IT資産管理

事業継続の観点から関心が高まる「テレワーク」
感染症対策を機に導入は進むか?

Written by 阿部 欽一

キットフックの屋号で活動するフリーライター。社内報編集、Webコンテンツ制作会社等を経て2008年より現職。情報セキュリティをテーマにした企業のオウンドメディア編集、制作等を担当するほか、エンタープライズITから中小企業のIT導入、デジタルマーケティングまで幅広い分野で記事執筆を手がけている。

事業継続の観点から関心が高まる「テレワーク」<br>感染症対策を機に導入は進むか?

ホワイトペーパー

働き方は選ぶ時代!業務の可視化とテレワークへの対応

2020年は「テレワーク」への注目が高まる出来事が相次いでいます。来年の7月に延期となった東京オリンピックはもちろん、新型コロナウイルス感染症対策によって、早急に取り組むべき課題であるとの認識を持つ企業も多いのではないでしょうか。
そこで、クラウドやモバイルといったテクノロジーを活用し、テレワークによって「時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」を実現するために、企業はどんなことが必要かを改めて考えてみたいと思います。

混雑回避の切り札、事業継続の観点から注目される「テレワーク」

「ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義されるテレワーク。スマホやタブレットなどのモバイル端末の普及、クラウドをはじめとするネットワーク基盤の整備などテクノロジーの進展によって、テレワークを実現する環境が整備されているのは周知のとおりです。
テレワークによって、オフィス以外の場所や時間を有効に活用して仕事を行うことが可能になります。その形態には大きく「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務(施設利用型勤務)」の3つがあり、企業にとっては、次のようなメリットが考えられます。

(1)労働生産性・業務効率化の向上
(2)オフィス賃料などのコスト削減
(3)育児・介護に携わる社員の雇用継続
(4)多様な人材の活用
(5)優秀な人材の確保
(6)事業継続性の確保

企業にとっては、社員が育児や介護などと両立しながら働くことや、遠隔地にいる優秀な人材を登用できるなどのメリットがあるほか、有事の際にビジネスを継続する事業継続性の点でもメリットがあります。
来年7月に開催が予定される東京オリンピックによって、都内を中心に多くの観光客が流入することが予想されます。大会期間中鉄道利用者は約1割増加することが見込まれ、混雑回避の切り札として、テレワークの重要性が認識されています。

そして、自然災害や感染症などのリスクに備えた事業継続の観点からも重要な経営課題の一つといえるでしょう。

3000団体以上の参加を目標に掲げる「テレワークデイズ2020」

2012年にオリンピックが開催されたロンドンでは、企業の約8割がテレワークや休暇取得などの対応を行い、市内の混雑を解消したといわれます。
そこで、日本においてもテレワークの活用によって交通混雑を緩和し、企業がテレワークに取り組む機会を創出することを目的に、「テレワーク・デイズ」が2017年から実施されています。これは、総務省や厚生労働省、経済産業省などの省庁と、東京都などが連携し、予定されていた2020年東京大会の開会式にあたる7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけたもの。
2017年は、約950団体(6.3万人)が参加し、2018年は、7月23日~27日の5日間実施され、1,682団体(延べ30万人以上)が参加しました。
そして、2019年には、大会前の本番テストとして、7月22日~9月6日の約1ヵ月間を「テレワーク・デイズ2019」とし、テレワークの一斉実施を行いました。
2,887団体(約68万人)が参加し、最も多かったのが情報通信業で685社・団体が参加し、約32%を占めました。また、テレワークの形態に「在宅勤務」を活用した企業・団体は1,675社・団体にのぼり、約77.3%を占めました。
2018年の取り組みと比較すると、7月22日?26日の23区内の通勤者数は、約124万人減少しました(2018年は約41万人の減少)。また、オフィス事務や残業時間など、すべての指標で大幅な削減効果がみられ、事務用紙等の使用は約38%減少し、残業時間は約44.6%減少するなど、業務効率化に貢献しました。
参加企業が得られた効果・成果として、約8割が「就労者の移動時間の短縮」を挙げ、特別協力団体の60%以上が「業務の生産性向上」「就労者の生活環境の改善」を成果として認識する結果となりました。
なお、2020年は、7月20日~9月6日の期間で「テレワーク・デイズ2020」が開催予定とされています。約3000団体以上の参加を目標に掲げ、都内の企業に、従業員の1割のテレワーク実施を呼びかけています。

先進企業3社によるテレワーク実施事例


では、実際にテレワークに取り組む企業ではどんな取り組みを行い、どんな効果を挙げているのでしょうか。厚生労働省「テレワーク活用の好事例集」(平成28年度 テレワークモデル実証事業)から、特徴的な3社の取り組みを紹介します。
1社目は、東京急行電鉄です。社会インフラを担う同社は、多様な人材が活躍できる環境づくりとして「ワークスタイル・イノベーション」の推進を掲げています。
テレワークの取り組みは、育児・介護者の負担軽減による持続的な成長の寄与を目的に在宅勤務制度を導入。2016年9月より、妊娠、育児・介護などの事由に限らず、サテライトオフィス勤務制度を推進しています。
その結果、子どもと過ごす時間が増えるなど、ワーク・ライフ・バランスの向上につながるとともに、復職後のテレワークは休業からの早期復帰に大きな役割を果たしています。また、男性従業員も育児休業の利用が増え、これから本格利用がはじまるサテライトオフィス勤務制度では、トライアルの結果から「通勤時間の削減」「生産性向上」などのメリットがみられています。
2社目は、小売・卸売業のローソンです。同社は、2008年のトライアルを経て、小学校3年生までの子どもを持つ従業員を対象にテレワークを導入。以降テレワーク(終日在宅勤務)の利用申請者は、一定数が維持されています。
テレワークは、従業員の子育て支援の目的で導入し、短時間勤務や半日休暇などと併用可能です。また、育児休業明けの復職面談において、人事担当者からテレワークについて説明を行い、テレワーク利用を確認しています。
テレワークは、データ管理やリーガルチェックなどの専門性の高い仕事が多く、必ずしもコミュニケーションを必要としない業務で利用効果を挙げています。
3社目は、サービス業のリクルートホールディングスです。同社はテレワークを「リモートワーク」と呼び、オフィスや自宅以外の執務環境を整備しています。
テレワークは業務プロセス変革により時間を創出し、多様な強みをもった個を創出するとともに、他社とのオープンなコラボレーションを促進する「働き方変革」の一環として取り組んでいます。
利用頻度は、週1回程度のテレワークの利用が大半ですが、利用者からは週2回以上の利用を希望する意見が多く、利用者のアンケートによると、「育児・介護との両立がしやすくなった」「長期間にわたって会社で働くイメージを持つことができた」などのコメントが多く寄せられています。

出典:厚生労働省「平成28年度 テレワークモデル実証事業 テレワーク活用の好事例集」

テレワーク導入の2つの課題と解決策

一方で、企業がテレワークを導入する際の課題として挙げられるのが、大きく「情報漏えいのリスク」「勤怠管理の難しさ」の2つのポイントです。
1つめの「情報漏えいのリスク」には、業務データの持ち運びや共有によるリスクが考えられます。たとえば、USBメモリの盗難や紛失、あるいは自宅にある私用のパソコンを介してウイルスなどに感染してしまうことによる情報漏えいのリスクや、使い慣れた私物のスマホを勝手に業務利用することで、情報漏えいやウィルス感染などのセキュリティ事故を引き起こす可能性があることにも注意が必要です。

 また、オンラインストレージやファイル共有サービスの利用や、フリーメールにファイルを添付して、社外に送信することなど、個人のアカウントによるクラウドサービスを介した情報の持ち出しにも、情報漏えいやデータの消滅などのリスクがあります。
こうしたリスクへの対策として、企業は、守るべき重要情報が何かを明確にした上で、重要情報に対する正しいアクセスの制御、また、持ち出しの制御、そして、情報の漏えいに気づきやすい環境の整備を行うことが重要です。
たとえば、IT資産管理ソフトにより、社員のID管理や利用する業務端末のソフトウェア状態の管理、パソコンの操作ログの取得・管理によって、いつ・誰が・どんな操作をしたのかを可視化すること把握することなどが対策の一つの考え方となります。
「統合型エンドポイントマネジメント」であるLanScope Catは、IT資産管理ツールからスタートし、企業にとって重要な資産である個人情報の保護をはじめとする「内部情報漏えい対策」、そして、高度化/深刻化するサイバー脅威に対応すべく「外部脅威対策」の分野に機能拡張しています。
2つめの「勤怠管理の難しさ」には、テレワークの特性上、勤務先のオフィスから離れて仕事を行うため、始業・終業時刻などの労務管理については事前に適正なルールを整備することが欠かせません。
また、基本的に社員がオフィス外で働くことになるため、マネジメントの目が届きにくく、勤務実態が不透明になりやすく、労働生産性の低下や、かえって労働時間が長時間化するなどのリスクがあります。
こうした課題解決には、たとえば、グループウェアなどの業務システムの機能を用いて勤怠管理を行う方法があります。スケジュール管理やタスク管理を活用して作業の進捗を管理し、メールやSNSなどのコミュニケーション機能を用いて、出退勤の報告を行うなどの方法があります。また、オンライン上の仮想オフィスである「バーチャルオフィス」を用い、そこに備わる勤怠管理の機能を活用することも一つの方法です。
また、勤怠管理システムの導入も効果的です。インターネットに接続可能な環境から、PCやスマホを使って勤怠状況を入力、報告が可能です。
なかには、複数のITシステムを連携する機能を備えたものもあります。PC電源のON / OFFやログオン / ログオフに加え、PC操作ログを取得することによって自己申告された労働時間と対比させ、より実態に近い勤務時間の把握が可能なツールもあります。
これにより、テレワークで働く社員の勤怠データをリアルタイムで共有でき、収集された労働時間のデータを検証することで、どの部署で、どんな作業に問題があるかを分析することが可能になります。データの定期的な検証によって、さらなる働き方改革を進めていくことができるようになるでしょう。

ホワイトペーパー

働き方は選ぶ時代!業務の可視化とテレワークへの対応