Written by WizLANSCOPE編集部

目 次
CIEMとは、クラウド環境におけるIDごとの権限を可視化・管理・監視し、過剰な権限や設定ミスによるセキュリティリスクを軽減することを目的としたソリューションです。
近年、多くの企業でクラウドサービスの業務活用が進み、効率化や柔軟なシステム運用が実現されています。
しかし一方で、利用するサービスやアカウントの増加で、権限管理が複雑化し、不適切な権限付与や管理不備といった新たなセキュリティリスクも生まれています。
本記事では、このような課題の解決に役立つソリューション「CIEM」について、機能やメリット、選定のポイントなどをわかりやすく解説します。
▼本記事でわかること
- CIEMの概要
- CIEMの機能
- CIEMのメリット
- CIEMの選定ポイント
「クラウド環境の権限管理を最適化したい」「権限管理にかかる工数を削減したい」とお考えの企業・組織の方は、ぜひご一読ください。
CIEMとは

「CIEM(Cloud Infrastructure Entitlement Management)」とは、AWSやAzure、GCPといったパブリッククラウド環境におけるIDごとの権限を可視化・管理・監視し、過剰な権限や設定ミスによるセキュリティリスクを軽減することを目的としたソリューションです。
日本語では「クラウドインフラ権限管理」と訳されます。
クラウド環境では、ユーザーやサービスアカウントなど、多数のIDに対して細かな権限設定が可能です。
しかし、その柔軟性ゆえに管理が複雑化し、必要以上の権限を与えてしまう「過剰権限」のリスクが常に存在します。
CIEMは、こうした過剰な権限を自動的に検出し、最小権限の原則に基づいた適切な権限設定を支援することで、クラウド環境全体のセキュリティ強化を支援します。
クラウド環境における権限管理の課題
クラウドサービスの利用拡大に伴い、管理すべきアカウント数が増加し、権限管理はますます複雑化しています。
例えば、プロジェクトごとに新しいユーザーやサービスアカウントが追加されるたびに、それぞれの役割に応じた権限を適切に設定する必要があります。
しかし、プロジェクトの終了後に不要となったアカウントや権限が削除されず、そのまま残ってしまうケースも少なくありません。
さらに、複数のクラウドサービスを併用するマルチクラウド環境では、プラットフォームごとに権限管理の仕組みや設定方法が異なるため、全体像を正確に把握し、一貫したセキュリティポリシーを適用することが非常に困難になります。
こうした権限管理の課題は、意図しないアクセス経路や過剰権限を生み出し、結果として情報漏洩や不正アクセスなどの重大なセキュリティリスクにつながるリスクを高めます。
CIEMが必要とされる背景
CIEMが必要とされる背景には、クラウドネイティブな開発環境の普及と、それに伴うIDおよび権限の爆発的な増加が挙げられます。
コンテナやサーバーレスといった技術の活用が進む中で、人だけでなく、アプリケーションやサービス自身もIDを持ち、相互にアクセス権限を要求するようになりました。
この結果、クラウド環境内の権限構成は、より動的かつ複雑なものとなっています。
こうした複雑な環境において、従来の手動による権限管理や棚卸しでは、変化に追いつくことが難しく、管理負荷やリスクの見落としが発生しやすくなります。
そこで、権限の状態を継続的に可視化・分析し、リスクを自動的に検出・修正するCIEMの仕組みが、クラウド環境を安全かつ効率的に運用するために欠かせない要素として注目されています。
CIEMの主要な機能

CIEMの主な機能としては、以下が挙げられます。
- 権限の可視化とリスク分析
- 最小権限ポリシーの推奨と適用
- 継続的な権限設定の監視
- コンプライアンスレポートの自動生成
詳しく確認していきましょう。
権限の可視化とリスク分析
CIEMの最も基本的な機能は、複雑に絡み合ったクラウド環境の権限構造を可視化することです。
ユーザー、グループ、ロール、ポリシーといった複数の要素を分析し、「誰が、どのリソースに対して、どのような操作を実行できるのか」を分かりやすく把握できる形で表示します。
これにより、管理者は直感的に権限設定の全体像を把握することが可能になります。
さらに、長期間使用されていない権限や、業務内容に対して明らかに過剰な権限を自動的に検出し、リスクとして可視化します。これにより、見落とされがちなセキュリティ上の弱点を特定し、適切な対策につなげることができます。
最小権限ポリシーの推奨と適用
CIEMは、単に権限を可視化するだけでなく、より安全な状態にするための具体的な改善アクションの提案も行います。
各IDの実際の利用状況を継続的に分析し、業務に必要な最小限の権限セットをポリシーとして自動的に推奨します。
例えば、あるユーザーが特定のデータストレージに対して読み取り権限しか利用していない場合、書き込みや削除の権限は不要であると判断し、それらを削除した新しいポリシーを提案します。
管理者はその推奨内容を確認し、ワンクリックで適用することが可能です。
継続的な権限設定の監視
クラウド環境は常に変化しており、一度権限設定を最適化したとしても、新たなリスクが生まれる可能性があります。
CIEMは、権限設定に対する変更を継続的に監視し、ポリシーに違反する危険な変更や、予期せぬ権限の昇格が発生した場合に、即座に管理者にアラートで通知します。
これにより、設定ミスや悪意のある操作に早期に検知し、迅速な対応を可能にすることで、重大なセキュリティインシデントを未然に防ぐことが可能になります。
コンプライアンスレポートの自動生成
多くの企業にとって、業界標準や法的要件といったコンプライアンスへの準拠は、クラウド運用における重要な課題の一つです。
CIEMは、こうしたコンプライアンス対応を支援する仕組みとしても活用することが可能です。
例えば、現在の権限設定がCISベンチマークやNIST CSFなどの各種セキュリティフレームワーク、またGDPRやCCPAなどの各種規制要件を満たしているかを自動的に評価します。
さらに、準拠状況に関する詳細なレポートを自動生成することで、監査対応にかかる負担の軽減も可能です。
これにより、監査にかかる工数を大幅に削減すると同時に、継続的なコンプライアンス維持が期待できます。
CIEM導入によるメリット

CIEMを導入することで、次のようなメリットが期待できます。
- マルチクラウド環境のID・権限の一元管理
- セキュリティ運用の効率化
- 最小権限の原則の実現
詳しく確認していきましょう。
マルチクラウド環境のID・権限の一元管理
近年、多くの企業がAWS、Azure、GCPなどの複数のクラウドプラットフォームを併用するマルチクラウド戦略を採用しています。
しかし、それぞれのプラットフォームでIDや権限の管理方法や仕組みが異なるため、運用が煩雑になりやすく、管理負荷の増大や設定ミスが生じやすくなっています。
CIEMは、こうした異なるクラウド環境に存在する権限情報を横断的に収集・集約し、単一のダッシュボード上で一元的に管理することを可能にします。
これにより、管理者はプラットフォームごとの仕様差を意識することなく、組織全体で統一された権限ポリシーを効率的かつ継続的に適用できるようになります。
セキュリティ運用の効率化
手動による権限の棚卸しやリスクチェックは、多大な時間と手間を要する作業です。
CIEMは、権限の可視化・リスク分析・ポリシーの推奨といった一連のプロセスを自動化することで、こうした負担を大幅に軽減します。
これにより、セキュリティ担当者は、従来手作業で行っていた膨大な確認作業から解放され、より高度で戦略的なセキュリティ施策の検討や運用改善に集中することが可能になります。
その結果、セキュリティ運用全体の大幅な効率化と、ヒューマンエラーの削減が期待できるでしょう。
最小権限の原則の実現
「最小権限の原則」とは、業務遂行に必要な最小限の権限のみを付与するという、ゼロトラストセキュリティの基本概念です。
CIEMは、各IDの実際の利用状況に基づいて過不足のない権限を推奨することで、この最小権限の原則を効果的に実現します。
過剰な権限を排除することは、万が一IDが侵害された場合でも、攻撃者が行える操作範囲を限定し、被害を最小限に食い止める上で極めて重要です。
CIEMとCSPMの違い
CIEMとしばしば比較されるソリューションに、「CSPM(Cloud Security Posture Management)」があります。
CIEMとCSPMは、いずれもクラウド環境のセキュリティ強化を目的としたツールですが、注力する領域と役割に明確な違いがあります。
CIEMは、クラウド環境における「誰が何にアクセスできるか」という「権限」に特化したソリューションです。
ユーザーやアプリケーションといったIDと、それらに紐づく権限を深く分析し、過剰な権限や不審なアクティビティ、権限の不適切な利用がないかを継続的に監視します。
つまり、IDの振る舞いやアクセス権の適正化を通じて、セキュリティリスクを低減することが目的です。
一方でCSPMは、クラウドインフラ全体の設定状態に着目し、セキュリティ上の設定ミスを検出・修正することに重点を置いています。
例えば、「データベースがインターネットに公開されている」「ストレージの暗号化が無効になっている」といった設定不備を検出し、セキュリティリスクを評価します。
CSPMは、クラウドリソースの状態を安全に保つことを目的としたソリューションです。
CIEMとCSPMを組み合わせる重要性
クラウド環境を包括的に保護するためには、CIEMとCSPMの両方を活用する必要があります。
たとえインフラの設定にミスがなくても、過剰な権限を持つIDが侵害されれば、情報漏洩や不正操作につながる可能性があります。
一方で、権限管理が適切であっても、リソースの設定ミスがあれば、それ自体が重大な脆弱性となり得ます。
そのため、IDの権限管理を行うCIEMと、インフラの設定管理を行うCSPMを組み合わせて運用することで、クラウド環境に対する多層的な防御が実現され、より強固なセキュリティ体制を構築することができます。
CIEMソリューションの選定ポイント

最後に、CIEMソリューションを選定する際に考慮すべきポイントを3つ紹介します。
- 対応するクラウド環境の範囲
- 分析とレコメンデーション機能の精度
- 他のセキュリティツールとの連携性
自社に最適なソリューションを選定するために、ぜひご確認ください。
対応するクラウド環境の範囲
まずは、自社で利用している、あるいは将来的に利用する可能性のあるクラウドサービスに、CIEMが対応しているかを確認することが重要です。
特に、AWS、Azure、GCPといった主要なIaaSアプリケーション以外を利用している場合は、対応していないケースも想定されます。
また、マルチクラウド環境での利用を想定している場合は、複数のクラウドプラットフォームを横断して権限を可視化・管理できるかどうかも事前に確認しておく必要があります。
分析とレコメンデーション機能の精度
CIEMの核となるのは、権限の利用状況を分析し、最適なポリシーを推奨する機能です。
そのため、機械学習などの技術を活用して、どの程度コンテキストを理解した上で、実用的な推奨を行ってくれるかが重要な選定ポイントとなります。
例えば、単に未使用の権限を指摘するだけでなく、ユーザーの役割や業務内容、過去のアクティビティを考慮した上で、きめ細やかな権限設定を提案してくれるかどうかが、日常的な運用のしやすさに大きく影響します。
他のセキュリティツールとの連携性
CIEMは、単体で利用するだけでなく、他のセキュリティツールと連携させることで、その価値をさらに高めることができます。
例えば、SIEMやSOARと連携し、CIEMが検出した権限に関するアラートをトリガーとして、調査や是正といったインシデント対応プロセスを自動化する活用方法が考えられます。
そのため、既存のセキュリティ運用基盤とスムーズに統合できるか、API連携や対応ツールの範囲を含めて事前に確認しておくことも、重要な選定ポイントの一つです。
クラウドサービスのセキュリティ対策なら「LANSCOPE プロフェッショナルサービス」

LANSCOPE プロフェッショナルサービスの「クラウドセキュリティ診断」は、クラウドサービスの管理設定上の不備に対して、攻撃を受けるリスクが存在しないかを評価する診断サービスです。
CIEMやCSPMは有効な可視化ツールですが、あくまで自動チェックによる静的な確認に留まります。
特にCSPMとクラウドセキュリティ診断の最も大きな違いは、「製品が自動で診断を行うか」「専門家が手動で診断を行うか」という点にあります。
クラウドセキュリティ診断は、経験豊富な専門家が手動でクラウドサービスの設定不備の洗い出しや改善案の提案を行うため、最新の攻撃手法を踏まえた上で、診断項目でのチェックや、各クラウドサービスの仕様変更にも柔軟に対応できるというメリットがあります。
クラウドサービスの業務利用が拡大する近年、誤ったアクセス権限の付与や過剰権限の放置によって、組織の重要情報が漏洩するリスクは年々高まっています。
さらにクラウドサービスは、オンラインで情報を管理するという性質上、外部からの攻撃対象となりやすい側面を持っています。
そのため、クラウド環境を安全に利用するためには、想定されるセキュリティリスクを正しく理解し、適切な対策やポリシーを策定・運用することが欠かせません。
LANSCOPE プロフェッショナルサービスの「クラウドセキュリティ診断」では、会社全体のポリシーを基準に是正を行う際や、クラウド環境の現状を把握する目的でも活用できます。
現在、以下のクラウドサービスに対してセキュリティ診断を提供しており、対象サービスは随時拡大しています。
| SaaSセキュリティ診断 | ・Microsoft 365 診断 ・Google Workspace 診断 ・Zoom 診断 ・Box 診断 ・Salesforce診断 ・Slack診断 |
|---|---|
| IaaSセキュリティ診断 | ・Amazon Web Services(AWS)診断 ・Microsoft Azure 診断 ・Google Cloud Platform(GCP)診断 |
クラウド事業者と利用者の責任範囲の分界点において、管理設定不備が原因で発生したセキュリティインシデントは、利用者側の責任となるケースも少なくありません。
クラウド環境のセキュリティ強化にはさまざまな方法があり、それぞれ異なる強みを持ちます。
CSPMは、一度導入すれば継続的かつ半永久的に設定不備を検知できるという持続性を強みがあり、クラウドセキュリティ診断は柔軟性高く、最新の攻撃手法に対応できるという強みがあります。
セキュリティインシデントを未然に防ぐためには、各機能がクラウドサービス上で適切に設定されているのかを、定期的に確認することが重要です。
クラウド環境の安全を維持するために、ソリューションごとの強みを確認し、自社のクラウド環境やセキュリティ対策の目的に応じて、適切なサービスの選定を目指しましょう。
まとめ
本記事では「CIEM」をテーマに、機能やメリット、選定ポイントなどについて解説しました。
本記事のまとめ
- CIEMとは、クラウド環境におけるIDごとの権限を可視化・管理・監視し、過剰な権限や設定ミスによるセキュリティリスクを軽減することを目的としたソリューション
- CIEMの主な機能としては、「権限の可視化とリスク分析」「最小権限ポリシーの推奨と適用」「継続的な権限設定の監視」「コンプライアンスレポートの自動生成」などが挙げられる
- CIEMを導入することで、「マルチクラウド環境のID・権限の一元管理」「セキュリティ運用の効率化」「最小権限の原則の実現」といったメリットが期待できる
- CIEMソリューションを選定する際は、「対応するクラウド環境の範囲」「分析とレコメンデーション機能の精度」「他のセキュリティツールとの連携性」などを比較検討することが推奨される
CIEMを活用することで、異なるクラウド環境における権限情報を一元管理できるだけでなく、権限の可視化やリスク分析、ポリシーの推奨といった一連のプロセスを自動化することが可能になります。
クラウドサービスの業務利用が拡大する中で、権限管理の課題を抱えている企業・組織にとって、CIEMの導入は非常に有効な選択肢と言えるでしょう。
またLANSCOPE プロフェッショナルサービスでは、クラウドサービスの管理設定上の不備に対して攻撃を受けるリスクが存在しないかを確認する「クラウドセキュリティ診断」を提供しています。
本診断では、CIEMでは検出しきれないクラウドサービスの管理設定不備や構成上のリスクを、専門家の視点から確認することが可能です。
例えば、CIEMによって過剰な権限や不適切なアクセス付与を継続的に監視しつつ、「クラウドセキュリティ診断」によってインフラやSaaSの設定状況を定期的に点検することで、ID・権限と設定の両面からクラウド環境を評価できます。
クラウドセキュリティを強化したいとお考えの企業・組織の方は、CIEMとあわせて、LANSCOPE プロフェッショナルサービスの「クラウドセキュリティ診断」もぜひご検討ください。

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