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生体認証とは?種類や仕組み、導入のメリット・デメリットを解説

Written by WizLANSCOPE編集部

生体認証とは?種類や仕組み、導入のメリット・デメリットを解説


生体認証とは、指紋や顔、虹彩など、その人固有の身体的特徴を用いて本人確認を行う認証方式のことです。

認証で用いられる生体情報は、他人による偽造や不正取得が難しいことから、従来の「IDとパスワード」による認証方式と比べて、セキュリティレベルが高いとされています。

近年では、フィッシング詐欺などによりID・パスワードが盗まれる被害が増加しており、こうした背景から、安全性の高い認証方式として生体認証への関心が高まっています。

本記事では、生体認証の種類やメリット、導入時のポイントなどを解説します。

▼本記事でわかること

  • 生体認証の概要
  • 生体認証の種類
  • 生体認証のメリット・デメリット
  • 生体認証を導入する際のポイント

生体認証の導入を検討されている方はぜひご一読ください。

生体認証とは


生体認証(バイオメトリクス認証)とは、指紋・顔・声・虹彩・静脈など、その人固有の身体的特徴や、歩き方といった行動的特徴を使って本人確認を行う認証方式のことです。

具体例としては、iPhoneのFace IDやノートPCの指紋認証ログインなどが挙げられます。

生体認証で用いられる生体情報は、他人による偽造や不正取得が極めて難しいことから、従来の「IDとパスワード」による認証よりもセキュリティレベルが高い認証方式といえます。

また、ユーザーは複雑なパスワードを記憶・管理する必要がなく、さらにデバイスに顔を向ける・指を置くといった簡単な動作で認証が行えるため、利便性の面でも評価されています。

生体認証の仕組み

生体認証は、一般的に以下のような流れで行われます。

  1. 特殊な装置を用いて、身体的特徴を読み取る
  2. 読み取った情報を、テンプレートと呼ばれるデータに変換する
  3. 事前に登録したテンプレートと、認証時に作成されたテンプレートを照合し、合致すれば認証される

まず、ユーザーは、指紋や顔の特徴といった身体的特徴(生体情報)の事前登録を行います。

このとき、デバイスやシステムは身体的特徴そのものを「画像のまま保存」するのではなく、数値化・パターン化した不可逆のデータ(テンプレート)として保存します。

この仕組みにより、万が一テンプレート情報が漏洩したとしても、元の顔画像や指紋をそのまま復元することができないようになっており、プライパシーや安全性への配慮がなされています。

そして認証時には、新たに作成されたテンプレートと事前に登録されたテンプレートを照合し、一致するかどうかを判断します。

この際、完全に一致するかどうかではなく、「どれだけ特徴が似ているか」をスコアとして評価し、あらかじめ定められた基準を超えた場合に「本人である」と判定します。

こうすることで、眼鏡やマスクによる多少の見た目の変化、指の乾燥や湿度の違いといった状況による誤差にも柔軟に対応することが可能です。

生体認証の種類


生体認証には、以下のようにさまざまな種類が存在します。

種類 識別する要素 特徴
顔認証 顔の輪郭や、目鼻口などの顔のパーツの配置 ・非接触で利用でき、利便性が高い
・マスクや照明など環境の影響を受けやすい
指紋認証 指紋の模様、指の形状など ・低コストで導入しやすい
・指のけがや乾燥などにより、精度が低下する場合がある
静脈認証 静脈の模様(静脈パターン ・個人差が大きく、認証精度が非常に高い
・専用機器が必要で導入コストが高い
虹彩認証 虹彩の模様 ・個人差が大きく、認証精度が非常に高い
・専用装置が必要で導入コストが高い
声紋認証 声の高さ、音の響き、周波数、発声の癖など ・ハンズフリーで認証可能
・周囲の環境や体調の変化により精度が影響を受ける
行動認証 筆跡、キーボード操作、歩行などの行動パターン ・ログイン後も継続的に不正検知ができる
・精度を安定させるために一定のデータ収集が必要
DNA認証 DNA配列 ・識別精度が極めて高い
・採取の負担やコストが大きく、一般利用は困難
耳介認証 耳の形状や凹凸 ・耳の形状は個人差が大きく、加齢による変化が少ない
・一般的な導入事例が少なく、認知度が低い

それぞれの認証方式について、より詳細を解説します。

顔認証

顔認証は、顔の輪郭や目・鼻・口といった顔のパーツの配置をカメラで読み取り、その特徴に基づいて個人を特定する認証方式です。

近年では、AIによる3D解析が一般化し、従来問題されていた写真によるなりすましに対しても、より高い耐性を持つようになっています。

この技術は、空港の自動ゲートやスマートフォンの生体認証機能(Face IDなど)、ビルの入館管理システムなど、さまざまな場面で利用されています。

非接触でスムーズに認証できることから、感染症対策の観点でも注目を集めました。

一方で、マスクや帽子の着用、逆光などの撮影環境によって認証精度が低下する場合があり、運用時には環境調整やアルゴリズムの工夫が求められます。

指紋認証

指紋認証とは、指紋の模様や指の形状などを読み取り、その特徴に基づいて個人を特定する認証方式です。

指紋を読み取る機械は小型で比較的安価であることから、生体認証の中でも導入しやすいというメリットがあります。

一方で、指の乾燥・怪我・汚れなどによって読み取り精度が落ちることが課題です。

静脈認証

静脈認証とは、静脈の模様(静脈パターン)を赤外線センサーで読み取り、その特徴に基づいて個人を特定する認証方式です。

静脈は体の内部にあるため、外傷や経年変化の影響を受けにくい傾向にあります。

さらに、偽造が極めて困難であることから、特に金融機関のATMや企業・研究施設など、強固なセキュリティが求められる環境で多く採用されています。

セキュリティレベルが高い反面、専用機器が必要なため、導入コストが高い課題があります。

虹彩認証

虹彩とは、瞳孔の周りの色がついている部分を指します。

虹彩認証は、この虹彩に存在する細かな模様を読み取り、その特徴に基づいて個人を特定する認証方式です。

虹彩のパターンは一人ひとり異なり、加齢による変化も少なく、偽造が極めて困難であることから、生体認証の中でも特に高い認証精度を誇ります。

誤認率も非常に低く、高度な本人確認が可能なため、軍事施設や金融機関、国境管理などの特に高いセキュリティが求められる分野で活用されています。

ただし、専用の撮影装置が必要となるため導入コストが高く、安定した認証を行うためには、適切な照明環境などを整える必要があります。

声紋認証

声紋認証は、声の高さや音の響き、周波数、発声の癖などの声の音響特性(声紋)に基づいて個人を特定する認証方式です。

「手が使えない状況や遠隔環境でも利用できる」「マイクと認証用ソフトがあれば導入できる」といったメリットがあります。

ただし、風邪や老化などによる声の変化や周囲の音の影響を受けやすいというデメリットもあります。

行動認証

行動認証とは、指紋や顔といった身体的特徴ではなく、人の行動パターンに基づいて個人を特定する認証方式です。

この方式では、利用者が無意識のうちに示す行動の特徴を分析します。

代表的な例としては、次のようなものが挙げられます。

  • キーワード入力時のタイピングのリズムや強さ
  • 文字を書く際の筆跡
  • 歩行時の歩き方(歩容)
  • スマートフォンの持ち方や操作時の傾き

行動認証では、これらの複数の特徴を組み合わせて総合的に評価し、本人かどうかを判断します。

個人の習慣や癖を完璧に真似することは非常に難しいため、不正利用の検知に強いという特徴があります。

一方で、人の行動は環境の変化や体調、心理状態などの影響を受けやすく、状況によっては認証精度が低下する可能性がある点が課題とされています。

DNA認証

DNA認証とは、血液・毛髪・唾液などから採取した遺伝情報(DNA塩基配列)に基づいて個人を特定する認証方式です。

理論上、最も高い識別精度を持つ生体認証です。

ただし、取得・解析に時間とコストがかかり、本人同意やプライバシー保護の観点から、一般的な認証用途にはほとんど利用されません。

主に法科学(犯罪捜査)・親子鑑定・医療研究などで使用されています。

耳介認証

耳介認証とは、耳の輪郭や凹凸パターン、耳の穴の位置などの耳の形状をカメラで読み取り、その特徴量を照合することで個人を特定する認証方式です。

耳は人によって形が大きく異なり、加齢による形状変化も比較的少ないことから、実は生体認証に適した部位の一つとされています。

近年では、スマートフォンの顔認証と組み合わせて認証精度を高める研究も進められていますが、現時点では実用化や普及の途上にあり、一般的な認知度はまだ低い認証方式です。

生体認証のメリット


生体認証には、以下のようなメリットがあります。

  • 安全性が高い
  • 利便性が高い
  • 管理者負担が軽減される
  • 紛失・偽造のリスクが低減される

詳しく確認していきましょう。

安全性が高い

従来のID・パスワードのみによる認証方式は、「盗まれる・推測される・使い回される」といったリスクが存在しました。

これに対し生体認証では、指紋や顔、静脈、虹彩など、人間固有の身体的特徴を用いて本人確認を行うため、このような他人による不正取得リスクを大幅に低減できるとされています。

特に、静脈認証や虹彩認証のように身体の内部構造を利用する方式は、偽造そのものが極めて困難であり、高度なセキュリティが求められる業界における標準的な認証方式として採用が進んでいます。

フィッシング詐欺や不正ログインの被害が急増している近年において、生体認証は数ある認証方式の中で、特に強固な認証方式の一つと位置づけられています。

利便性が高い

生体認証は、ユーザーがパスワードを記憶・管理する必要がないため、ストレスなく利用できるメリットがあります。

例えば、スマートフォンの指紋認証やFace IDのように、タッチするだけ、顔を向けるだけといった直感的な操作で認証が完了します。

「強固なセキュリティ」と「使いやすさ」は通常トレードオフの関係にありますが、生体認証はこれらを両立することが可能です。

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管理者負担が軽減される

ID・パスワードによる認証方式の場合、管理者が従業員ごとの認証情報を管理する必要性があります。

加えて、パスワードを忘れた際の問い合わせ対応や、定期的なパスワード変更ルールの運用などが発生しやすく、従業員数が多いほど、管理者の負担は増大します。

これに対し生体認証であれば、指紋や顔などの身体情報を利用して本人確認を行うため、管理者が個別の認証情報を管理する必要がほとんどなくなります。

そのため、従業員数が多い企業ほど、生体認証を導入することで得られる効果は大きいことが想定されます。

さらに、入退室管理や勤怠管理といった場面においても、ICカードの紛失や貸し借りといった問題を防ぐことができ、不正利用の抑止や企業のコンプライアンス強化にもつながります。

紛失・偽造のリスクが低減される

パスワードやICカード、セキュリティトークンといった従来の認証方式では、紛失や盗難、貸し借り、偽造などのリスクが残ります。

これに対し生体認証では、「本人そのものが認証の鍵」となるため、認証情報を紛失するリスクは極めて低いとされています。

さらに、身体情報は一人ひとり異なるため、他人が容易に複製・転用することが困難です。

そのため、なりすましや不正利用に対する耐性が高い認証方式であるといえます。

生体認証のデメリット


生体認証には多くのメリットがある一方で、導入・運用に当たっては、注意すべきデメリットも存在します。

企業・組織で導入する際には、これらのデメリット・注意点を正しく理解した上で、適切な運用体制を整備する必要があります。

詳しく確認していきましょう。

身体的変化によって精度が落ちる

生体認証は、人が持つ身体的特徴を利用するため、老化や外傷などによる身体の状態変化によって認証精度が低下する可能性があります。

「いつでも」「どんな状態でも」完璧に認証できるというわけではないのため、利用する際は複数の生体情報を登録しておいたり、別の認証方法と組み合わせたりすることが推奨されます。

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再登録が難しい

パスワード認証では、パスワードを忘れたり漏洩したりした場合でも、比較的すぐに変更や再設定を行うことができますが、生体情報の場合は、認証情報の再登録に時間や制約が生じる傾向があります。

指紋認証や静脈認証の場合は、別の指や反対の手のデータを新たに登録することで対応できる場合もあります。

しかし、顔認証では使用できる生体情報が限定されているため、一度登録した顔情報が漏洩した場合、パスワードのように簡単に変更することは困難です。

このため、生体認証を導入する際には、認証情報の管理方法や漏洩時の代替手段をあらかじめ検討しておくことが重要です。

生体情報は厳格に管理する必要がある

指紋や顔データ、静脈・虹彩といった生体情報は、個人の身体的アイデンティティそのものであり、万が一漏洩した場合には、深刻なプライバシー侵害につながる恐れがあります。

そのため企業で生体認証を導入する際には、以下のような厳格な管理体制を整備することが求められます。

  • 生体データを暗号化し、他の個人情報と分離して保存する
  • 画像などの生データのまま保存せず、特徴量だけを保持する設計にする
  • データが外部流出を防ぐために、認証システムのネットワークを分離・制御する
  • 利用目的を明確化し、必要最小限の生体情報のみを収集する
  • 改正個人情報保護法などに基づき、適切な取得・保管・破棄ルールを適切に運用する

さらに、生体データを扱う場合は、ユーザーから明確な同意を得ることが必要で、導入企業側はプライバシー保護や情報漏洩時の対応を含めて、コンプライアンスおよび法的責任も負うこととなります。

生体認証を導入する際のポイント


最後に、企業・組織において生体認証を導入する際に注視すべきポイントを4つ解説します。

  • 制度の高いものを選ぶ
  • ほかの認証方式と併用する
  • 複数のデータを登録しておく
  • 連携幅が広いものを選ぶ

セキュリティ強化と利便性向上を両立させるためにも、これらのポイントをあらかじめ確認し、自社に適した生体認証システムのスムーズな導入・運用を目指しましょう。

精度の高いものを選ぶ

生体認証は、方式の種類によって認証精度や安定性が大きく異なります。

例えば、指紋認証はコストが低く扱いやすい一方で、手荒れや温度変化などの影響により、読み取りが不安定になることがあります。

一方、虹彩認証や静脈認証は非常に精度が高く、偽造も困難ですが、専用機器の導入が必要となります。

このような特性の違いを踏まえ、適切な認証方式を選択するためにも、事前に利用目的や運用条件を明確にしておくことが重要です。

具体的にあ、以下のような項目を検討する必要があります。

  • どの程度の認証速度が求められるか
  • 屋外・工場・医療施設など、どのような環境で利用するか
  • 認証の失敗率(FRR)や誤認率(FAR)をどこまで許容できるか
  • 運用人数・ユースケースに最適な方式は何か

特に、勤怠管理や入退室管理、アプリケーションログインなど、用途が多岐にわたる場合には、実際の利用環境で試験導入(PoC)を行い、精度や運用面の課題を事前に検証することが欠かせません。

ほかの認証方式と併用する

前述の通り、生体認証は身体的な変化によって精度が落ちる可能性もあるため、別の認証方式と組み合わせることが推奨されます。

例えば、業務用スマホのロックを解除する際、顔認証や指紋認証だけでなく、パスワードでも解除できるような設定にしておくことで、認証に失敗してデータにアクセスできないといったリスクを最小化することができます。

複数のデータを登録しておく

認証の安定性を高めるためには、複数の生体情報を登録しておくことが重要です。

例えば、顔認証では「マスクのあり・なし」や「メガネのあり・なし」など、異なる状態の顔写真を複数登録することが推奨されます。

また、指紋認証の場合には、複数の指や反対の手の指のデータも登録しておくことで、認証失敗のリスクを低減できます。

このように複数登録を行うことで、利用環境の変化や身体的な状態の変化、さらにはデバイス側の読み取り精度のばらつきにも対応しやすくなります。

特に企業利用の場合は、認証失敗による業務停滞を防ぐ観点からも、複数の生体情報を登録する運用は必須といえる対策です。

連携幅が広いものを選ぶ

生体認証を導入する際は、認証精度だけでなく「どのサービスやシステムと連携しやすいか」という点も重要な判断基準となります。

企業における主な連携先の例としては、以下が挙げられます。

  • 入退室管理システム
  • 勤怠システム
  • SaaSや各種クラウドサービス
  • SAML、OIDC、OAuthなどの標準的な認証プロトコル
  • iPhone、Android、PCといった各種デバイス

連携性が高い生体認証サービスを選択することで、導入後の運用がスムーズになり、将来的なシステム拡張や新サービスの追加にも柔軟に対応できるという大きなメリットがあります。

そのため企業には、生体認証システム単体の性能だけでなく、周辺サービスやシステムとの連携性を含めた「エコシステムとしての相性」を重視した選定が求められます。

まとめ

本記事では「生体認証」をテーマに、種類やメリット、導入時のポイントなどを解説しました。

本記事のまとめ

  • 生体認証とは、指紋や顔などの身体的特徴や、歩き方といった行動的特徴を用いて本人確認を行う認証方式
  • 生体認証では、装置で読み取った生体情報をテンプレートと呼ばれるデータに変換し、事前に登録したテンプレートと認証時に作成されたテンプレートを照合することで認証する仕組み
  • 企業で生体認証を導入する際には、認証システム単体の性能の高さはもちろん、周辺サービスやシステムとの連携性を重視することで、導入後の運用をより円滑に進めることができる

生体認証を導入することで、セキュリティ強化と利便性向上の両立を目指すことができます。

一方で、「身体的変化によって精度が落ちる」「仮に生体情報が漏洩した場合に再登録が難しい」といった課題も存在します。

そのため、導入を検討する際には、複数の認証方式との併用や、複数データの登録など、適切な運用体制をあらかじめ整備することが重要です。