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IDaaSとは?機能や導入メリット、注意点をわかりやすく解説

Written by WizLANSCOPE編集部

IDaaSとは?機能や導入メリット、注意点をわかりやすく解説

IDaaSとは、「Identity as a Service」の略で、クラウド上でIDや認証を一元管理し、クラウドサービスへ利便性を担保しながら安全にログインできるようにするサービスです。

クラウドサービスの利用は年々拡大しており、業務で多くのクラウドサービスを利用している企業も珍しくありません。

しかし、利用するサービスが増えるほど、管理すべきID・パスワードも増加し、その結果、パスワードの使い回しや脆弱なパスワード設定など、セキュリティリスクが高まりやすくなります。

このようなセキュリティリスクを低減し、安全かつ効率的な認証を可能にするのが「IDaaS」の仕組みです。

本記事では、この「IDaaS」の機能やメリット・デメリット、選ぶ際のポイントなどを解説します。

▼本記事でわかること

  • IDaaSの概要
  • IDaaSの機能
  • IDaaSのメリット・デメリット
  • IDaaSの選定ポイント

IDaaSの導入を検討されている方はぜひご一読ください。

IDaaSとは


IDaaS(Identity as a Service)とは、ユーザーのID管理や認証機能をクラウド上で提供するサービスです。

従来は社内システムで実施していたIDの登録・削除、パスワード管理、アクセス制御などの作業を、クラウドを通じて一元的に運用できる点が特徴です。

また、読み方は「アイダース」または「アイディーアース」とされており、クラウドサービスの利用が進む企業を中心に導入が広がっています。

なぜIDaaSが注目されるのか


IDaaSが注目を集める背景としては、以下が挙げられます。

  • 働き方の変化
  • クラウドサービス利用の増加
  • セキュリティ意識の高まり
  • コンプライアンス要件の厳格化
  • コスト効率の向上

詳しく確認していきましょう。

働き方の変化

新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけにテレワークが急速に普及し、自宅など社外から社内システムにアクセスする機会が増えました。

これにより、社内と社外の境界にセキュリティ対策を施す従来の「境界型防御」では、十分な防御が難しくなっています。

そこで、社内ネットワークに接続しなくてもセキュアな接続が実現できるIDaaSが注目を集めています。

さらに、IDaaSを導入することで、VPN接続が不要になり、テレワーク時に課題となっていた通信パフォーマンスの低下を解消できる点も大きなメリットです。

クラウドサービス利用の増加

クラウドサービスの利用拡大も、IDaaSが求められる大きな理由の一つです。

IT技術の進歩により、高性能かつ手軽に利用できるクラウドサービスが増え、企業が利用するシステムはオンプレミス環境だけでなく、複数のクラウドサービスも併用するケースが一般的になりました。

しかし、利用するクラウドサービスが増えるほど、ID管理は煩雑化し、パスワードの使い回しや脆弱なパスワードの設定などのセキュリティ上の課題も増加します。

そこでIDaaSを導入することで、オンプレミス環境とクラウド環境双方の認証情報をまとめて管理できるようになります。

さらに、シングルサインオン(SSO)を組み合わせることで、利便性を損なうことなく高いセキュリティを維持することが可能です。

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セキュリティ意識の高まり

サイバー攻撃や内部不正による情報漏洩被害は年々増加しており、ID・パスワードのみでシステムを防御する従来の方法には限界があると指摘されています。

IDaaSには、多要素認証(MFA)やアクセス制御、異常ログインの検知といった高度なセキュリティ機能が搭載されており、攻撃が成立する前の段階でリスクを抑止することが可能です。

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コンプライアンス要件の厳格化

法令遵守(コンプライアンス)への対応強化も、IDaaSが注目を集める理由の一つです。

近年、個人情報保護法をはじめとする各種業界規制が強化され、アクセス権限を適切に管理できているかどうかは、企業の信頼性に直結する重要な要素となっています。

IDaaSは、権限設定・ログ管理・監査対応などを統合的に行えるため、法令遵守体制の強化にも大きく貢献します。

コスト効率の向上

サービスごとにIDを個別に管理する場合、管理者の負担が増えるだけでなく、システム維持にかかるコストも大きくなります。

一方でIDaaSはクラウド型で提供されるため、初期費用を抑えながら管理コストを削減できる点が大きなメリットです。

これにより、セキュリティを強化しつつ、業務効率の向上も期待できます。

IDaaSの主な機能


IDaaSには、クラウドサービスへの認証基盤をクラウド上で安全かつ効率的に運用するためのさまざまな機能が搭載されています。

ここでは、IDaaSの主要な機能を紹介します。

  • シングルサインオン(SSO)
  • 多要素認証(MFA)
  • ID管理(IDプロビジョニング)
  • アクセス制御
  • ID連携

具体的にどのような機能が搭載されているのか確認していきましょう。

シングルサインオン(SSO)

シングルサインオン(SSO)は、一度のログインだけで複数のアプリケーションやサービスにアクセスできる仕組みです。

従来のようにサービスごとにIDやパスワードを管理する必要がなくなるため、利用者の負担が大きく減り、簡単なパスワードの設定やパスワードの使い回しによるセキュリティリスクの抑制にもつながります。

認証方式は、フォーム入力の自動化だけでなく、SAMLやOIDCなどの標準的な連携方式にも対応しているため、クラウド・オンプレミスどちらの環境にも適用できます。

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多要素認証(MFA)

多要素認証(MFA)とは、ユーザーの身元確認のため、「知識情報」「所持情報」「生体情報」のうち、2つ以上の要素を組み合わせるセキュリティ手法です。

知識情報 パスワードなどの特定のユーザーのみが知っている情報
所持情報 スマートフォンやICカードなど利用者本人が所持している情報
生体情報 指紋や静脈、顔、虹彩など、本人固有の身体情報

パスワードのみに依存しない認証方法であることから、アカウントの乗っ取りや不正アクセスに非常に有効です。

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ID管理(IDプロビジョニング)

ID管理(IDプロビジョニング)機能では、IDaaSに接続しているクラウドサービスや自社開発システムなどのユーザーIDを一元的に管理できます。

これにより、従業員の入社・異動・退職に合わせて、必要なIDの発行や削除も簡単に行えるようになり、管理作業の手間とリスクを同時に削減可能です。

アクセス制御

IDaaSでは、利用者ごとにアクセス可能なシステムや操作範囲を細かく制御することが可能です。

例えば、役職・部署・業務内容などに応じて適切な権限を設定することで、必要以上の情報にアクセスできないようになり、内部不正による情報漏洩の防止が期待できます。

ID連携(フェデレーション)

ID連携(フェデレーション)は、IDaaSと他システム間でユーザー情報を共通化し、認証情報を引き継ぐ仕組みです。

システム間でIDや権限を同期すると、新規アカウントの発行や権限変更を一度の操作で反映できるようになり、アカウント運用の効率化が図れます。

さらに、退職者アカウントの削除漏れや放置といった事態も防げ、セキュリティ強化にも役立ちます。

IDaaSが実現するSSOとは


SSO(シングルサインオン)は以前から存在する技術ですが、IDaaSの登場によってその活用範囲と利便性が大きく広がりました。

クラウドベースのIDaaSは、従来のオンプレミス環境では実現が難しかった柔軟な認証環境を可能にし、認証基盤を大きく進化させています。

ここでは、従来のSSOが抱えていた課題と、IDaaSによって得られるメリット、そして導入時に注意すべき点について解説します。

IDaaS登場以前のSSOの課題

従来のSSOは、オンプレミス環境にあるシステムを主な対象としていたことから、クラウドサービスへの適用が困難でした。

「社内システムには強いが、クラウドサービスには弱い」という特徴から、利便性の高いクラウドサービスを活用するはずが、ユーザーと管理者の双方にかえって負担をかけてしまう課題が生じていました。

IDaaSで実現するSSOのメリット

IDaaSはクラウド上に認証基盤を持つため、インターネット環境があればどこからでも利用できます。

そのため、オンプレミス型のように、外部アクセスのための特別なネットワーク設定や中継装置の用意は不要となり、テレワークなど、社外で快適に業務を行うことができるようになります。

また、インフラ管理やシステム更新はサービス提供者側が行うため、企業は認証環境を維持する負担を大幅に減らすことができ、結果として、利便性とセキュリティを両立したSSOが構築できるようになります。

IDaaSでSSO実現する際の注意点

一方で、IDaaSによるSSOは「一度認証されれば複数のサービスにアクセスできる」という性質上、万一パスワードが漏洩した場合、被害範囲が大きくなる可能性があります。

また、SSOサービス(IDaaS)自体に障害が発生した場合、連携している複数のサービスへログインできなくなる恐れもあります。

さらに、古いシステムや独自構築のシステムなど、SSOの連携が難しいものもあります。

新規サービスを導入する際は、連携方法について事前に確認することが推奨されます。

IDaaSの導入メリット


IDaaSを導入することで、以下のようなメリットが期待できます。

  • セキュリティの強化
  • コストの削減
  • 業務効率向上

具体的にどのようなメリットがあるのか確認していきましょう。

セキュリティの強化

前述の通り、IDaaSには多要素認証(MFA)機能が搭載されているため、活用することでなりすましや不正アクセスを未然に防ぐことができます。

さらに、サービスやシステムごとにID管理する必要がなくなるため、使いまわしや紛失などのリスクの軽減にもつながり、結果として情報漏洩リスクの低減が期待できます。

コストの削減

オンプレミス型の認証システムを維持する場合、サーバーの導入や保守に多くの費用がかかります。

一方でIDaaSはクラウド型のため、初期費用を抑えて導入でき、利用規模に応じた柔軟な課金体系で運用できるケースが多いです。

不要な機能を持たず、必要な範囲から始められる点も魅力です。

業務効率向上

IDaaSとSSOを組み合わせることで、クラウドサービスのログインにかかる手間が大幅に減少し、業務効率化に役立ちます。

さらにID管理を一元化することで、従業員の入社・異動・退職に伴うアカウント作成や権限変更、不要アカウントの削除といった作業を自動化・効率化できます。

これにより、担当者の作業時間を削減できるだけでなく、管理者の運用負担を軽減し、セキュリティと効率化を両立したアカウント管理が期待できます。

IDaaSの導入におけるデメリット・注意点


IDaaSは認証基盤を統一できる便利な仕組みですが、導入することが確実に業務効率化が図れるとは限りません。

ここでは、IDaaSの導入時に理解しておくべきデメリットおよび注意点を整理します。

カスタマイズ性に制限がある

IDaaSは多くの組織で利用できるよう標準化されているため、独自仕様の業務フローに細かく合わせることが難しい場合もあります。

例えば、既存システムとの連携や特殊な承認ルールを反映したい場面では、実装に制約が生じやすく、結果的に運用側で調整作業を補う必要が出てきます。

そのため、導入前に「どこまで標準機能で運用できるか」を明確にすることが重要です。

管理・運用コストがかかる

クラウド型であるIDaaSは初期費用を抑えられますが、利用ユーザー数や機能に応じて継続的な費用が発生します。

また、拡張機能や追加サポートを利用する場合、想定よりコストが膨らむケースもあります。

ただし、運用負担の軽減やセキュリティ強化の効果によっては、費用に見合う価値を得られるケースもあるため、単純に「高い・安い」で判断することは避けるべきです。

アクシデント発生時の復旧に時間がかかる

IDaaSは認証を一元化する性質上、障害が生じると多くのサービスに影響が及びます。

さらに、復旧作業は提供元の対応を待つことになるため、社内のみで対応できるオンプレミス型と比べ、復旧に時間を要する可能性もあります。

万が一トラブルが発生した際に備えて、代替手段や連絡フローなど、運用ルールを事前に整理しておくことが欠かせません。

ベンダーロックインが懸念される

特定のIDaaSサービスに依存しすぎると、将来的に別のサービスへ移行しづらくなる懸念があります。

サービスごとに設定方法やデータ形式が異なるため、切り替えには多大な労力とコストが必要です。

長期的な視点で、自社にとって最適なサービスを慎重に選ぶようにしましょう。

次見出しで、IDaaS製品を選ぶ際のポイントについて解説します。

IDaaS製品を選ぶ際のポイント


自社の業務環境やセキュリティ方針、利用目的に合わないサービスを選んでしまうと、導入後に再構築が必要になるなど、運用面で大きな負担が生じる可能性があります。

そのため、IDaaSを導入する際は、機能だけを比較するのではなく、信頼性や使いやすさ、導入後のサポート体制など、複数の観点から総合的に検討することが重要です。

ここでは、IDaaS製品を選ぶ際のポイントについて解説します。

セキュリティ

IDaaSを選定する際にまず確認すべきなのは、サービス自体のセキュリティ水準です。

IDaaSは、社内システムやSaaSへの認証情報を一元的に管理する仕組みであるため、セキュリティが不十分なサービスを使うと、攻撃を受けた際に複数のアカウント情報がまとめて漏洩するリスクがあります。

サービスの信頼性を見極める指標として、SOC認証をはじめとした外部評価機関による認定有無は、非常に重要です。

SOC認証(SOC1やSOC2など)とは、クラウドサービス提供企業の内部統制の有効性を第三者が検証し、報告書としてまとめたものです。

SOC認証の取得には、厳格な評価基準を満たす必要があるため、SOC認証を持つサービスは、一定のセキュリティと運用品質が担保されているといえます。

使い勝手

IDaaSは日常的に利用するシステムのため、操作性の良さも重視すべき要素です。

ユーザー画面が複雑だと、ログインの手間が増えたり、設定変更時に管理者の負担が蓄積したりします。

利用者が直感的に操作でき、管理画面も整理されているサービスを選ぶことで、導入効果をより発揮しやすくなるでしょう。

既存アプリケーションとの連携性

既存システムと、スムーズに連携できるかも重要な選定ポイントです。

連携可能なサービスが少ないと、結局は個別ログインが必要となり、IDaaS導入のメリットが薄れてしまいます。

導入前に、自社で利用中および今後利用予定のシステムを整理したうえで、ベンダーが提供する連携一覧と照らし合わせることが推奨されます。

サポートの充実度

万が一トラブルが発生した時のことを考え、サポートが充実しているサービスを選ぶことが望ましいです。

特に、問い合わせ方法や対応時間帯、日本語サポートの有無などは事前に確認するべきポイントです。

サポートが不十分なサービスを選ぶと、業務が滞る可能性があります。

コスト

導入に必要な費用を総合的に算出し、予算内に収まるかも確認しましょう。

クラウドサービスは初期費用が抑えられる一方で、月額料金が積み重なると年間コストが高額になるケースがあります。

そのため、初期費用・月額費用・年間費用をそれぞれ明確にしておくようにしましょう。

また、必要な機能だけを厳選して導入することで、コストの最適化が図れます。

使わない機能まで契約すると無駄な支出が増えてしまうため、事前に必要機能をリスト化することが推奨されます。

トライアル

本導入の前に、トライアルを実施することも推奨されます。

製品資料やデモンストレーションでは使いやすそうに見えても、実際に使うと管理画面がわかりにくかったり、設定が複雑だったりする可能性があります。

トライアル期間を設けることで、実際の運用フローに適合するかを事前に確認することができ、スムーズに運用が開始できます。

また、管理者側の操作性だけでなく、日常的に利用するエンドユーザー(従業員)の視点からもログインのしやすさや利便性を確認することが重要です。

まとめ

本記事では「IDaaS」をテーマに、主な機能やメリット・デメリットなどを解説しました。

本記事のまとめ

  • IDaaSは、IDやパスワードをクラウド上で一元管理できるサービス
  • IDaaSには、「シングルサインオン(SSO)」「多要素認証(MFA)」「ID管理(IDプロビジョニング)」「アクセス制御」「ID連携」などの機能が搭載されている
  • IDaaSを導入することで、「セキュリティの強化」「コストの削減」「業務効率向上」といったメリットが期待できる
  • IDaaS製品を選ぶ際は、機能面だけでなく、セキュリティや使い勝手、既存サービスとの連携など、日常的に使いやすいかどうかを確認することが重要
  • 機能面が優れていても、使い始めると思わぬ課題が生じる可能性があるため、導入前にトライアル実施することが推奨される

IDaaSを導入することで、IDaaSと紐づいているクラウドサービスや社内システムのIDやパスワードを一元的に管理できるようになります。

これにより、サービスごとにID・パスワードを管理する必要がなくなり、パスワードを記憶・入力する手間を省けるだけでなく、使いまわしや脆弱なパスワードの設定によるセキュリティリスクも低減できます。

クラウドサービスの利用が急増する中、ID・パスワードの管理に課題を抱えている企業・組織の方は、ぜひIDaaSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。