イベントレポート

マイクロソフトが語る、テレワークの実践方法とは?

マイクロソフトが語る、テレワークの実践方法とは?

DAY1では日本マイクロソフトのエグゼクティブアドバイザー 小柳津 篤氏は、マイクロソフトが考えるテレワークや働き方改革の本質について語っていただいた。

働き方改革やテレワークを目指したわけではない

マイクロソフトは、テレワーク・働き方改革の推進企業として様々なメディアで取り上げられている。小柳津氏ははじめに、講演タイトルに“テレワークの実践方法”とあるが実際は少し違うと説明した。「我々はテレワークの推進を目的にしてきたわけではない。そもそも働き方改革をやってきたわけではなく、業務変革をやってきた」(小柳津氏)

マイクロソフトはビジネスモデルの変遷を繰り返していく中で、仕事が高度化・多様化していくにも関わらず、基本的に社員を増やさず、生産性と組織力を高めることに取り組んできたという。「我々は毎日いつでもどこでも誰とでも意見交換も情報共有も意思決定もチャットもオンライン会議もしている。この改革を働き方改革やテレワークを推進してきたかのように解釈されるがそうではない。我々は生産性と組織力をどう上げるかを考え、様々な試行錯誤と失敗を繰り返した結果、いつでも、どこでも、誰とでもつながることができる状態となった」(小柳津氏)

また、このような状態を目的と捉えるのではなく、単なる現象として捉えて欲しいと補足をした。目的は生産性と組織力を上げることである点を小柳津氏は強調した。

生産性と組織力の向上を目指して歩んできた道のりとは?

図1

多くの企業は基本的には出社をして、対面で仕事をするという図1の左側のような一般的な働き方改革のアプローチだった。マイクロソフトもこの状態に長くチャレンジしてきたという。テクノロジー的にも社会環境的にもいきなり右側のような、全員が毎日いつでも、どこでも、誰とでもつながる状態になるのは無理だったと小柳津氏は説明する。

2007年当時に図1の右側の状態を目指して、制度、ポリシー、手続き、ICTなどの環境整備をしたが結果的に上手くいかなかったという。「社員の価値観が変わっていなかった。基本出社するという考え方が当たり前で、制度を作っても、その制度を利用しづらい雰囲気だった。しかし、ようやく制度を利用しやすい雰囲気が整った結果、働き方改革がすべて上手くいくようになった」(小柳津氏)

マイクロソフトは組織戦略論の中で生産性と組織力を向上するという目的のもと、様々な制度作りと雰囲気作りを行った。その結果、女性の働き方やテレワークなどの働き方改革がすべて上手くいくようになった。働き方改革の推進企業として注目を集めているが働き方改革が目的ではなく「生産性と組織力を高めることを目的とした結果である」と小柳津氏はいう。

図2

では、なぜ生産性と組織力を高めることを考えると、いつでも、どこでも、誰とでも繋がる状態を実現できるのか。

小柳津氏は、前提として仕事の進め方は、図2の左側のような手続き型・プロセス型の進め方と、右側のようなプロジェクト型、ネットワーク型の進め方の両方があると説明した。

お客様の要求が高まり、物事が複雑になり、社員は増えず、勤務時間も削減しないといけないという状況の中、マイクロソフトは右側のプロジェクト型・ネットワーク型の進め方で課題を乗り越えていくことを選択したという。

プロジェクト型・ネットワーク型の仕事のやり方に、どのようにして移行することができたのだろうか?そこには大きなポイントがあるという。「まずは手続きやプロセス・段取りなどあらかじめ予見できて設計できる仕事を減らさないといけない。我々がものすごく大変な思いで、その仕事を減らした話はあまり記事にならないが、これがとても重要」だと小柳津氏はいう。

マイクロソフトは大きく3つの方法で仕事を減らしているという。

・無くせる仕事を本当に減らす
 実は手続きやプロセスなど無くせる手続き・プロセスは多く、整理整頓、断捨離を徹底する。

・人に任せる
無くせない仕事は業務委託やビジネスプロセスアウトソーシングなど、業務を部門単位、プロセス単位でパートナーに預ける。

・機械にやってもらう
AI、RPAなどを活用し、新しい技術に置き換える。

「一貫して重要なことは、決められる仕事は社員の手を煩わせないこと」だという。その上で、より難しく付加価値が高いことを一人ではなくみんなでコラボレーションして対処していくことをマイクロソフトは目指した。

そしてその状態がどうすれば効率的に継続できるかを考えた結果、いつでも、どこでも、誰とでもコラボレーションできるようになり、結果として働き方改革につながったと小柳津氏は説明した。

「いつでも、どこでも、誰とでもつながる」を実現する3つのポイント

マイクロソフトが実現した働き方改革について、マイクロソフトだから出来たんじゃないか?と思われる方もいるかもしれないが、実はまったくそんなことはないと小柳津氏は言う。2009年当時の職場はまったく今と真逆で紙中心に仕事を回していたため、いつでも、どこでも仕事ができる環境がなかったという。

しかし、現在のマイクロソフトは大きく変わった。「そもそも紙がなく、今は人もほとんどいない。いつでもどこでも誰とでもオフィスの中でもいろんな人達と語りあう。オフィスは決まった席では無くフリーシートとなっているし、もちろん自宅やカフェなどで仕事している人とも語り合うことも可能だ」(小柳津氏)

では、このような働き方を実現するためには何が必要なのか?小柳津氏は次の3つが重要だと語っている。

・業務の標準化・電子化
仕事をそのまま右から左に電子化するのではなく、その対象となる仕自体を断捨離、アウトソース、AIに置き換えることでそもそも電子化する作業を減らす。その上で残った仕事を電子化する。

・便利で安心安全な環境整備
利便性と安全性はトレードオフではなく、両方実現することが重要なポイント。ICTを上手く使うと、この2つを効率良く提供することができる。ICTでしっかりと補償しながら、雇用管理や労務管理や評価制度なども含めて成熟させる。

・変えるのは意識ではなく行動
業務の電子化や、環境整備だけではまだ変わらない。では、意識改革が必要なのかというとこれは間違いであり、意識改革ではなく行動変容が先である。

図3

3つ目のポイントとしてあげた意識改革ではなく行動変容が先だと気付いた理由には、東日本大震災の出来事があったという。交通機関も電話も止まったがインターネットは動いていた。「社長から会社に来ないでください。自分と家族の安全を確認した上で仕事を再開してくださいと言われ、やってみたら何も困らなかった。それだけでなく1週間もすれば、社員からは『ぜひ続けたい』という声が多くあがった」(小柳津氏)

どれだけ説得・説明しても変わらなかったのに、自分が行動し経験したことで変わることができた経験から、これこそが意識改革だと気付いた。「それ以降、社内の意識改革は体験型にしている。時には強制的に体験を促している」(小柳津氏)

最後に小柳津氏は改めてマイクロソフトの取り組みについて次のように語り講演を締めくくった。「我々のビジネスモデルが変わり、しかし社員は増えず、残業時間も削減しなければならず、仕事がより高度化していく中で、手続き型作業を最小にしながらコラボレーションの時間を増やした。
マイクロソフトは働き方改革やテレワークを目指したのではなく、コラボレーションの時間を増やす活動をその時々の社会情勢や技術の中で方法論として増やした結果、いつでもどこでも誰とでもつながるできる現象として認められるようになっただけなのだ」(小柳津氏)