Written by 夏野ゆきか

目 次
セキュリティ分野におけるダウンローダーとは、マルウェアをダウンロードさせる目的で設計されたプログラムを指します。
このプログラムは、以下の特性を持つことからサイバー攻撃に頻繁に利用されています。
- マルウェアの侵入を補助するだけであり、攻撃性が低いためアンチウイルスソフトの検知を回避しやすい
- 実行ファイルであることを隠すために、テキストファイルや画像ファイルなどに偽装可能
- デバイスにダウンロードするマルウェアを柔軟に変更できる
ダウンローダーによって様々なマルウェアがデバイスに侵入した場合、機密情報の窃取や、サイバー攻撃への加担といったリスクが発生します。
そのため、以下のような適切な対策を講じることが重要です。
- ダウンローダーの検知が可能なアンチウイルスソフトの導入
- OS・アプリケーションの定期的なアップデート
- 従業員へのセキュリティ教育およびセキュリティポリシーの徹底
- ルーターやファイアウォールの適切な設定
- EDR(Endpoint Detection and Response)の導入
本記事では、ダウンローダーの危険性や感染経路、適切な対策について解説します。
▼この記事を要約すると
- ダウンローダーはマルウェアの侵入を補助するプログラムであり、単体では悪意のある活動を行わない
- 「アンチウイルスソフトによる検知が困難」「テキストファイル等に偽装可能」「ダウンロードするマルウェアを変更可能」といった特性を持つ
- ダウンローダーによりマルウェアが侵入すると、「個人情報の窃取」「ランサムウェアによる高額な身代金要求」「サイバー攻撃の踏み台化」といったリスクが生じる
ダウンローダーとは
ダウンローダーとは、マルウェアをダウンロードするために設計されたプログラムです。ダウンローダー自体は悪意のある活動を行わず、あくまでもマルウェアの侵入を補助する役割を担うのが特徴です。
ダウンローダーのみを分析しても、ダウンロードされるマルウェアの詳細は特定できません。
この特性が、攻撃の予測や防御を困難にし、被害の拡大を助長する要因となっています。

サイバー攻撃にダウンローダーが利用される理由
ダウンローダーがサイバー攻撃に多用される理由として、以下の3つの特性が挙げられます。
- アンチウイルスソフトによる検知が困難
- テキストファイルや画像ファイルに偽装可能
- ダウンロードするマルウェアを柔軟に変更可能
1. アンチウイルスソフトによる検知が困難
ダウンローダーは単体では攻撃性が低いため、アンチウイルスソフトの検知を回避しやすいという特性があります。また、ダウンローダーは攻撃者が用意したサーバーに接続し、マルウェアをダウンロードしますが、サーバー上のマルウェアは攻撃者の意図に応じて変更可能です。
つまり、アンチウイルスソフトが検出できないマルウェアを動的に選択し、感染を継続させることができます。
2. テキストファイルや画像ファイルに偽装可能
ダウンローダーは、メールの添付ファイルとして送信されるケースが多いです。
しかし、拡張子が「.exe」などの実行ファイルである場合、ユーザーが開封を警戒する可能性が高くなります。そのため、攻撃者は「.jpg」や「.docx」などの拡張子に偽装し、正規のファイルであると誤認させることで、ユーザーの開封を促します。
また、ダウンローダーは攻撃者が用意したサーバーの接続先情報を変更できるため、アクセスログを改ざんし、痕跡を隠蔽することも可能です。
3. ダウンロードするマルウェアを柔軟に変更可能
ダウンローダーは、状況に応じてダウンロードするマルウェアを変更できるため、攻撃者は目的に応じた最適なマルウェアを選択し、攻撃を効率化できます。
例えば、特定のマルウェアがアンチウイルスソフトによって検知された場合、別のマルウェアを試すことで、検知を回避しながら攻撃を継続することが可能となります。
ダウンローダーによる攻撃手法
ダウンローダーを使用した主な攻撃手法として、以下の3つが挙げられます。
- ドライブバイダウンロード
- フィッシング
- ソーシャルエンジニアリング
ここからは、ダウンローダーによる攻撃手法について詳しく解説します。
ドライブバイダウンロード
ドライブバイダウンロード攻撃とは、ユーザーが不正なWebサイトを閲覧した際に、意図せずマルウェアをダウンロード・実行させられる攻撃手法です。
この攻撃は、主にWebブラウザやプラグイン、OSの脆弱性を悪用して実行されます。
▼ドライブバイダウンロード攻撃のイメージ
▼ 攻撃の流れ
1. 攻撃者が脆弱性のあるWebサイトを特定し、スクリプトを埋め込む
2. ユーザーが改ざんされたWebサイトを閲覧すると、攻撃者が不正なサイトへリダイレクトされる
3. 遷移後、悪意のあるプログラム(ダウンローダー)が自動でダウンロードされる
4. ダウンローダーが不正な実行ファイルをインストールし、ユーザーはマルウェアに感染する
この手法では、ユーザーの操作を必要とせずに感染が成立するため、被害者が気付かないままマルウェアに感染するケースが多発しています。
フィッシング
フィッシング攻撃とは、正規の組織やサービスを装ったメールやSMS、偽サイトを使ってユーザーを欺き、個人データや機密情報を窃取する攻撃手法です。
近年では、ダウンローダーを埋め込んだ添付ファイルやリンク付きのメールを送信し、マルウェア感染を引き起こす手法が多用されています。
▼ 典型的な攻撃シナリオ
1.社内連絡や取引先を装ったメールを送信し、悪意のある添付ファイル(Excel、PDFなど)を開封させる
2.マクロを悪用したスクリプトが実行され、ダウンローダーがインストールされる
3.バックドアが設置され、リモートサーバーから追加のマルウェアがダウンロード・展開される
マルウェアがデバイスに侵入すると、アカウント認証情報や個人情報が窃取され、攻撃者へ送信されます。企業のネットワークが標的となった場合、機密情報漏洩やランサムウェア感染のリスクが高まります。
ソーシャルエンジニアリング
ソーシャルエンジニアリングとは、人間の心理や行動の隙を悪用し、情報を盗み取る攻撃手法です。
一般的なサイバー攻撃は技術的な脆弱性を狙いますが、ソーシャルエンジニアリングは人の判断ミスや習慣を利用する点が特徴です。
代表的な攻撃手法としては以下が挙げられます。
USBメモリを使った攻撃
1.攻撃者はダウンローダーを仕込んだUSBメモリを、オフィスや公共の場に故意に放置。
2.拾ったユーザーは、PCにUSBを接続。
3.USB内のダウンローダーが自動実行され、マルウェアがPCにインストールされる。
なりすまし
1.攻撃者は技術サポートやIT担当者を装い、ユーザーに電話やメールで接触。
2.「セキュリティアップデートが必要です」「このファイルを開いて設定してください」などと指示し、ダウンローダーを開かせる。
3.ユーザーが指示に従うと、PCにマルウェアがインストールされ、データが盗まれるリスクがある。
ダウンローダーに感染した場合のリスク
ダウンローダーがデバイスに侵入すると、以下の重大なリスクが発生します。
- 個人情報・認証情報の窃取
- ランサムウェア感染による身代金要求
- ボットネット化によるサイバー攻撃の踏み台化
個人情報・認証情報の窃取
ダウンローダーが侵入させたマルウェアは、デバイス内の個人情報や認証情報を窃取し、攻撃者に送信する可能性があります。窃取された情報はダークウェブ上で売買され、フィッシング詐欺や不正ログインなどに悪用されるリスクがあります。
ランサムウェア感染による身代金要求
ダウンローダーがランサムウェアをダウンロード・実行すると、デバイス内のファイルが暗号化され、復旧のために高額な身代金を要求される可能性があります。
企業ネットワークが標的となった場合、業務の停止や大規模なデータ損失を引き起こす恐れがあります。
ボットネット化によるサイバー攻撃の踏み台化
ダウンローダーがボットマルウェア※をダウンロードした場合、デバイスが攻撃者のボットネット※ の一部として組み込まれます。
※ボットマルウェア…マルウェアの一種で、感染すると遠隔操作されてしまう。
※ボットネット…ボットに感染した複数のコンピュータで構成されるネットワークのこと。
攻撃者はボットネットを活用することで、大規模なDDoS攻撃 やスパムメールの大量送信を実行します。感染したデバイスのユーザーは、知らぬ間にサイバー攻撃に加担させられることになります。
このようなリスクを回避するためにも、ダウンローダーの感染対策は不可欠です。
ダウンローダーに感染しないための対策
サイバーセキュリティの脅威が日々進化する中、ダウンローダーからシステムを守るには多角的なアプローチが不可欠です。
ここからは、ダウンローダーに感染しないための対策について解説します。
1. AI・機械学習を活用した次世代アンチウイルスの導入
ダウンローダーは、悪意のあるマルウェアをダウンロードさせることでデバイスやネットワークに被害を与えます。そのため、信頼性の高いアンチウイルスソフトの導入が重要です。
ダウンローダーは、従来型のパターンマッチング方式のアンチウイルスソフトでは検出が困難な場合があります。
特に未知や変異型のマルウェアに対応するため、AI・機械学習を活用したエンドポイントセキュリティの導入が推奨されます。
2. OS・アプリケーションの最新状態の維持
ダウンローダーはシステムやアプリケーションの脆弱性を悪用するため、脆弱性を修正するセキュリティパッチの適用が必須です。
特にゼロデイ攻撃に対抗するため、OS・ブラウザ・プラグインの自動更新を有効にし、サポートが終了するバージョンなどは、早期に代替手段を検討することが重要です。
3. 従業員へのセキュリティ教育とポリシー徹底
企業のセキュリティ対策として、以下のような従業員への教育とセキュリティポリシーの徹底は欠かせません。
- メールフィルタリングで、スパムメールをブロックする
- 信頼できないウェブサイトの閲覧を避ける
- 未許可のソフトウェアをインストールしない
また、フィッシング攻撃を想定した実践的な訓練やテストを定期的に実施し、従業員の意識を高める取り組みも効果的です。
4. ルーター・ファイアウォールによるネットワーク監視
ダウンローダーは外部のC2サーバーと通信し、マルウェアをダウンロードするため、ネットワークレベルでの対策が有効です。
- 未使用のポートを閉鎖し、不要なプロトコルの通信を制限
- HTTP/HTTPS以外の外部通信をブロック
- プロキシサーバーを介した通信監視を実施し、異常なトラフィックを検知
定期的なセキュリティ監査(ログ分析、インシデントレビュー)を実施し、不審な通信を早期に特定することが重要です。
また、ネットワーク監視であれば、NDRの導入も有効です。NDRは、ネットワーク全体を対象に異常な通信パターンを検知し、迅速に対応するためのセキュリティソリューションです。
ネットワーク上の異常なトラフィックをリアルタイムで検知し、外部への情報流出や社内ネットワークへの不正アクセスを防ぎます。
MOTEXでは、ネットワーク全体の通信状況を可視化し、ランサムウェア攻撃などの異常な挙動を検知・素早く侵入へ対処できる、NDR「Darktrace(ダークトレース)」を提供しています。
5.EDRを導入する
ダウンローダーによる感染リスクをゼロにすることは難しいため、アンチウイルスを回避する、より高度な攻撃への対策としてEDRの導入が推奨されます。
▼EDRの主な機能
- エンドポイントの挙動をリアルタイムで監視し、不審な動きを即座に検出
- 感染を検知した場合、マルウェアの自動隔離・削除を実行
- 攻撃の経路分析を行い、再発防止策を策定
EDRを導入することで、ゼロデイ攻撃やファイルレスマルウェアにも対応可能となり、より高度な防御体制を構築できます。
ダウンローダー対策なら「LANSCOPE サイバープロテクション」におまかせ
ダウンローダーを経由したマルウェア感染を高精度で検知・防御するには、AIアンチウイルス「LANSCOPE サイバープロテクション」をご検討ください。未知のマルウェア検知・ブロックに対応する、2種類のAIアンチウイルスを提供しています。
▼2種類のアンチウイルスソリューション
- アンチウイルス ✕ EDR ✕ 監視サービスをセットで利用できる「Aurora Managed Endpoint Defense」
- 各種ファイル・デバイスに対策できる次世代型アンチウイルス「Deep Instinct」
1. アンチウイルス✕EDR✕監視サービスをセットで利用可能な「Aurora Managed Endpoint Defense」
「LANSCOPE サイバープロテクション」では、EDRのマネージドサービス「Aurora Managed Endpoint Defense」を提供しています。
「Aurora Managed Endpoint Defense 」は、アンチウイルスとEDRを併用し、エンドポイントを内外から保護するセキュリティソリューションです。
高度なエンドポイントセキュリティ製品を導入しても、適切に運用できなければ意味がありません。
「Aurora Managed Endpoint Defense」は、下記の2種類のセキュリティソリューションの運用を、お客様の代わりにセキュリティのスペシャリストが実施するMDRサービスです。
- 脅威の侵入をブロックするAIアンチウイルス「Aurora Protect」
- 侵入後の脅威を検知し対処するEDR「Aurora Focus」
セキュリティのスペシャリストが徹底したアラート管理をおこなうため、お客様にとって本当に必要なアラートのみを厳選して通知することが可能になり、不要なアラートに対応する必要がなくなります。
また、緊急時にはお客様の代わりにサイバー攻撃へ即時で対応するため、業務負荷を減らし、安心して本来の仕事へ集中していただけます。
「Aurora Managed Endpoint Defense」についてより詳しく知りたい方は、下記のページをご確認ください。
2. 各種ファイル・デバイスに対策できるNGAV「Deep Instinct」
「LANSCOPE サイバープロテクション」では、 AI(ディープラーニング)を活用した次世代ウイルス対策ソフト「Deep Instinct」を提供しています。
下記のようなセキュリティ課題をお持ちの企業・組織の方は、 検知率99%以上のアンチウイルス製品「Deep Instinct」の利用がおすすめです。※
- 未知のマルウェアも検知したい
- 実行ファイル以外のファイル形式(Excel、PDF、zipなど)にも対応できる製品が必要
- 手頃な価格で高性能なアンチウイルスを導入したい
近年の攻撃者は、セキュリティ製品から検知を逃れるため、実行ファイルだけでなくExcelやPDF・zipなど、多様な形式のマルウェアを仕掛けてきます。
「Deep Instinct」は、形式を問わずにさまざまなファイルに対応しているため、多様な形式のマルウェアを検知可能です。
「Deep Instinct」は、手ごろな価格設定も魅力です。詳細は以下よりご覧ください。
※Unit221B社調べ
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「マルウェアに感染したかもしれない」
「サイトに不正ログインされた痕跡がある」
このようにサイバー攻撃を受けた”事後”に、いち早く復旧するためのサポートを受けたい場合は、プロがお客様に代わって脅威に対処する「インシデント対応パッケージ」の利用がおすすめです。
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まとめ
本記事では「ダウンローダー」をテーマに、その危険性や有効な対策などを解説しました。
本記事のまとめ
- ダウンローダーはマルウェアの侵入を補助するプログラムであり、単体では悪意のある活動を行わない
- 「アンチウイルスソフトによる検知が困難」「テキストファイル等に偽装可能」「ダウンロードするマルウェアを変更可能」といった特性を持つ
- ダウンローダーによりマルウェアが侵入すると、「個人情報の窃取」「ランサムウェアによる高額な身代金要求」「サイバー攻撃の踏み台化」といったリスクが生じる
ダウンローダー自体は即座に悪意のある活動を行うわけではありませんが、デバイスに侵入した時点で、ユーザーの操作を介さずにランサムウェアなどのマルウェアが自動的にダウンロードされる危険性があります。
そのため、エンドポイントセキュリティを強化し、ダウンローダーの侵入を防ぐとともに、万が一侵入を許した場合でも迅速に封じ込めることが重要です。アンチウイルスをはじめEDRの活用など、多層防御を前提とした対策が求められます。

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