AIサービスでは、ユーザー側がデータの学習利用をオプトアウト(拒否)する機能・権限がありますが、DeepSeekでは現時点で、学習を拒否する機能は実装されていません。
企業・個人が機密情報を入力するとデータが学習に利用され、情報漏洩を招く可能性があります。
3.セキュリティの脆弱性と暗号化の欠如
DeepSeekのモバイルアプリには、ユーザー情報を危険にさらす可能性のある、複数の脆弱性の存在が指摘されています。
●暗号化されていないデータ送信:DeepSeekのiOSアプリでは、App Transport Security(ATS)を無効化しており、暗号化されていないデータ送信がインターネット上で行われている。
●認証情報の不適切な保存:ユーザー名やパスワードなどの情報が暗号化されない状態で保存されており、情報窃取のリスクがある。
DeepSeekが提供するAIサービスは、データの取り扱いやセキュリティの面で、現時点では多くの課題があります。特に企業や組織が導入を検討する際は、コンプライアンスや情報セキュリティの観点から、慎重な判断が必要です。
DeepSeekの主なAIモデルとプラン
DeepSeekは、オープンソースのAIモデルを多数提供しています。
以下は主要なモデルの概要です。
DeepSeek Coder (2023年11月) |
●ソフトウェア開発者向けに設計されたAIモデル ●80を超えるプログラミング言語に対応 ●HumanEval、MBPP、DS-1000などで高いスコアを記録 ●高速なコード補完、複雑なコードのエラー修正、コードの最適化に優れた能力を発揮 |
---|---|
DeepSeek LLM (2023年12月) |
●670億のパラメータで構成される高度な言語モデル ●英語と中国語を中心に2兆トークンという膨大なデータセットでトレーニングされている ●中国語の読解、推論、数学、プログラミングなどに強みを持つ |
DeepSeek-V3 (2024年12月) |
●6710億のパラメータをもつ「Mixture of Experts(MoE)」アーキテクチャを採用した大規模言語モデル ●GPT-4oやClaude 3.5 Sonnetと同等の精度 ●自然言語処理や数理推論・コーディングなどにおいて優れている |
DeepSeek-R1 (2025年1月) |
●「Mixture of Experts(MoE)」アーキテクチャを採用し、DeepSeek-V3をベースに開発されたモデル ●OpenAIの最高精度の推論モデル「o1」と同等の性能をもちながら、価格はOpenAIのo1 API価格の25分の1以下 ●GitHub CopilotやCode Llamaなどと同じく、開発者向けのコード補完やデバッグ、最適化などが行える |
Janus-Pro-7B (2025年1月) |
●70億のパラメータを持つ大規模な言語モデル ●画像生成と文章理解において強みをもつ ●大量のデータを高速で処理でき、より複雑なタスクに対応可能 |
DeepSeekは、大規模言語モデルの開発においてオープンソース戦略を重視しており、多くのモデルを無料で公開しています。しかし、特定の高度な機能やモデルについては、APIを通じて提供されており、利用には料金が発生する場合があります。
各モデルの価格帯は、下記のDeepSeek公式サイトにて公開されています。定期的に公式サイトより、最新の情報と価格をチェックすることをおすすめします。
出典:DeepSeek│Models & Pricing
DeepSeekの4つの利用方法
DeepSeekのAIモデルを利用する方法としては、主に以下の4つがあります。
- ・ Web版(ブラウザから直接利用)
- ・ アプリ版(iOS・Android向け)
- ・ API版(開発者向けインターフェース)
- ・ Azure版(Microsoft Azure経由での利用)
Web版
Web版は、インターネットブラウザを通じて利用できるので、特別なアプリをインストールする必要がありません。公式サイトにアクセスし、Googleアカウントでサインインするか、メールアドレス・パスワードを登録することで、すぐに利用できます。
スマートフォンやタブレットでも手軽にアクセスできるのが特徴です。
アプリ版
アプリ版は、iOSやAndroid向けに提供されており、スマートフォンやタブレットでDeepSeekを利用できます。インストール後はWeb版と同様、Googleアカウントまたはメールアドレスでログイン可能です。
モバイルに最適化されたUIを備えており、外出先でも快適にAI機能を活用できます。
API版
API版は、開発者向けに提供されているインターフェースで、ソフトウェアやアプリにDeepSeekを統合し、機能を組み込むことが可能です。利用する場合、公式サイトにアクセスし、ログイン(もしくはアカウント作成)してから、APIキーを取得する必要があります。
APIキー取得手順
1.公式サイトにログインし、ダッシュボードの「APIセクション」に移動
2.「APIキーの作成」ボタンをクリック
3.取得したAPIキーをPythonやNode.jsなどの環境で設定
API版を活用すれば、DeepSeekのAIを業務システムやアプリに統合し、より柔軟な活用が可能になります。
Azure版
Azure版は、Microsoft Azure上でDeepSeekのAIサービスを利用できるオプションです。Azureのインフラを活用することで、大規模なデータ処理や高度なAIモデル運用が可能です。
Azure版の利用手順
1.Azureアカウントを作成し、「Azure AI Foundry」へアクセス
2.Azure AI Foundryのモデルカタログから「DeepSeek R1」を選択し、Check out modelをクリック
3.「デプロイ」をクリックし、APIキーを取得する
APIキーを取得後、プレイグラウンドでテストが可能です。
企業の安全なDeepSeek導入について
DeepSeekの安全性には多数の課題があり、企業が導入を検討する場合、データ管理やセキュリティのリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。
例えば、DeepSeekを業務で活用する場合、開発部門や財務部門、人事部門などの機密情報を扱う部署では使用を禁止するなど利用制限を明確にし、機密情報が含まれる業務では使用しないようにルールを定めることが重要です。
また、社内ガイドラインの作成、利用履歴の監査、承認フローの導入などを行い、安全な運用の徹底が求められます。
LANSCOPE エンドポイントマネージャー クラウド版を
活用した対策
ここからは、LANSCOPE エンドポイントマネージャー クラウド版(以下LANSCOPE エンドポイントマネージャー)を利用した対策についてご紹介します。
LANSCOPE エンドポイントマネージャー クラウド版を活用することで、利用状況の把握や利用そのものを禁止することが可能です。
Windows・macOSの場合
利用状況の把握は操作ログを活用します。LANSCOPE エンドポイントマネージャーのログ検索画面より、DeepSeekのURLを検索キーワードに設定し、検索をかけます。利用者がいる場合は、対象のログが表示されるので、利用者へ注意喚起を呼びかけましょう。
※LANSCOPE エンドポイントマネージャー ログ検索画面。標準機能で過去2年分まで遡って検索が可能。
また指定したWebサイトを閲覧した場合にアラートとする、または閲覧の禁止設定が可能です。指定したWebサイトを閲覧した場合、PC上にポップアップの警告表示を出すこともできるため、社内への注意喚起に活用できます。
※LANSCOPE エンドポイントマネージャー Webアクセスログのアラート/禁止設定
iOS・Androidの場合
DeepSeekはApp Store、Google Playにアプリが公開されています。そのため、まずは業務用のiOS・Androidデバイスにアプリがインストールされていないか確認しましょう。エンドポイントマネージャーの管理コンソールより、アプリ名で検索をかけることで、対象のアプリがどのデバイスにインストールされているかを簡単に把握できます。
※インストールアプリ確認画面(上記はMicrosoft OutlookがインストールされているiOSデバイスの一覧の例)。 対象のアプリを指定すると、画面左手にインストールしているデバイスの情報を一目で把握できる。
対象のアプリをインストールしているデバイスを確認したら、アンインストールを呼びかけます。
また手動でのアンインストールの他、LANSCOPE エンドポイントマネージャーからアプリを遠隔アンインストールすることも可能です(対象アプリをデバイスに遠隔インストール後、遠隔アンインストールを行います。手動でインストールされた当該アプリを、LANSCOPE エンドポイントマネージャーから上書きインストールすることで「Managed Apps」化し、管理対象とすることで、遠隔アンインストールを実現します)。
尚、Apple Business ManagerやAndroid Enterpriseを利用することで、許可されたアプリのみ利用を禁止するなど、より高度なデバイス管理が可能です。詳細は、下記記事もご覧ください。
まとめ
本記事では「DeepSeek」をテーマに、注目される背景や、提供しているAIモデルの特徴などを解説しました。
本記事のまとめ
- DeepSeek(ディープシーク)とは、中国のスタートアップ企業のことで、オープンソース設計を採用していたり、従来よりもトレーニングコストを大幅に抑えたAIモデルを提供していたりすることから非常に注目されている
- ただし、DeepSeekのプログラムコードに、中国政府の管理下にあるサーバーへ利用者のデータを転送する機能が組み込まれていると報道され、安全性には懸念も残る
- DeepSeekの特徴に、「Mixture of Experts(MoE)」採用」「低コストで高機能」「オープンソース設計」のAIモデルであることが挙げられる
DeepSeekがリリースするAIモデルは、安価で高性能というメリットがある一方で、安全性には懸念も残ります。企業ではこうしたリスクを正確に理解したうえで、安全性の高いAIツールの選定と従業員への教育・運用ルールの整備などを徹底することが不可欠です。「生成AI導入に役立つガイドライン」や「ログを活用した情報漏洩対策」などに関する、以下の資料も是非ご活用ください。
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