Written by 夏野ゆきか

目 次
メールセキュリティとは、ビジネスメール詐欺や不正アクセスのような「外部攻撃」や、メールの誤送信といった「内部脅威」などから、メールを保護するための技術や対策を指します。
ビジネスシーンで最も使われるコミュニケーションツールはいまだにメールであることから、メールセキュリティの強化は必要不可欠です。
本記事では、メールセキュリティの必要性や主な機能、対策できる具体的な脅威などを解説します。
▼本記事でわかること
- メールセキュリティの機能
- メールセキュリティの必要性
- メールセキュリティで対策できるリスク
業務でメールを使う機会が多い方は、ぜひご一読ください。
メールセキュリティとは
「メールセキュリティ」とは、あらゆるセキュリティリスクから、メール及び通信を保護するための技術・対策を指す言葉です。
一般社団法人日本ビジネスメール協会が実施した「ビジネスメール実態調査2024」によると、メールアドレスを保有する人の仕事上のコミュニケーション手段、第1位は「メール」(98.6%)という結果が出ています。
チャットやビデオ会議ツールが普及したいまでも、メールを使ったビジネスコミュニケーションが衰えることはなく、サイバー攻撃においてもメールを悪用した手口・被害は報告され続けています。
メールを悪用した攻撃には、以下のようなものが挙げられます。
- 標的型攻撃メール
- フィッシング詐欺
- ビジネスメール詐欺(BEC)
これ以外にも、「人的ミスによるメールの誤送信」や「従業員によるメール経由での機密情報の持ち出し」といった内部脅威によって情報が漏洩するリスクもあります。
そのためメールセキュリティは、外部からの攻撃と内部からのリスクの両方に対応するために欠かせない対策と言えます。
メールセキュリティの主な機能・種類
知っておきたい、メールセキュリティの主な機能・対策としては以下が挙げられます。
- アンチウイルス機能
- 本文および添付ファイルの暗号化機能
- スパムフィルタリング
- 認証機能
- 誤送信防止機能
- データ損失防止(DLP)
- ログ監視
アンチウイルス機能
アンチウイルス機能は、メールの添付ファイルやリンクに潜むマルウェア(悪意のあるソフトウェアやコードの総称)を検出し、システムに被害を及ぼす前に取り除くための機能です。
マルウェアとは、悪意のあるソフトウェアやコードの総称で、トロイの木馬やランサムウェアも、このマルウェアの一種です。
メールをスキャンし、マルウェアを隔離または削除することで、受信者のデバイスを保護します。
基本的なセキュリティ対策として、アンチウイルスの導入は欠かさずおこないましょう。
本文および添付ファイルの暗号化機能
メール本文の内容や添付ファイルを暗号化することで、通信中に第三者から盗聴や改ざんされるリスクを減らすことができます。
S/MIMEやPGPなどの暗号化技術が用いられ、情報の機密性を保持するという仕組みです。
S/MIMEは、メールに電子署名を付与し、暗号化されたメッセージのやり取りを可能にします。
PGPは、公開鍵暗号と共通鍵暗号を組み合わせた効率的な暗号化方式です。
スパムフィルタリング
スパムフィルタリング機能は、受信トレイに届く前に不要なスパムメールを検出し、ブロックするものです。
最近では、無料のメールサービスでもスパムフィルタリング機能が充実しており、ユーザーが設定をおこなうことで、迷惑メールの影響を最小限に抑えられます。
認証機能
認証機能は、なりすましメールを防ぐための技術であり、メールの信頼性を高めます。主な認証技術には以下のようなものがあります。
DKIM(DomainKeys Identified Mail) | ・電子署名を利用して、なりすましメールかどうかを確認する技術 ・送信者がメールのヘッダーに「電子署名」を追加して送ることで、受信者がそれを検証し、メールの正当性を確認することが可能 |
---|---|
SPF(Sender Policy Framework) | ・送信元IPアドレスが、そのドメインからメールを送信する権限を持っているか(なりすましでないか)を確認するための仕組み ・DNSに登録された送信許可リストを基に、メールサーバーが送信者を認証する |
DMARC(Domain-based Message Authentication, Reporting & Conformance) | ・電子メールの「なりすまし」を防ぐための認証プロトコル ・送信ドメインの所有者がメールの認証ポリシーを指定し、その結果を受け取ることができる ・受信サーバーにて送信者のドメインを検証することで、フィッシングメールやスパムメールの配信を防ぐことが可能 |
誤送信防止機能
誤送信防止機能は、従業員がメールを送信する際に、送信先や添付ファイルの確認をおこない、誤った宛先へのメッセージ・ファイル送信を防ぐ機能です。
▼誤送信機能の例
- 送信前に注意を促すポップアップを表示する
- 自動的にBCC設定をおこなう
- フリーアドレスへの送信を制限する
誤送信は、情報漏洩の原因としても多く報告されており、CC・BCCの取り違え、システムの誤設定など、人為的なミスが挙げられます。
意識づけていても、人為的なミスを完全に防ぐことは難しいため、機能を活用することが推奨されます。
データ損失防止(DLP)
データ損失防止(DLP)は、メールに含まれる重要データを監視し、ポリシーに基づいてフィルタリングをおこなう機能です。
たとえば、ポリシーに「クレジットカード番号や個人情報などの重要データが含まれるメールの送信は不可」という取り決めがあれば、該当のメールを検知して送信をブロックしたり、管理者に通知したりします。
DLPは意図しない情報漏洩、規制違反の防止に有効です。
ログ監視
ログ監視機能は、メールの送受信に関するログを収集し、異常な活動や脅威を監視する機能です。
具体的には、いつ、だれが、どこに、どんな内容のメールを送ったのか、ということがログに記録されます。
ログを確認することで、従業員の誤送信や不審なメールのやり取りを早期に発見し対処できます。
メールセキュリティ製品の導入タイプ
メールセキュリティ対策を実施する際、企業のニーズや環境に合わせて適切な導入タイプを選択することが重要です。一般的に、メールセキュリティ製品は以下の3つのタイプに分類されます。
- クラウド型:インターネット上で利用できるタイプ
- ゲートウェイ型:自社のメールサーバー周辺に専用機器を設置するタイプ
- エンドポイント型:デバイスに直接ソフトウェアをインストールするタイプ
それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
クラウド型 | ・自社にサーバーを構築する必要がない ・初期費用が抑えられる ・比較的簡単に導入できる |
・セキュリティ内容のカスタマイズができない場合が多い |
ゲートウェイ型 | ・保有するデバイスの台数に左右されない ・社内外問わず全てのメールを一括処理できる |
・サーバーとメールシステムは大幅な改修が必要 ・スモールスタートが難しい |
エンドポイント型 | ・保有する(導入する)デバイスの数が少ない場合、費用が抑えられる ・サーバーの知識がなくても利用可能 |
・ライセンスの管理が難しい |
クラウド型のメールセキュリティであれば、自社でサーバー構築する必要がないため、迅速な展開と低い初期コストが期待できます。
また、最新のセキュリティアップデートが自動的に適用される点も強みです。
一方でゲートウェイ型は、組織のネットワークに直接配置されるため、高い制御性とパフォーマンスを発揮する点が強みです。
ただし、導入時に大幅な改修が必要となる可能性が高く、メンテナンスコストも複雑になりやすい点がデメリットとして挙げられます。
最後に管理するデバイスの台数が少ない場合は、デバイスごとに導入するエンドポイント型の製品も候補となります。
外部ネットワークからの安全性が確保されることに加えて、サーバー知識がなくても導入しやすいメリットがあります。
ただしデバイスの台数が増えるほど、管理が複雑になる点で要注意です。
メールセキュリティの必要性
メールセキュリティが必要な理由としては以下が挙げられます。
- サイバー脅威の94%はメールから発生しているため
- 「情報セキュリティ10大脅威 2025」にメール関連の脅威が多くランクインしているため
- ビジネスシーンで最も使われているコミュニケーション手法のため
具体的なデータや最新の動向を交えて解説します。
サイバー脅威の94%がメールから発生しているため
Darktrace 社がおこなった「メールシステム」に関する調査によれば、サイバー脅威のうち、94%がメールから発生しています。
つまり、チャットやビデオ会議ツールの普及が進んだ現在においても、メールを起点とするサイバー攻撃の脅威は依然として根強く残っていることがわかります。
出典:Darktrace |Darktrace Cyber AI Eメールの免疫システム
またメールを使用したサイバー攻撃の手法は年々巧妙化しており、怪しいメールの受信をブロックする対策だけでは、対処が難しくなっています。
添付ファイルのマルウェアの検知や、メール本文内のURL無効化など、多角的なメールセキュリティの実践が求められています。
「情報セキュリティ10大脅威 2025」にメール関連の脅威が多くランクインしているため
情報処理推進機構(IPA)が毎年公開している「情報セキュリティ10大脅威」の2025年版でも、メールに関連する脅威がランクインしています。
▼情報セキュリティ10大脅威 2025
順位 | 脅威の内容 |
---|---|
1位 | ランサム攻撃による被害 |
2位 | サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 |
3位 | システムの脆弱性を突いた攻撃 |
4位 | 内部不正による情報漏えい等 |
5位 | 機密情報等を狙った標的型攻撃 |
6位 | リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃 |
7位 | 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃 |
8位 | 分散型サービス妨害攻撃(DDoS攻撃) |
9位 | ビジネスメール詐欺 |
10位 | 不注意による情報漏えい等 |
※赤字:特にメールと関連深い脅威
出典:IPA|情報セキュリティ10大脅威 2025(2025年1月30日)
1位のランサムウェアの感染経路は、近年「VPN機器からの侵入」が主流ですが、メールや添付ファイル経由の感染もいまだに報告されています。
また、5位の標的型攻撃では、取引先や政府機関に装って、マルウェアを添付したメールを送信し、ターゲットをだまして感染させる「標的型攻撃メール」という手口がよく使用されます。
ほかにも、10位の「不注意による情報漏洩」の主な要因の1つに「メールの誤送信」が含まれています。
このように、現在もメール関連のセキュリティリスクが多く選ばれていることから、メールセキュリティの強化は必須といえます。
ビジネスシーンで最も使われているコミュニケーション手法のため
2024年に日本ビジネスメール協会が実施した調査によると、仕事で使っているコミュニケーション手段で最も多いのは「メール」です。 ※
この調査から、コロナ禍でリモートワークが急速に普及し、さまざまな新しいコミュニケーションツールが導入された現在でも、メールがビジネスコミュニケーションの中心的役割を担っていることがわかります。
個人情報や社外秘情報など、メールを通じてやり取りされる重要情報は多岐にわたるため、企業・組織にとって、メールのセキュリティ対策は欠かせません。
また、サイバー攻撃の手法は日々高度化・巧妙化が見られるため、常に最新の脅威情報を把握し、適切な対策を講じることが重要です。
※出典:一般社団法人日本ビジネスメール協会|ビジネスメール実態調査2024
メールセキュリティで対策できる脅威
前述した通りサイバー攻撃は、メールから発生するケースも多く、適切に対策しないと、情報漏洩や不正アクセスなどの被害に遭うリスクが高まります。
ここでは、メールセキュリティで対策できる代表的な脅威を紹介します。
- ビジネスメール詐欺
- フィッシング攻撃
- マルウェア・ランサムウェア攻撃
- メールアカウントの乗っ取り
- 誤送信による情報漏洩
- メールの盗聴
詳しく解説します。
ビジネスメール詐欺
ビジネスメール詐欺(BEC )とは、取引先や企業幹部になりすまして偽のメールを送信し、金銭をだまし取る詐欺手口です。
過去には、ある技術企業のCEOを装い、多額の送金を指示するメールが同社の財務担当者に送られ、信じた担当者が詐欺師に数百万ドルを送金してしまったという事件も報告されています。
ビジネスメール詐欺は、「情報セキュリティ10大脅威 2025」でも9位にランクインしており、注目されている脅威といえるでしょう。
フィッシング攻撃
フィッシング攻撃とは、大手企業や公的機関を装ったメールを送り、受信者に本文内のリンクをクリックさせて偽サイトへ誘導することで、個人情報の入力や情報窃取を図る詐欺手口です。
偽サイトは正規のサイトそっくりに作られているケースが多く、見た目だけで見破ることは困難な場合が多いです。
偽サイトであることに気が付かずに、ログイン情報やカード番号を入力してしまうと、情報が攻撃者に渡ってしまいます。
▼三菱UFJ銀行を装った偽サイトの比較
出典:NHK|“見分けるのは無理” 知ってほしい「フィッシング詐欺」対策は
フィッシング攻撃に関してより詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご確認ください。
マルウェア・ランサムウェア感染
マルウェアを仕込んだファイルをメールに添付し、受信者に開かせることで感染を広げる攻撃もあります。
とくにマルウェアの一種であるランサムウェアをつかった犯行・被害が、近年猛威を振るっています。
ランサムウェアは、メール経由でターゲットのPCに侵入し、ファイルやデータを暗号化することで、復旧と引き換えに身代金を要求することが主な目的です。
過去には、病院のシステムがランサムウェアにより停止し、患者の受け入れが困難になったり、実際に病院が多額の身代金を攻撃者に手渡してしまったりといった被害も発生しています。
メールアカウントの乗っ取り
メールアカウントが乗っ取られると、そのアカウントから他の社員や関係者に対して、詐欺メールやマルウェア付きのメールが送信されるといった二次リスクが想定されます。
取引先や顧客などにスパムメールが送られてしまうと、たとえ不正ログインの被害者であったとしても、信頼を喪失してしまう恐れがあるでしょう。
誤送信による情報漏洩
サイバー攻撃を仕掛けられたわけではなく、従業員の誤送信で、社内の機密情報や個人データが外部に漏洩するケースもあります。
たとえば、以下のような漏洩のケースが挙げられます。
- 弁護士事務所がクライアントの情報を他のクライアントに間違えて送信した
- 医療機関が患者情報を第三者に送信してしまった
このようなミスは、損害賠償責任を問われる可能性があるだけでなく、組織そのものの信頼を失う原因にもなり得ます。
個人情報や機密データの取り扱いが多い組織・部署は、とくに誤送信を防ぐセキュリティ対策が求められます。
メールの盗聴
攻撃者がメールを送受信する通信に割り込んで、メッセージの内容を盗み見るリスクもあります。
こうした脅威には、メールの本文や添付ファイルの暗号化をおこなうことで対処が可能です。
メールセキュリティにNDR「Darktrace(ダークトレース)」
本記事で紹介した通り、メールを悪用したサイバー攻撃は依然として増加傾向にあり、手段にも高度化・巧妙化が見られています。
このような背景を踏まえ、ネットワーク全体の通信状況の可視化と異常な挙動を検知するNDRソリューションが注目されています。
本記事では、NDR「Darktrace(ダークトレース)」紹介します。
Dartraceは「自己学習型のAI」が搭載されているので、メールの背後にある「⽂脈」や、ユーザーのメール送受信の傾向を理解し、精度の高い攻撃メールであっても検知が可能です。
たとえば、以下のような脅威を自律的に検知することが可能です。
- ビジネスメール詐欺
- フィッシング攻撃
- ソーシャルエンジニアリング
- 業務メールアカウントへの不正侵入
- なりすまし
- データ窃取
- スピアフィッシング
また、メール受信から約1秒で、URLの無効化や添付ファイルの削除など、メールの危険度に応じて設定されたアクションを自動的に処理・実行するため、誤開封のリスクを未然に防ぐこともできます。
「Darktrace」は、クラウド型のセキュリティで、Microsoft 365(Business Basic以上のライセンス)、またはGoogle Workspace/G Suite(Enterpriseプラン以上)の環境にてご利用可能です。
詳細はぜひ、以下ページをご覧ください。
まとめ
本記事では、メールセキュリティをテーマに、主な機能や対策、必要性などを解説しました。
本記事のまとめ
- メールセキュリティとは、あらゆるセキュリティリスク から、メール及び通信を保護するための技術・対策のこと
- メールセキュリティの主な機能・対策に「アンチウイルス」「暗号化機能」「スパムフィルタリング」「認証機能」「誤送信防止」「データ損失防止(DLP)」「ログ監視」などがある
- メールセキュリティで対策できる脅威として、「ビジネスメール詐欺」「フィッシング攻撃」「マルウェア・ランサムウェア感染」などが挙げられる
- メールセキュリティとして、攻撃者から仕掛けられる攻撃への対策に加えて、誤送信や設定ミスによる情報漏洩にも適切に対処する必要がある
適切なメールセキュリティを講じることで、ビジネスの継続性と情報の安全性を確保し、安心してメールを活用できるようになります。
本記事で紹介したNDR 「Darktrace」は、ネットワーク全体の通信状況の可視化と異常な挙動を検知することが可能です。
たとえば、ビジネスメール詐欺やフィッシング攻撃など、メールを悪用したサイバー攻撃を検知し、対策することが可能です。
セキュリティ強化を目指す企業・組織の方は、ぜひ導入をご検討ください。

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