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コロナ禍で変化するワークスタイルと 加速するデジタル化。DeNA情シスが目指すビジョンはMake Creative!

コロナ禍で変化するワークスタイルと 加速するデジタル化。DeNA情シスが目指すビジョンはMake Creative!

DAYS2では、株式会社ディー・エヌ・エーのIT戦略部 大脇 智洋氏は、DeNA情シスが行っている新しいワークスタイルへの対応と生産性向上のための取り組みについて講演を行った。

情シスが目指す姿は”MAKE CREATIVE”

まず、大脇氏はDeNAにおけるIT戦略部のビジョンとして、「DeNAで働く人が新しい価値を作り出すクリエイティブな活動に集中できるように環境を提供する」ことを意味する「MAKE CREATIVE」を紹介した。
変化の絶えないインターネットサービス業であるDeNAにおいて、クリエイティブな活動を重視しているという。

リモートワーク急増により発生した課題

2020年2月以降コロナ対応でフルリモートが可能になったDeNAでは、リモートワーク急増により以下の課題が発生し、対応を行った。

①非正社員のPC持ち出し・VPN利用者急増
②派遣社員へリモートワーク適用
③VPNキャパ不足への対応
④モニタ・デスクトップPCの持ち帰り
⑤検証用スマホ端末のVPN利用
⑥入社者PC対応
⑦VPN通信速度低下問題

たとえば、「①非正社員のPC持ち出し・VPN利用者急増」と「②派遣社員へリモートワーク適用」の課題については、非正社員も派遣社員もリモートワークができるようにこれまでのルールを改定した。
また、「⑦VPN通信速度低下問題」という課題への対応については詳細を次に記載する。

図1

全社員がリモートワークになったことで、VPN品質低下のトラブルが発生した。
そこで以前は図1の左側のようにすべての通信が社内LANを経由する「フルトンネル方式」を採用していたが、図1の右側の特定トラフィックは自社内LANを経由しない「逆スプリットトンネリング方式」に変更する必要があった。
この変更を行うにはPC側で通信経路を変更する設定が求められる。
ユーザー側にて設定ファイル更新を行うとかなりの負荷がかかる作業であったが、LanScope Catの配布機能を用いたことで、
約2200台のWindows10 PCの設定変更を効率的に行えたという(図2)。

図2

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新しいワークスタイルに合わせ「出社しなければできないこと」を減らす

働く環境がオフィスから自宅へと変化した中で、DeNAではペーパーレス化にも取り組み、3つの例を挙げた。
まず、契約書は、電子署名のツールを導入した。次に、請求書の支払処理は電子受領の場合、紙での提出は不要というルールに改定する予定だ。
そして、経費精算の領収書は、コーポレートカード利用時には、提出不要というルール改定を検討しているという。

「出社しなければいけないことを極力減らしていくこと。また、ツール導入とセットでプロセス・ルールを改定して、紙の業務を徹底的になくすことが必要。」と大脇氏は話している。

DeNAのRPA活用2つの特徴

社員のクリエイティブな活動時間を増やすための取り組みとして、DeNAではRPA活用を行っている。「DeNAでのRPA活用には2つの特徴がある」
1つめは、外注を使わずにすべて社内リソースで導入していること。これはRPAだけでなく通常の社内システムの開発も同様だ。
2つめは、複数のRPAを使っていることである。
DeNAでは主に、ロボットを管理するエンタープライズ向けの“blueprism”、
クラウドでエンドユーザー向けに提供する“RoboticCrowd” 、
そしてDeNAがサービス提供しているクラウド型RPAの”Coopel”を利用している。
エンタープライズ向けRPA導入時には、「システム開発グループ」の開発エンジニアに加え、要件定義や業務改善を得意とする「業務改革推進グループ」のメンバーでプロジェクトを進めた。

この背景として「業務に精通したメンバーが、現状の課題や非効率なプロセスを改善し、あるべき業務フローを定義した上でRPA化することが重要」(大脇氏)と語ってくれた。

図3

DeNAはもともと事務作業が大量にあるわけではない。また、業務内容も変化するので、RPA化に平均で1,2か月かかるエンタープライズ型RPAはスピード不足だった。そこで、エンタープライズ型だけではなく、EUC型のRPAを併用している。EUCとは、End User Computingの略で、ユーザー部門が中心となって業務効率化のためのアプリケーションを作成することだ。つまり、ロボット開発をエンドユーザーにしてもらうことで、よりクイックに多くの業務の自動化を図ることにしたのだ。

RPAとiPaaSの使い分け

iPaaSとは異なるアプリケーション同士をつなげ、システム連携やデータ統合するためのクラウドサービスのことである。
RPAとiPaaSはどちらもノーコードという点は共通だ。しかしRPAはUIを操作して自動化する?のに対して、iPaaSはAPIを?使用して自動化する。
アプリケーションがAPIを公開しているのであれば、iPaaSの方がおすすめだと大脇氏は話している。UIは頻繁に変わり動かなくなることが多い一方、APIはUIほど変わらないため、長く利用できるためだ。?

図4

複数のRPAとiPaaSを活用して、DeNAのマニュアル作業の自動化を行っているが、自動化戦略は上記の通りだ。
定型業務はIT戦略部やユーザー自身でそれぞれ適した技術を活用して業務効率化をはかり、空いた時間でクリエイティブな業務に集中してもらうというものだ。

DeNAは「EUC+ゆるい統制」

最後に大脇氏は、キーワードはEUCだと話している。
EUCにより非エンジニアのユーザー部門が業務効率化のための機能を作成できるようにすることで、スピード感をもって業務効率化を行ってきた。しかし、ユーザー側で自由に作成をするとIT部門の統制が及ばず、ブラックボックス化して思わぬトラブルを引き起こす可能性もある。
そこで、「EUC+ゆるい統制」を大脇氏は提唱している。
「管理者が把握できるような状態を確保すること」「部門やチームなど権限管理ができること」などユーザー側で開発をする場合でもシナリオやレシピの見える化ができるように、ゆるい統制は作るべきだと話している。
新しいワークスタイルに合わせたペーパーレス化や、RPAやiPaaSを活用した業務効率化といった様々な取り組みの原動力は「MAKE CREATIVE」というDeNA情シスが目指すビジョンが支えている。